いつだってプヲタは、“歴史”を目撃したい。常に応援しているプロレスラーはありつつ、それとは別に「今これを観ておかないとダメだ」と感じる団体/選手がいる。将来「自分はあの瞬間を現地で観ていた」と自慢するため、その大会この大会と西へ東へ大忙しだ。
では今、プロレス業界で最も歴史に近い存在とは何か? それは女子プロレスユニット「プロミネンス」のはずだ……という意見に異論を唱えるプヲタは少ないのではないだろうか。
ハードコア&デスマッチが盛り上がる女子プロレス業界
プロミネンスは、女子プロレス団体「アイスリボン」に所属していた世羅りさ、宮城もち、柊くるみ、藤田あかね、鈴季すずの5人によるユニットだ。ハードコア&デスマッチを中心に、他団体への参戦や自主興行を行っていくという。
近年、女子プロレス業界でハードコア&デスマッチが盛り上がっている。“デスマッチクイーン”山下りなは“デスマッチのカリスマ”葛西純と死闘を繰り広げ、当時18歳の鈴季すずは「ハードコア7番勝負」として名だたる男子選手を相手に7試合を完走した。また、東京女子プロレスでは、現役アイドルでもある乃蒼ヒカリがデスマッチレスラーとしての道を歩み始め、それに対抗するようにハイパーミサヲもハードコア戦で存在感を発揮する。ハードコア&デスマッチ路線に自ら志願する選手が続々と現れ、時に男子プロレスラーとも激突しているのが、現在の女子プロレス界の動きだ。
人気選手たちが所属する女子ユニットで、しかもハードコア&デスマッチ中心、しかも自主興行も開催するらしく、つまり女子選手によるハードコア&デスマッチ興行が行われる……ってコト!?
プロミネンス結成に大はしゃぎせずして、何に大はしゃぎするというのか。4月24日に新木場1stRINGにて正式な旗揚げ戦を控える同ユニットの“プレ旗揚げ戦”にまずは足を運んだ(2月18日、新宿グラムシュタイン開催)。
この人たち、普段もこんな感じなんだろうなぁ
あくまでプレ旗揚げ戦、しかも小さなライブハウスでの開催ということで、選手たちもリラックスした様子。その結果、のんき×流血という不思議な味わいの興行になっていた……。
デスマッチレスラーでありながら、定番凶器であるステープラーの使い方を永遠に覚えられない世羅りさ! 試合中にひとりで転ぶなどポンコツキャラを発揮する宮城もち! 先輩たちから愛あるかわいがりを受けまくり、ギャンギャン抗議する最年少19歳の鈴季すず! 欠場中の柊くるみにも「くるちゃんも何かやる?」と見せ場を作ろうとする心優しい藤田あかね! ちなみに柊くるみは、すずの「やらなくていいよ!」という叫びもむなしく、彼女に重いフットスタンプを食らわせていた。
笑いあり流血ありの試合後は、世羅が「なんか喋ろうよ!」とノープランのままステージに再登場し、急きょトークコーナーがスタートした。その中で、「もちは酔うと母親にテレビ電話をかける癖があり、そのせいで最近は母親に煙たがられていること」が暴露され、なぜかステージ上でもちの母親に電話をかける流れに……。「この人たち、普段もこんな感じなんだろうなぁ」と思わせる良い意味でぐだぐだの会話のあいだ、世羅は額からずっと流血していた。まず血を拭け。
頭の中身が普通じゃない新星・鈴季すず
性別問わず、デスマッチレスラーはかわいさが大事だと思っている。どうしたって血みどろの戦いだからこそ、ふとしたときの笑いが緩急を生み、試合に奥行きを作り出す。カリスマ葛西純の愛嬌は誰もが認めるところだろう。「デスマッチはかわいさが大事」という自説でいくなら、イジられキャラばかりのプロミネンスが人気ユニットとなるのは必然の結果だ。
今回はコミカルに寄った試合内容だったが、もちろんシリアスな試合に挑むこともある。女子トップ団体「スターダム」に乱入するとき、彼女たちは持ち前ののんきを封印し、“外敵”や“因縁の相手”として振る舞う。その幅広さもまたプロミネンスの魅力と言えよう。
しかし、恐るべきは19歳の鈴季すずだ。2018年末にデビューしてから、アイスリボンの第31代王者戴冠、ハードコア&デスマッチデビュー、ユニット結成と駆け抜けて、現在はスターダムにケンカを売っている。これだけ濃密な出来事が、3年ちょっとの戦歴にぎゅっと詰まっているのだ。
そもそも世羅のデスマッチに魅了されて、中学卒業後に宮崎から上京してアイスリボンに入門というスタート地点から気合の入り方が違う。「頭の中身が普通じゃない」というキャッチフレーズは伊達じゃない。でも普通じゃないからこそ教えてほしい。鈴季すずの頭の中身はどうなっているんだ!?
……というわけで3月3日、新宿ROCK CAFE LOFTにて鈴季すず選手をゲストに招いたトークイベントを開催します。聞き手を務めるのはライター/イベンターの大坪ケムタさんと自分、原田イチボです。
配信もあるので、よろしくね!という告知オチでした。