部活経験の無い僕は、人生で初めて“スポーツの大会”、HADO BEGINNER’S CUP #1に出場した。チームを組むのも初めてで、前日からバカみたいに緊張していた。チームいとわズの面々は、なにやら余裕シャクシャクの雰囲気を出していたが、おそらくは強がり。明日になればどうせ緊張するに決まっている。
当日、予定通り緊張の面持ちで集合したメンバーを見て、僕は少し安心する。やはり、緊張を解くには、自分より緊張している人間を見つけるのが一番良い。しかし、参加チームが続々と集まってくるとそうも言っていられない。みんな非常に強そう。再び緊張が僕を襲う。
試合開始、そのとき空閑は・・・
開会式を終え、大会がスタートした。いとわズの編集長兼チームのエースである空閑が予定表を見ながら、
空閑:僕らの試合は1時間後ですね。煙草吸ってきます
とこの場を離れ、社長兼補欠の大木もトイレへと向かった。
とりあえずゆっくりしようと、残された原田と2人で試合を見ていると、MCを務めていたHADOガール懸谷直弓(@nayuyan12)さんから、驚きのアナウンスが…
–いとわズさーん、次ですので準備お願いします
すみませんでした!!!
脳が状況を理解するよりも早く、スタッフさんと相手チームのsivaさんに謝罪する僕。謝りながらも必死でどうしたらいいのかを考えた。
空閑さんがいる喫煙所は、1つ下のフロアだ。正直いまいち場所もわからない。でも、大木さんがいるトイレはすぐそこ、2分もかからず戻ってこれる!!・・・よし、空閑さんだ!!
答えは簡単。近くの補欠より、遠くのエースだ。謝っている感を出すのが上手い原田にこの場は任せ、僕は全速力で喫煙所へ。運よくほぼ迷わずに空閑を見つけ声を掛けた。
空閑:え!?
普段冷静な空閑が、仕事中でもHADO中にも見たことが無い表情を浮かべる。
空閑さんてあんな顔もするんだなぁ
そんなことを考えながら全力で試合会場へと走った。いつ以来だか思い出せないほど久しぶりの全力疾走で、足はガクガク、汗はダラダラ。そんな状況のまま、僕は人生初めての“試合”に臨むことになった。
しかし、疲れからか、とにかく内容を覚えていない。もうすぐ終わる! あとちょっとで休める! そう思って時間を確認したらまだ20秒しか経っていなかった・・・ということ以外、ほぼ覚えていない。
フラフラになりながら試合を終えると、我々はデビュー戦を見事に勝利で飾っていた。内容を覚えていないのが非常に悔やまれる。
空閑に文句を言ってやろう! そう思っていたが、スコアを確認してみると、この勝利は完全に空閑のおかげだということがわかった。悔しいが、これでは文句も言えない。
空閑:へっへっへ。時間、間違えちゃいました
憎めない男だ。しかもあの全力疾走のおかげで緊張が吹き飛んだことも考えると、なんだかお礼を言わなきゃいけないような気持ちになる。しかし、さすがにそれは悔しいので飲み込むことにする。
全力疾走のダメージを抱えたまま、僕は2試合目のラーメン丸さんとの試合に挑んだ。若くてシュッとした見た目のラーメン丸さんVS試合開始前からボロボロの汗だくのおっさん。
なんか申し訳ない。
なんとか空閑パワーで押し切り、この試合もいとわズは勝利をものにした。しかし、疲れすぎている僕は、いまいち勝利の実感が持てていなかった。
いよいよ見えた決勝トーナメント
我々が振り分けられたBブロックには、「華より酒!(@hanayorisake_)」「小田原ちょうダンズ(@OD_tyoudanz)」という前評判の高い2チームがいた。しかし、いとわズが決勝トーナメント進出を果たすためには、どちらかのチームを倒さないといけない。
大木:今からあの2チームが試合するぞ。みんなで見ておこう
補欠の大木が何やら言っている。座り込んで休みたいところだが、それもごもっともかと思い、僕も見ることにする。いとわズの面々の口からは、「やばい」「これは強い」などの言葉が零れ落ち、恐れおののいた様子。
たしかに、たしかに2チームは強いのだろう。僕らに比べてチャージもしっかりできているし、無駄な動きが少ないのだろう。なにより、チームとして洗練されているような気がする。それは間違いない。しかし、僕の脳みそは彼らとまったく違うことを考えていた。
疲れろ~、疲れてくれ~。ほら、弾飛んできたぞ~。
走り回って疲れてくれ~
“疲れているのか、疲れていないのか”。僕は、それでしか物事を判断できなくなっていた。おかげで、どんなチームなのかまったくわからないまま、強豪2チームに勝負を挑むことになる。
体力復活!…が緊張も復活!
疲れまくっていた僕だったが、試合間隔が空いたおかげでどうにか回復することに成功する。これなら次の「小田原ちょうダンズ」さんとの試合もベストで臨めるかもしれない。
しかし、ここで新たな問題が発生する。
疲れが取れたおかげで冷静になり、緊張が復活してしまったのだ。今までの2戦の試合経験が完全にリセットしてしまったのだ。しかも、相手は強豪、決勝トーナメントがかかる試合、これはマズイ。
ここで補欠である大木が一言。
大木:ここからが本当の闘いのスタートだ!
またしてもなにやらそれっぽいことを言っている。しかし、この言葉が僕の緊張に拍車をかける。なぜ足を引っ張るのだこの男は! 1戦目をトイレで過ごしたくせに!
落ち着くために辺りを見渡すと、僕はある人物を発見した。
「HADO WORLD CUP 2017」で優勝を成し遂げた、わちゃごな☆ピーポー(@wachagonna_hado)のTAKAさんだ。僕は一度わちゃごなさんに取材をした経験がある。
【動画あり】「プレイまでのハードルは高い?」世界王者わちゃごな☆ピーポーが教える”HADOを始めるとりあえず”
なので、ギリッギリで知り合いと言える。優しいTAKAさんのことだ、こんな僕のことでも覚えていてくれているに違いない!
これは今大会における僕の意気込みだ。この意気込み通り、TAKAさんに話しかけて自分を落ち着かせることにする。TAKAさんと話せば、強者のオーラをわけてもらえる。自分も強くなった気になれるかもしれない。
これこそが弱者のメンタリティだ!
TAKAさん!お久しぶりです!
TAKA:あ~お久しぶりです
僕なんぞを覚えてくれていたTAKAさん。癒される笑顔を振りまいてくれたTAKAさん。しかし・・・
TAKA:いとわズさんBブロックですよね?『小田原ちょうダンズ』さんと『華より酒!』さんは強いですよ。頑張ってくださいね
え・・・? 知ってるの? むしろ、口振り的に一回くらい戦ってない? その上で強いって言ってない?
この瞬間、僕はすべての武器を失った。
後編へつづく…
HADO BEGINNER’S CUP 初挑戦!勝った理由は勢い!負けた理由は…?【後編:動画あり】