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【野球愛の無駄遣い】ラミレスが権藤博になる日 <後編>

Photo by STB-1

勝てば官軍負ければ賊軍。チームの責任を取る立場である以上、勝てばもてはやされる一方で、負ければ容赦ない批判が飛ぶのが監督という仕事だ。

去年は喝采を浴びたが今年は…

就任1年目で球団初のクライマックスシリーズ進出を果たし、2年目には球団を98年以来となる日本シリーズへと導いたラミレスは、とかくその采配が取り沙汰されてきた。実際、これまでの日本球界の常識では考えられなかったことをやっており、就任直後には「2番梶谷」、去年は「9番倉本(8番投手)」という大胆な打順を導入している。去年の「9番倉本」は絶不調に陥っていた倉本を見事復調させ、8番投手の真骨頂であるウィーランドの活躍もあってある程度機能したと言えるだろう。結果的に日本シリーズにも行ったし、まあまあ好意的に見られていた。その他、勝負を避けられバッティングに狂いが生じていた不動の4番・筒香を3番に据えて復活させもしたっけ。

去年日本シリーズに行ったのだから、当然今年はリーグ優勝、そして日本一をみんな期待する。戦力の拡充もあった。しかし横浜ベイスターズは、いまいち調子の上がらない2018年シーズンを送ってしまう。結果は4位。クライマックスシリーズ進出を逃すと、これまで顕在化しなかったラミレスへの不満が噴出した。曰く「謎打順」「セオリー無視」「チグハグ」…。ラミレスの采配は奇策と見られることも多かったため、結果がでなければ真っ先に槍玉に挙げられた。

昨年は調子の上がらない桑原を我慢して我慢して使い続け、見事月間MVPを取らせるなど押しも押されもせぬリードオフマンに定着させた手腕が評価されたが、今季は調子の上がらない今永を我慢して使い続けると、「頑固」「頭が硬い」と批判された。監督の宿命と言ってしまえばそれまでだが、かくも評価がひっくり返るものなのか。

自分は、「8番投手」は好きではないけど、データ重視のラミレス采配は嫌いではない。スタメンがコロコロ変わるのは好みではないけど、ラミレスなりの根拠があってのことだというのはわかるし、なによりメンバーを固定できるのならしているはず。選手が結果を出さないから、ラミレスがあれこれ策を弄する必要が出てくるのだということを忘れてはならない。

そして、それ以上に、ラミレスが時折見せる、「情」としか思えない采配が好きだった。普段のロジカルさからはかけ離れたタクト。その最たるものが、三浦大輔の引退試合だろう。

最大の功労者に最高の花道を

2016年9月29日。シーズン最終戦が、25年間横浜一筋に投げ続けたレジェンド・番長三浦の引退試合となった。通常、投手の引退試合は打者1人に投げて終わり、というケースが多い。何より横浜は、この最終戦にチーム15年ぶりとなる勝率5割がかかっていた。シーズン3位は確定していたとはいえ、勝率5割と借金ではえらい違う。しかしラミレスは、そんな大事な試合を三浦に託す。先発させた上、何点取られても交代させることなく投げ続けさせたのだ。

実はこの試合は三浦にとって、勝てばプロ野球新記録の24年連続勝利という大記録がかかっていた試合でもあった。同時に、横浜スタジアムを埋め尽くしたファンに少しでも長く三浦の勇姿を見せたい。ラミレスの出した結論が、「三浦を勝利投手の権利が得られる5回まで投げさせる」。三浦が投げ、打線が打って勝つ。そんな理想を描いて臨んだわけだ。

とはいえ、同シーズン未勝利で、この日限りで現役を引退する42歳の投手に、相手のヤクルト打線を抑えるだけの力は残っていなかった。5回を投げ、7失点。打線が意地で6点を取っていたためラミレスは6回も三浦に投げさせたが、ここでとどめの3失点を喫し、ジ・エンドとなった。しかし、勝率5割ではなく三浦の勝利を取ろうとした戦い方は多くのファンの胸を打った。

さらにラミレスは誰もが予想もしなかった粋な計らいを見せる。6回裏、三浦の打席が回ってきた際、代打を送ることなく三浦をそのまま打席に立たせたのだ。この日の観客の100%が三浦を見に来たことをラミレスは知っていた。自分でも予想だにしなかった打席に、三浦は泣きながら立った。試合後ラミレスは「代打を送りたくなかった。今日は多くのファンが三浦さんを見に来ていたので見せたかった」と語っている。

そして7回。さらなるサプライズが待っていた。「代えるなら、マウンド上で代えたいと思っていた。ファンから声援をもらってマウンドから降りてもらおうと」と、ラミレスは7回の先頭打者まで三浦に投げさせたのだ。ヤクルトの雄平を打ち取り、全ての観客がスタンディングオベーションする中、三浦は最後のマウンドを降りた。もう、涙が枯れるかと思うくらい泣いた。

誰もが「なんだそりゃ」とツッコんだ”横浜高校包囲網”

今年も、ラミレスの粋な采配は何度も見られた。4月には、延長戦で決勝ホームランを放った筒香を、その裏に守備固めで下げることなくそのままレフトの守備につかせたことがあった。乙坂もスタンバイしており、通常の勝ちゲームなら守備力を考え100%交代するケースだ。しかしラミレスは、同試合がナゴヤドームで行われ、ビジターにもかかわらず駆けつけた横浜ファンは筒香の守備位置に近いレフトスタンドに陣取っていることを知っていた。「ファンは総立ちで(殊勲打を打った)筒香の名前をコールしたがっていたからね」と、ファンのコールのためだけに筒香をレフトの守備位置に向かわせたのだった。

極めつけは、8月に行われた中日戦。この日の相手の先発は、あの松坂大輔。横浜高校出身の松坂にとって、横浜スタジアムは特別な場所だった。そして、横浜の地にとっても、松坂がいかに大きな存在かということをラミレスは知っていた。惜別には早いが、現役生活の残りが少ない松坂に対し、なにかリスペクトを示せないかと考えた結果だろう。ラミレスは「今日は松坂大輔が相手だから、横浜高校メンバーで一丸となって戦います」と、荒波、石川、筒香、倉本という1軍にいる横浜高校出身選手全員をスタメンに並べたのだ。

口では「松坂攻略のために横浜高校包囲網で戦った」などと言っていたが、高校の後輩を並べたからって勝率が上がるはずもない。明らかにこれは、松坂に対する敬意であり、横浜高校(と出身者)に対する敬意であり、ファンサービスだろう。結果試合には負けたので、ファンサービスとして完璧とは言えなかったのだけは残念ではあるが。

あとは勝つだけ

監督としての能力でも、結果だけ見れば過去の横浜の監督の中でもトップクラスであることは間違いない。その上でラミレスは、選手の気持ちに寄り添うことができる監督だ。そしてなにより、ファンをものすごく大切にする。思えば現役時代からファンサービスのパフォーマンスで親しまれた選手だった。選手が気持ちよく力を発揮できるチームが弱いわけがない。そして、ファンが見ていて楽しい試合をするチームが悪いチームのわけがない。

今年は、それがちょっと噛み合わなかった。成功より失敗のほうが多かったかもしれない。しかしそれは紙一重であり、また怪我人続出によるところが大きいのも事実だ。この3年間、確実にチームは若く、明るく、そして強くなった。2015年までとは全く別のチームかと思うことも多い。ラミレスが目指している方向自体は絶対に間違っていないと断言できる。

あとは、カチッと噛み合うのを願うだけ。その暁には、権藤監督が率いた1998年と同じくらい、ラミレス監督時代が語り継がれるはずだ。そうそう、来季からは件の三浦大輔がコーチとして横浜に復帰することも決まっている。こりゃ、黄金時代待ったなしだな。

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