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【ロシアW杯全部見る】ロサリオ生まれフットボール育ち

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6月22日の記事で、アルゼンチン代表のリオネル・メッシ選手に対して「バイトをクビになったときの僕と同じ」「北欧メタル好きの内気な青年がピッチ上をウロウロしているのと変わらない」などと失礼なことを書いてしまい、大変申し訳ございませんでした。謹んでお詫びいたします。

正解は、エベル・バネガ

アルゼンチン第3の都市、ロサリオ。100万人が暮らす大きな街の同じ地区で幼少期を過ごした2人の青年が、窮地に陥っていた代表チームを救いました。

ひとりは言うまでもなくリオネル・メッシ。そしてもうひとりは、少年時代にロサリオのストリートで1歳年上のメッシとスキルを競い合ったエベル・バネガです。

メッシやアグエロ、イグアインといった選手たちが主軸を担うようになってから、アルゼンチン代表のウィークポイントとしてくすぶり続けた問題があります。最前線の彼らに上質なパスを供給できる中盤の選手が不足していることです。フアン・ロマン・リケルメ、そしてエステバン・カンビアッソが全盛期だったころはまだよかった。しかしその2人が代表を退いた2010年のW杯では、大ベテランのフアン・セバスティアン・ベロンに頼らざるをえないほど人材が枯渇してしまいます。

ブラジルW杯の準優勝、コパ・アメリカ2015も準優勝、さらに2016年のコパ・アメリカ・センテナリオでも準優勝と、あと一歩のところでタイトルを逃し続けているアルゼンチン。準優勝も決して悪くない結果ですが、メッシを筆頭にキャリアの絶頂にある世界最高峰の攻撃陣がその才能を完全に発揮できているかと問われると、やはりどこか物足りなさを感じずにはいられません。彼ら(アンヘル・ディ・マリアやパウロ・ディバラも含めて)が所属クラブと同じくらい自分を表現できたらアルゼンチンは最強なのに……。そんな妄想が妄想のままで終わってしまう原因は、慢性的なゲームメーカーの不在、ひいてはチームとしての構築力の低さにあります。

バルセロナという特殊すぎる環境にどっぷりと浸かったメッシは、コンビネーションの成熟度が低い状況でのプレーにあまり慣れていません。さらに付け加えるなら、ポゼッションの中で違いを生む優れたパサーが複数いることが、彼の能力を最大限に引き出すために欠かせない要素です。しかしアルゼンチン代表にはイニエスタもラキティッチもブスケツもいません。当然、バルセロナの極度に洗練された戦術を再現することは不可能に近い。そんな状況を少しでも改善しうる選手が、崖っぷちで迎えた試合でW杯初先発を果たしたエベル・バネガというわけです。

ナイジェリア戦の先制点の場面。後ろ向きのボールをめっちゃトラップしたメッシのプレーばかりがピックアップされていますが、そもそもバネガの正確なロングパスが素晴らしかった。インサイドハーフで起用されてフル出場したバネガは攻守に躍動し、アシストだけでなく走行距離やパス成功数でも両チームトップの数字を残しました。メッシを活かすためにさまざまな選手、組み合わせを試してきた戦術家のサンパオリ監督ですが、ここにきてようやくバネガという軸が見つかったのではないでしょうか。

ロサリオの道端からサンクトペテルブルクへ

溌剌はつらつとしたアスリート像とは明らかに異なる、気だるげな雰囲気を纏ったバネガ。見た目のイメージ通り夜遊び好きのトラブルメーカーで、万人が認める才能を持ちながら、これまでのキャリアでは安定感のなさを指摘され続けてきました。地元ロサリオでレオ君という大天才と出会ってしまったことが、どこかオフビートなパーソナリティーの形成に影響しているのかもしれません。

そんな彼が地元から遠く離れたサンクトペテルブルクで、幼なじみのレオ君と力を合わせて母国を救うなんて! 陳腐な表現ですが、なんだかマンガみたいな話だと思いませんか?

この著者について

チョウ ウヒョン
スポーツ、映画、ヒップホップ、近現代の日本文学などを好みます。当面の目標は若隠居です。
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