第一の門で創真が受けた課題は、「死にゆく料理人へ最後の晩餐」だった。別の会場でタクミと田所恵は、それぞれ「乳幼児に出す離乳食」「飼い主と犬が一緒に楽しめる食事プラン」というお題を突破していた。由緒正しき世界大会「THE BLUE」にしては、変化球的なお題だと3人はクビを傾げる。この流れで、当レビューで散々触れてきた「城一郎黒幕説」の可能性がまた少し濃厚になった。城一郎らしいお題だったねーってなるヤツだ。
“はじめの一歩”現象
「はじめの一歩」は、主人公・幕の内一歩の試合よりも、他キャラ同士の試合のほうが人気になりやすい。だが、これは別に一歩に魅力がないわけではない。一歩のキャラクター性が明確になりすぎてしまい、どんな試合をするのか読者が想像できてしまうため、他のキャラクターのほうが読者は新鮮に感じるだけなのだ。いろいろな人気マンガでこの現象は起きており、僕は“はじめの一歩現象”と呼んでいる。
この“はじめの一歩現象”が、「食戟のソーマ」でも起きかけている。正直、創真が「死にゆく料理人へ最後の晩餐」というお題に挑むということに対する予想はなんとなついた。だが、タクミが「乳幼児に出す離乳食」、田所が「飼い主と犬が一緒に楽しめる食事プラン」をどう対応したのかはだいぶ気になる。特にタクミは、イタリアンという自分の殻を破っている真っ最中のため、何をやってくれるのか想像もつきにくい。
「THE BLUE」は、完全に創真が戦い続ける方向でストーリーが展開しているが、次シリーズでは、ちょっと長めのスピンオフ的な展開が欲しい。そっちのほうが原作の附田先生も楽だろうし、読者は新鮮だし、創真本人も飽きられずに済むと思う。
司瑛士登場
第二の門からは、シード扱いを受けた料理人たちが登場。その中に元遠月第一席の司瑛士の姿があった。世界的な大会だし、選考基準は35歳以下なので、司の参戦は道理がすごく通ってる。しかし、司が参戦するとなると、気になるのは他の元十傑たちの登場だ。「THE BLUE」は今のところ“とにかくすごい大会”という位置づけで進行しているが、読者にとってその実態はふわっふわ。この世の35歳以下の料理人全てが、「THE BLUE」で栄光を勝ち取りたいのか、それとも、大会に参加しない猛者は他にもわんさかいるのか、そのあたりの描写はハッキリ欲しいところだ。
そうじゃないと、なぜ四宮小次郎、水原冬美、角崎タキらレジェンド級の卒業生がなぜないのかがモヤモヤしたままになってしまう。第三の門で登場する可能性は多いにあるのだが、それまでの見方がいまいちわからない。初めて遠月学外で本格的ストーリーを展開したことで、「食戟のソーマ」全体の世界観がちょっとあやふやになってしまった。
「チャンスは3回」と優しいお題の理由
第二の門の課題は、「チャンスは3回。コンビニの商品を使って100ドル以上の価値ある皿を作ること」。ありがちっちゃありがちだが、司瑛士と創真が激突することになって、急にストーリーのテンションがアップした。しかも司は、「100ドルなんて当然」と言い切っているので、どうやら課題をクリアするかしないかではなく、シンプルにどれだけすごい料理を作れるのか? というラインでの戦いになりそうだ。
おそらくポイントは、「チャンスは3回」という部分だろう。過去の「食戟のソーマ」の課題を振り返ると、1度だって失敗を許容してくれたことはない。こんなに優しいお題は初めてだ。たぶん、司と創真は3度のチャンスを利用して最高評価額を稼ぐ展開に発展するのだろう。短めのコースを作り上げるとか、1皿目との落差で次の皿の価値をあげるとか。
「コンビニなら庶民派の創真が断然有利じゃん!」という1番気になる疑問は置いておいて、ちょっと新しいパターンの展開が期待できるかも知れない。良い感じに“はじめの一歩現象”を打破して欲しい。