めちゃくちゃ歌とダンスが上手くて顔が可愛ければ、いいアイドルなわけではない。歌もダンスもめちゃめちゃで顔も田舎の女子中学生みたいなのに、ヲタクの心をつかんで離さないアイドルだっている。それがアイドル文化の面白さであり、非ドルヲタをドン引きさせる部分なのだろう。そんな“わかりにくさ”は、プロレスにも共通している。
特集を通じて、自分以外の『いとわズ』編集部員たちも東京女子プロレスの魅力に気づいてきました。『いとわズ』編集部が選んだベストバウトはこれだ!
辰巳リカvs伊藤麻希(2018年3月10日、神奈川・横浜ラジアントホール)
試合中盤、伊藤がエルボーを連打した後、突然コーナーポストに頭突き。ロープに上って雄叫びを上げると、辰巳も負けじとコーナーに上って雄叫びを上げるハイテンションな展開が印象的。辰巳がダイビング・ヒップアタックを決めて、13分21秒、エビ固めで勝利。
動画 辰巳リカvs伊藤麻希(2018年3月10日、神奈川・横浜ラジアントホール)
沢野:伊藤ちゃんの小学生男子みたいな叫び声が好き。この試合の伊藤ちゃんは、攻撃していても攻撃されていても悲鳴を上げ続け、その存在感を発揮していた。気合いを入れるためにコーナーポストに頭を打ち付ける姿は、東女に詳しくない僕でも、「伊藤ちゃん“らしい”」と思った。
しかし、それに対する辰巳リカがまたすごかった。僕が勝手に可愛い系だと思い込んでいた辰巳が、伊藤ちゃんに触発されてコーナーポストに頭を打ち付けて雄叫びを上げる。その後は、どっちが攻撃していてどっちが受けているのかわからないくらい、2人の絶叫が交差する。最初は笑えたのに、ちょっと泣きそうになってしまった
坂崎ユカ&優宇VS山下実優&黒音まほ(2017年12月17日、東京・太子堂商店街歩行者天国)
2016年に続き開催された、歩行者天国にマットを設置しての「太子堂商店街年末プロレス」興行。DDTプロレスリングのお家芸である“路上プロレス”ということで、マットを飛び出して、八百屋での場外乱闘や、自転車に乗っての攻撃など、歩行人の傍らでユニークな応酬が続いた。坂崎が黒音に“スライディング大根”を決めて、12分14秒、片エビ固めで勝利。
動画 坂崎ユカ&優宇VS山下実優&黒音まほ(2017年12月17日、東京・太子堂商店街歩行者天国)
編集長:プロレスって大小こそあれど、戦いの場となるリングは必ず用意されるものだと思っていた。太子堂商店街年末プロレスの一戦は、僕がいかに無知だったかを知る一戦となった。だって路上に敷いたマットがリングなんだもん。
衝撃だった。真冬の寒空の下、響き渡る打撃音にぽろりと漏れる「寒いんだから痛い」の声。自転車で突っ込む勇姿、八百屋から奪ってきた大根アタックなどなど、まさに商店街会場そのものがリングだった。笑いあり、子どもが泣き叫び、逃げ惑う姿あり。ほのぼのとハラハラがうまく混じり合った、個人的にもっともお気に入りの一戦だった。
山下実優vs里村明衣子(2017年8月26日、東京・後楽園ホール大会)
センダイガールズプロレスリング代表である“女子プロレス界の横綱”里村と、東女のエースである山下がシングル初対戦。山下はベテラン相手に猛然と立ち向かうも、10分47秒、スリーパーホールドをかけられてレフェリーストップで敗北。ファン投票によって、東女の2017年ベストバウトにも選ばれた一戦。
動画 山下実優vs里村明衣子(2017年8月26日、東京・後楽園ホール大会)
原田:自分は『いとわズ』編集部唯一の、もともとの東女ヲタです。ものすごく悩みましたが、私が東女にハマるきっかけとなった、昨夏の後楽園大会から……。その中でも、山下実優vs里村明衣子を選びました。リビングレジェンド相手に山下がどこまで食らいついていけるか注目された試合。山下は、ファンが期待した以上の善戦を見せました。
アップアップガールズ(プロレス)のオーディション合格メンバーのお披露目、上福ゆきデビュー、伊藤麻希のシングル初勝利、才木玲佳のTOKYOプリンセス・オブ・プリンセス王座戴冠、そして、さらなる伸びしろを感じさせたエース・山下……と、とにかく見どころが多かった昨夏の後楽園大会。大会のサブタイトルは、「新時代の幕開け」で、その名にふさわしい試合内容に、私も「東女は今後追っていかなければ乗り遅れる」と感じたのでした。
山下実優vs黒音まほ(2018年3月10日、神奈川・横浜ラジアントホール)
TOKYOプリンセス・オブ・プリンセス王座を賭けて、王者・山下に黒音が挑戦。いきなり場外戦となり、黒音は、おなじみの噛みつき攻撃に加え、イス攻撃も繰り出した。山下がクラッシュラビットヒートを決めて、12分55秒、片エビ固めで勝利。東女としては異色の激しい試合展開となり、団体の可能性を感じさせた。
動画 山下実優vs黒音まほ(2018年3月10日、神奈川・横浜ラジアントホール)
社長:ゾンビガールがシングルタイトルに挑んだ試合。
僕は素人なので最初は普通にゾンビのギミックに目が行ったのだけど、そのうちこのゾンビがいい奴だということに気づき、しかも“黒音”が“ブラックメタル”だと知り生粋のメタラーである僕がまほを推さない理由がなくなった。なのでベストバウトもまほの試合から。
まほはまだデビューして2年に満たない。そんなタイミングでタイトルに挑戦できるのも、まほがギミックだけでなくレスラーとしても魅力ある選手だからだろう。ソンビチャンピオンが誕生するのか。ゾンビが団体を背負うことになるのか。普通に考えれば山下優位は動かないが、まほが勝つストーリーを考えるとワクワクしてしまった。
もうこのクソみたいなせかいにはうんざりだ。わたしが いちばんに なって 東京女子をゾンビにして、DDTをゾンビにして、お客さんをゾンビにしてさいしゅうてきには日本ゾンビ化計画を実行する! わたしが このせかいをおわらせる! #tjpw pic.twitter.com/1LCpBV3pww
— 黒音まほ Maho Kurone (@maho_tjp) 2018年2月18日
社長:まほは山下の脳味噌を食らうためネックブリーカー系の技やウロボロスで執拗に頭部を狙い、椅子で頭もかち割ろうとするなど一貫性のある攻撃を続けた。ところで、ゾンビというのは悪意ある存在なのだろうか。否、彼らは単に彼らなりの行動原理で生きている(死んでいる?)に過ぎない。人間とは利益を共有できないため衝突が避けられないだけで、ゾンビも自らの正義に従い人間を襲いソンビにしようとしているだけなのだ。それがゾンビの恐ろしさであり、悲哀でもある。だからまほの試合も僕の胸を締め付ける。
きょうまけたから 外に出たら ゾンビは わたしだけで 絶望してる。 けしきを かえることは できなかった。
— 黒音まほ Maho Kurone (@maho_tjp) 2018年3月10日
そうそう、試合そのものではなく「DDT UNIVERSE」の映像ありきになってしまうけど、この試合の白眉は一度はレフェリーに取り上げられた椅子をまほが見つける場面だ。ここのカメラアングルは凄すぎた。まるで映画を観ているようであり、それでいてドキュメンタリー的な緊迫感もあって、本気で鳥肌が立ってしまいました。
AbemaTVでは後楽園大会を無料生中継
思いのほか、社長が長々と語っており、東女にじわじわ魅了されているのを感じさせる。プロレスとのコラボも多いももいろクローバーZを5年以上応援しているだけに、筋がいいのかもしれない。
さて、東京女子プロレスが5月3日に開催する東京・後楽園ホール大会まで、いよいよ1週間を切った。もちろん『いとわズ』編集部も観戦する予定。今回の東女特集にあたって、編集部全員で神奈川・洋光台駅前プロレスを見に行ったが、やはり“格闘技の聖地”後楽園での大会となると、また見え方も変わるものだろう。特集を終えた後、編集部内の東女ヲタが増えていることを祈る。
ひょっとすると、『いとわズ』読者の中には、東女に興味を持った人もいるかもしれない。
そんなときは、DDTプロレスリングによる動画配信サイト『DDT UNIVERSE』で過去の試合を数年にさかのぼってチェックすることができる(月額900円)。また、AbemaTV(アベマTV)では、過去試合のうち厳選した試合を無料配信中。
サイト DDT UNIVERSE
AbemaTV 東京女子プロレス
いきなり会場に行くのは不安なら、5月3日後楽園大会はAbemaTVで無料生中継される。
Abema TV 東京女子プロレス「YES! WONDERLAND 2018」5.3 後楽園ホール
★東京女子プロレスは、5月3日(祝)12時~、東京・後楽園ホール大会を開催。チケット情報などは公式サイトをチェック!