HADO 2018 CLIMAX SEASON閉幕

【プ女子の観戦日記】伊藤麻希、震える魂のゆくえ

私も泣いていたし、周囲の観客も泣いていた。

“弱者のカリスマ”伊藤麻希が進むのは、あまりに険しく、遠い道のりだった。

竹下幸之介と伊藤麻希、真逆の2人のシングルマッチ

11月25日に開催されたDDTの東京・後楽園ホール大会。竹下幸之介対伊藤麻希というカードが発表されたときの感想は、「言わんとすることはわかるけれど、具体的にどういう試合になるのか全然想像がつかない」というものでした。

新時代の旗手として期待されるものの、なかなか観客人気につながらない竹下と、フィジカルには恵まれないものの、謎のカリスマ性がある伊藤ちゃん。プロレスラーとして正反対の2人をぶつけるというテーマ自体は理解できますが、お互い間逆すぎて試合が成立しているイメージが持てなかった。

実際行われた試合は、やはり、伊藤ちゃんがボロボロになりながらも必死に竹下に挑み続ける展開に。持ち前の根性で「これは……!」と期待させる場面も作りましたが、やはり竹下という壁は高く……。なんとか起き上がって竹下に中指を突き立ててみせたあと、そのまま倒れてKOとなりました。

さりげないリードで試合をなんとか形作った竹下もすごい。日ごろ「プロレスラーとして素材ではなく、料理人にならなければ」と心がけている伊藤ちゃんにとっては、いろいろな意味で完敗した試合だったかもしれません。

とはいえ、2人のフィジカルに差がありすぎるせいで、プロレスの試合としてはちょっと変な空気になってしまった瞬間も……。なので、この試合をコミカルなものとして受け取った観客もいたでしょうが、伊藤ちゃんのぶざまさに涙腺を刺激された観客もいる。私含め。

伊藤ちゃんの大きな魅力は、強者に諦めず挑み続ける姿。確かにそうなんですが、伊藤ちゃんのこういう姿をずっと見たいかと言われたらなー。ちょっと違う気がするんだよなー。

君は今年9月の瑞希戦を見たか

無茶ぶりされたとき、伊藤ちゃんが輝くのは認める。今年1月に行われた男色ディーノ戦は、2018年ベストバウトに数える人も多いのではないでしょうか。10月には“女子プロレス界の横綱” 里村明衣子に噛みつき、今回の竹下幸之介戦、さらに来年1月4日に行われる東京女子プロレスの東京・後楽園ホール大会では、チャンピオン・山下実優に挑戦することが決定しています。

2018年を駆け抜けているな、伊藤ちゃん!

しかし、伊藤麻希という素材の活かされ方が、「フィジカル強者にぶつける」一辺倒になってきていないか?という不安が生まれつつあります。確かにそういう伊藤ちゃんはオイシイ。でも伊藤ちゃんにはもっといろいろな輝き方があるのではないか……。

実際、伊藤ちゃんの試合をワンパターンだと批判する声も一部であがってきています。「ワンパターンって、じゃあお前は毎回死ぬ気でやれんのかよ」と言い返したい気持ちはありますが、そう言いたくなる気持ちも一応理解はできる。でもそれは伊藤ちゃんが成長していないというより、本人の成長スピードよりさらに難しいことを任されているゆえの問題ではないでしょうか。

君は今年9月の瑞希戦を見たか。もちろんプロレス巧者みずぴょんが試合をコントロールしていたものの、あの試合を見て、「伊藤ちゃん、こんなことも出来るようになったんだ!」と感心させられた人は多かったんじゃないでしょうか。しかし、じっくり成長を見せられる試合展開になったのは、「仲違いしたパートナーの瑞希と、試合を通してどういう結末に至るのか?」という試合だったからで、あれが「強者・瑞希に弱者・伊藤が挑む」という見せ方だったら、また違う試合展開になっていた気がします。

里村明衣子よりもさくらえみとの再戦希望

ボロボロになっても諦めない伊藤ちゃんは好きですが、伊藤ちゃんの魅力って他にもたくさんあると思うんですよ。

まず観客の心をつかむマイクパフォーマンスは、DDTを超えてプロレス界でもトップレベルだと思います。とくに『戦うビアガーデン2018』で、「悔しさを昇華できる職業がプロレスラーだ」と才木玲佳をタッグ王座挑戦へと焚きつけたくだり。他選手も巻き込んでストーリーを作っていく手腕を見て、「伊藤リスペクト軍がもう少し拡大して、伊藤ちゃんが東女の中の一大勢力を率いることになったら面白いんじゃないの?」と夢がふくらみましたし、その夢は今も諦めていません。まぁトークイベントでの発言などから、今のところ伊藤リスペクト軍拡大の意志は本人にないっぽいですが……。

また、伊藤ちゃんが強者に挑む場合の“強者”って、別にフィジカルに限定した話じゃなくてもいいじゃんと思うわけです。たとえば、さくらえみ。今年10月に行われた女子バトルロイヤルで伊藤ちゃんが初遭遇した相手ですが、他の女子選手に試合を食われるというのは、ほとんど初めての経験だったんじゃないでしょうか。ベテランの舞台荒らしであるさくらと伊藤ちゃんが対峙したとき、場をかっさらうのはどちらになるのか……? 個人的には、里村明衣子よりもさくらえみとの再戦に期待しています。

自分がいち伊藤ちゃんファンとして心配なのは、フィジカル強者と伊藤ちゃんを戦わせる方向でどんどんインフレが進んでいって、伊藤ちゃんも必死に頑張るけれど結局大ケガを負ってしまう……みたいな結末なんですよ。

今できることをコツコツ積み重ねていく道でだって、伊藤ちゃんなら充分すぎるほど面白さを発揮してくれると思います。今は、“強者にも諦めず挑むプロレスラー伊藤麻希”を売り込む時期なのかもしれませんが、伊藤ちゃんという極上の素材の活かし方は、もっとあるんじゃないでしょうか。ということを、つい口出ししたくなる面倒くさいオタクであった……。

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