スペインのロペテギ監督が「最近スペイン代表と契約延長したばっかだけど、W杯終わったらレアル・マドリードの監督になるわ。ほら、やっぱレアルって憧れだし?」というサイコパスのようなムーブをカマして開幕直前に解任されたりもしましたが、とにもかくにも始まりましたね、ロシアW杯。
巷では「盛り上がってない」とか「日本代表弱い」とかそんな話ばかりですが、安心してください。僕は勝手にブチ上がっております。
開幕戦にして最弱決定戦?
開幕カードはロシアVSサウジアラビアの一戦。
「開幕戦じゃなかったら誰も見ないような組み合わせ」とか言われていましたが、僕は結構楽しみにしていました。アジア最終予選で日本といい勝負をしていたサウジアラビアが、開催国のロシア相手にどれくらいやれるのか。アジア勢の力を推し量る意味でも注目のカードです。
ロシアのスタメンにはゴールキーパーのアキンフェエフ、センターバックのイグナシェビッチ、さらに司令塔のジャゴエフと、本田圭佑のCSKAモスクワ時代の同僚がズラリ。3人ともまだCSKAに所属しているのがアツい。どうでもいい情報ですが、本田が本人役で登場する漫画『ファンタジスタ ステラ』にジャゴエフがモデルの若手選手が噛ませ犬っぽいキャラで出てきます。失礼な話ですよね。
予選が免除された影響もあって、ロシアのFIFAランクは70位で出場国中最下位。また23人の選手のうち21人がロシア国内のクラブでプレーしていることから、開幕前は「史上最弱の開催国」とまで言われていましたが、ロシアプレミアリーグのレベルは決して低くない。なんといってもホームですし、直前のテストマッチの結果はイマイチながらも「実際やったら結構強いんじゃないか」と個人的には思っておりました。
対するサウジアラビアも「国内組」ばかり。サッカー連盟の主導でアル・シェハリ(レガネス)、アル・ムワッラド(レバンテ)、アル・ドサリ(ビジャレアル)の3人がリーガ・エスパニョーラにレンタル移籍したもののまるで通用せず、試合勘に不安を抱えたままロシア入りしました。
ちなみに、サウジアラビアのFIFAランクは67位と出場国の中で下から2番目。ロシアの次に低いということで、ランク上はいきなり最弱決定戦みたいな感じになってしまいましたが、試合はゴールラッシュで見どころ充分でした。
サウジ、「夢のスコア」で散る
まず12分にロシアがガジンスキーのヘディングで早々と先制。その後、24分にジャゴエフが左の太ももを負傷してしまうものの、交代で入った数少ない国外組・チェリシェフ(ビジャレアル)がラッキーボーイとなります。前半終了間際の43分、カウンターからゴロビン、ゾブニンとつないで、最後はチェリシェフが冷静にDFをいなして2点目。サウジアラビアからすれば最低でも1点ビハインドでハーフタイムを迎えたかったところでの失点です。これで大きなダメージを負ったことは間違いないでしょう。
後半もなんとか集中力を保とうとしていたサウジアラビアでしたが、メンタルなのか、単純な技術力のなさか、雑なパスミスやボールロストは改善されません。追い付くためには前がかりにならざるを得ない展開で、70分には交代で入ったばかりのジューバにヘディングを叩き込まれて決定的な3点目。
ここで心が折れたのか、ロスタイムにはチェリシェフの同試合2点目(アウトサイドで決めたファインゴール!)で4-0、さらに再三チャンスを作っていたゴロビンの直接フリーキックで5-0と、いわゆる「夢スコア」で惨敗。2002年のドイツ戦で敗れたときの8-0という「サウジスコア」には及ばなかったものの、久しぶりのW杯で、それも世界が注目する開幕戦という晴れ舞台で恥辱的な敗北を喫してしまいました。
試合後のスタッツを見ると、ボールポゼッションはロシアの38%に対してサウジアラビアは62%。しかしシュート数は14対6と、長時間ボールを保持しながらもサウジアラビアはまるでチャンスに結びつけられていません。ロシアからしてみれば、リードを奪ったことである程度相手にボールを持たせ(とはいえゴール前までは行かせない)、前掛かりになってバランスが崩れたところをカウンターで仕留める、という近年のサッカーによくある展開がハマりにハマったような結果になりました。
開幕前は大きな批判に晒されていたロシアのチェルチェソフ監督は、大観衆の前で会心のゲームを披露できて最高の気分でしょう。チェリシェフ、ジューバと途中で入れた選手が計3得点を奪うなど、采配もズバズバ当たっていました。また、3連敗が予想されるサウジアラビアから大量得点できたことも大きいですね。
エジプト戦、もしくはウルグアイ戦で勝ち点を1でも奪えば決勝トーナメント進出の目も出てきます。とはいえ、『ファンタジスタ ステラ』でおなじみのジャゴエフの負傷はかなり痛いですね。症状は重く、W杯期間中の復帰はどうやら難しいようです。バックアップを含めた選手層、そして不発だったエースストライカー・スモロフの奮起が重要になります。
サウジアラビアはちょっとかわいそうなのであまり触れたくないですが、相対的に力の落ちるチームが今回のように早い時間帯で失点してしまうと、立て直すのはなかなか難しいでしょうね。ここからスアレスとカバーニを擁するウルグアイ、そしてサラーのいるエジプトが続きますから、うまく切り替えないと再度の大量失点も……。
アジア勢という観点からすれば、今回も相当厳しくなりそうです。繰り返しになりますが、サウジアラビアは最終予選でオーストラリアを上回り、日本といい勝負をしていた国ですから。
まあ『ファンタジスタ ステラ』では本田がチームメイトのジャゴエフ(がモデルのキャラ)を圧倒していたし、そんなに心配することもないかもしれませんが。