今年まだあと2カ月残っていますが、私が決める2018年プロレス名試合のエモーショナル部門は、東京女子プロレスの滝川あずさ卒業記念試合(10月27日、東京・新木場1stRING大会)で決定です!
この記事を書くために試合動画を見返してまた泣いた次第。
1対16、多勢に無勢で思い出づくり
「滝川あずさ対その他全選手、1対16のハンディキャップマッチって何やるんだよwwww」と思っていましたが、試合が始まってすぐテーマが理解できました。あずささん、全員と最後の思い出が作りたかったんだなぁ……。
思い出を体に刻みつけるように、16人の選手があずささんに技をかけていく。才木玲佳のタワーブリッジ、ラクのおやすみエクスプレス、上福ゆきのサミングからのドロップキック、ヒナノのうそ泣き(卒業が寂しくて本当にちょっと泣いている)、爆れつシスターズの踏み台式クロスボディ……と現在の東京女子プロレスのベストヒット・メドレー的な贅沢さがありつつ、それらを全部受けるあずささんの凄まじさよ。
別れの儀式として、みんなの技を受けたいけれど、そのためには自分が可能な限り長く立ち続けなければならない……。16人全員のボディスラムを受けきって、本人もコメントする通り「瀕死の状態」になっていましたが、ふらふらでも根性でフォールを返し続ける。
しかし、ボディスラムのあとは、さよならトレイン攻撃が待っていた! 16人の選手に加えて、欠場中の辰巳リカと小橋マリカ、昨年2月に卒業して現在はスタッフを手伝っているミウラアカネ、さらに甲田哲也代表まで参加!
リングに強引に上げられて、あずささんに向かっていくも逆に返り討ちにあって、倒れたあとはリング下に雑に転がされる不憫さ……。甲田さんのこういう女子校の先生っぽさ、好きなんですよねぇ。
号泣してフォールできない現チャンピオン
笑いあり、涙ありの楽しい試合も、中島翔子がノーザンライト・スープレックス・ホールドで1本目を決めてからはシリアス成分が強めに……。緊急来日した沙希様がサプライズ登場し、アカデミー賞で2本目。選手たちも観客たちも、いよいよ試合の終わりが近いことを感じます。
最後にリングインしたのは、現チャンピオンにして、あずささんのデビュー試合の相手も務めた山下実優。必殺技クラッシュ・ラビットヒートを叩き込まれて、ついにあずささんも力尽きた様子。……ここからの展開が思い出しただけで泣ける。
3カウントを奪う絶好のチャンスなのですが、山下は号泣して動けず。自分がフォールしたら、試合が終わってしまう……! 山下の葛藤を察したあずささんは、「私のプロレスラー人生を、これからの東京女子プロレスのみんなに捧げます」と自らギブアップ。こうして滝川あずさ最後の試合が幕を引いたのでした。
ところで、2015年にデビューして以来、実はケガによる欠場がないあずささん。けっして「強い」イメージのある選手ではありませんでしたが、派手なケガなくプロレスラー人生を終えたのは称賛されるべき成果でしょう。約28分間にわたって総勢20人の技を受け続けることのできる選手は、東女でも他になかなかいないのではないでしょうか。
のの子さんの場合、欠席が何よりの激励
あずささんは、もともと女子アナ志望。リングアナになれないかと東女に問い合わせた結果、女子プロレスラーになってしまったという何度聞いても不思議な経緯でリングデビューしました。
今回卒業するのは、改めてアナウンサーとしての夢を追うため(結婚の予定はないもののママタレも目指すそう)。卒業試合後の会見では、自身の今後について、このように語っています。
これから先、私がどう生きるかで東京女子の子たちも自分たちがどうなっていくか(見える)。大切なポジションだと意識してこれから意識していかなくちゃいけないと思っているので。何度も言いますけど、アナウンサーとして、ママタレとして、そこはブレませんので。私がちゃんと道を作ることでこれから先、みんなも思いっきりプロレスができるし。卒業する子がいれば、気持ちよく卒業できると思うので、頑張りたいと思います。
東女では、団体を離れていく選手を“退団”や“引退”ではなく、“卒業”と表現しているのが印象的です。同団体の所属選手の中には、アイドルやお笑い芸人など一度挫折を経て、リングにたどり着いた人間が少なくありません。だからこそ、プロレスラーとして活動する中で見つけた新たな夢へと巣立っていく選手のことを“卒業”として祝福したいのかもしれません。
滝川あずさ卒業記念試合では、婚活軍としてタッグパートナーだった“ボインメーカー”のの子(昨年12月卒業)の登場がなかったのは残念でした。しかし、考えてみれば、「女優という夢を追って卒業した元選手が、舞台の仕事があるため欠席」というのは、これから卒業していく選手にとっては何よりの激励でしょう。
あずささん、これからも応援しています。