8月19日より公開中の映画『HiGH&LOW THE MOVIE 2 / END OF SKY』(以下、『EOS』)、124分の上演時間中、前半1時間で「こんなに面白いものをこれ以上見たら、過剰摂取で死ぬんじゃないか!?」という不安に襲われました。
ケンカを描いたコンテンツが大好きな私ですが、それでも『EOS』は、今まで見たことないシーンの連続でした。とくにカーアクション。あれ、どうやって撮影しているの……?
強い奴らのUSB争奪戦
『HiGH&LOW』シリーズの物語の舞台となるのは、山王連合会、White Rascals、鬼邪高校、RUDE BOYS、達磨一家という5つのチームが拮抗する、通称「SWORD」地区。
最新作『EOS』では、巨大カジノ建設のためSWORD地区を狙う反社会組織“九龍グループ”に加え、極悪スカウト集団“DOUBT”と、監獄からの刺客“PRISON GANG”が新たな脅威として登場。SWORDの面々が激闘を繰り広げます。
鍵となるのは、前作『HiGH&LOW THE RED RAIN』で、最強の兄弟“雨宮兄弟”が手に入れた、九龍グループの機密情報が入ったUSB。『EOS』では、このUSBの争奪戦が行われたのですが、このシーンが凄まじかった……。日本のアクション史に残るし、なんなら世界からも見つかってほしい。
大山倍達も「ダンサーはヤバい」って言っているし
琥珀、九十九、雨宮兄弟たちは、バイクや自動車を駆使して、九龍グループの追っ手をかわそうとします。しかし、追っ手のひとりである源治がめちゃくちゃ強い!
ギザギザ刃の日本刀(よくわかんないけど、かっこいい武器だ)を片手に、車の屋根に飛び乗り、バイクに飛び移り、執拗に琥珀さんたちを追いかける姿は、like a ターミネーター。無表情だし口数も少なくて不気味だし、殴ってもあまり効いていないし、目の前に源治が現れたときの絶望感がすごい。『バイオハザード3』を思い出す。
でも琥珀さん側もすごい。バイク同士でUSBをリレーしていって、最後は後部に大穴が空いた疾走する自動車の中というデンジャーな空間の中で闘います。人は簡単に車に飛び乗るし、車に轢かれるし、車はゴロゴロ転がって炎上するし、この世界では人命が軽い。
ハイスピードで展開されるカーチェイス&肉弾戦は、どのように撮影が行われたものなのか想像がつきません。撮影は北九州で行われたそうですが、日本でこんなの撮れるものなんだ……。
映画好きからは「どうせEXILE好きのDQN向け映画」と冷笑されがちな『HiGH&LOW』ですが、カーアクションのシーンだけでも見てほしい。こんな景気のいい、どえらい映像なかなかありませんよ。そして、よくある「イケメン俳優がアクションに初挑戦!」みたいなものとは違うレベルの動きをしていることもわかってもらえるはず。
空手家・大山倍達は、バレリーナの優れた身体能力を指摘して、「バレリーナとケンカするな」という言葉を残しました。つまり日本で一番人気があるダンス&ボーカルグループと言っても過言ではないEXILE TRIBEが出演するケンカ映画が素晴らしいことは当然。
まぁ、“実践格闘術ゼロレンジコンバットを駆使する最強の兄弟”というトンチキな設定である雨宮兄弟を演じているのは、ボーカル担当のTAKAHIROと登坂広臣なわけですが。細かいことを気にしてはいけないし、EXILE TRIBEは根性があるので、なんでもできるのだ。
いろんなテイストのケンカ漫画のごった煮
『HiGH&LOW』シリーズを語るときによく言われる言葉として、「リアリティラインがおかしい」という言葉があります。地元育ちの青年たちが集まり街を守るために闘う山王連合会は理解できますが、商店街のすぐ傍にはスラム・無名街があるし、無名街には空中殺法が得意な自警団・RUDE BOYSがいるし、ヤンキー高校の鬼邪高校は、その筋からスカウトを得るまで生徒が留年を繰り返すため20歳を超えた男がゴロゴロいるし、「拳100発に耐え抜けば頭になれる」という伝統があるし。
ちなみに『EOS』から加わった“PRISON GANG”は、監獄上がりの武闘派集団。なんでもありだな!
いろんなテイストのケンカ漫画をごった煮にしたような『HiGH&LOW』シリーズですが、『THE MOVIE』はまだ「なんだかすごいけれど、純粋な映画作品としてのクオリティはどうだろう……」と感じる部分がありました。
しかし、『EOS』では、回想シーン中に始まる新たな回想シーンなど過去作での批判点をキチンと修正してきた印象です。その一方で、「おや? これは応援上映などでウケていたシーンをまた採用したのかな?」と感じる部分も。
達磨の珍妙な車の乗り方→応援上映でみんなが合唱できるようなセリフを日向が言う、の流れとか、西郷の変な角度とか、九十九さんが車に轢かれるとか。「佐野岳は動けるし、ハイローに出てくれたらいいよね~」とファンがきゃっきゃしていたら、『EOS』で本当に出演しましたし、LDHはTwitter上でファンの感想をかなりチェックしている様子。
旨味はそのまま雑味が激減
「お金をかけて自分たちの考える“かっこいい”を伝える」と「ファンがほしがっているものを提供する」をばっちり両立させる手腕は、さすが日本一売れているダンス&ボーカルグループといったところ。
たとえるとすれば、『THE MOVIE』は、いろんな材料をひとつの鍋にぶっこんで煮た“よくわかんないけど味がめっちゃ濃いもの”。『EOS』は、それをこして抽出されたエキス。こちらも味がめっちゃ濃いのですが、旨味はそのままに雑味が激減しています。
ただ、ひとつ残念な点を挙げるとすれば、新キャラの林蘭丸が想像より薄味だったことかなー。ゴージャスな赤い毛皮を羽織ったビジュアルには期待値が上がったのですが、狂犬キャラは、達磨一家の頭・日向紀久というひとつの正解がもう出ているわけで……。
あっ、でも次作から『無限の住人』の尸良のような、極悪だけど微妙に小物な感じを醸し出してくれたら、ものすごく愛せます!
ハイロー、終わっちゃうの?
ちなみに筆者は先日、鬼邪高校の番長・村山良樹役を演じる山田裕貴さんを別作品で取材したのですが、挨拶で「ハイロー、劇場で10回くらい見ましたよ!」と伝えたら、「10回ってどういうことですか?」と驚かれて、「……どういうことでしょう?」と自分もわからなくなってしまいました。本当にどういうことでしょう?
参考 【インタビュー】山田裕貴、元カノ役を相手に緊張!? 『闇金ドッグス6』シリーズ初のラブストーリー
そんな楽しい『HiGH&LOW』シリーズも、11月11日公開の『HiGH&LOW THE MOVIE 3 FINAL MISSION』で完結してしまうのか、どうなのか……。
でも『HiGH&LOW』のことだから、『END OF SKY』、『FINAL MISSION』と来て、また『LAST〇〇』みたいなタイトルの新作をあっさり公開してくれそうな気もする。そういうところが好き……!
映画「HiGH&LOW THE MOVIE 2 / END OF SKY」予告編第2弾