1月にテレビ朝日が放送した『プロ野球総選挙』なる番組がプチ炎上した。番組で発表された歴代スター選手の番付が、ちょっと微妙だったというか、誰に取ったアンケートなの? とツッコみたくなるものだったからだ。
投手部門の歴代1位が大谷翔平だったり、鈴木啓示や山田久志が20位にも入ってなかったり。野手部門では張本勲も山本浩二も福本豊も20位圏外なのに大谷が4位だったりクロマティがランクインしてたり。ツッコミどころ満載すぎて、小学館『週刊ポスト』が、2月5日発売号で「『本当に野球が好きな人たち』の答えがここにある プロ野球総選挙」として同じ企画を断行した。
同誌で歴代最高の投手と打者に選ばれたのは、打者が王貞治、投手が金田正一。特にカネやんこと金田氏は、ポスト編集部が結果を伝えたところ開口一番「当たり前だろうが!」と言いつつ得意満面だったそう。そんな話題が先週、ネットニュースにもなっていた。
“史上最高の選手”なんて、プロ野球ファンにとって永遠のテーマ。それこそ朝までその話題で飲める。いや、むしろ飲みたい。
野手でいえば、王貞治、イチロー、長島茂雄、落合博満、松井秀喜あたりが上位に来るのは確定な気がする。インパクトでいえばバースも候補かな。2016年の筒香嘉智をもってしても、並み居る先輩たちを差し置いて「一番すごかったバッター」と言うのはちょっとはばかられる。2002年の松井稼頭央なんてブーマー並みの打撃成績でトリプルスリー獲ってショートでゴールデングラブまで獲ってるけど、「史上最高の打者」となるとちょっと躊躇するよね。
これが投手になると、途端に候補がいくらでも出てきてしまうのはなぜだろう。毎日試合に出る前提の野手と違い、出場試合数も限られる投手は、やはり成績よりも印象度のほうが自ずと重視されてしまうのだろうか。
いまだに「江川が一番速かった」「いや尾崎行雄」だという人も多いが、本当にそう思ってるんだろうなというのがすごくわかる。弱小チームにいながら勝利数歴代1位の金田もすごいし、普通にダルビッシュも田中将大も歴史に残る投手だと思うし、全盛期の藤川球児はヤバかった。
あと、「今まで見た中で一番すごかったピッチャーは伊藤智仁だ」って人、結構多いよね。伊藤智仁の1年目をリアルタイムで見ている人の大半がそうなんじゃないかってくらい多い。自分もその一人なんだけど、それじゃ面白くないので、伊藤と同じくらい鮮烈で強烈に記憶に残っている投手を史上最高に推したい。それが、盛田幸妃だ。
大洋ホエールズの最終年に頭角を現した森田は、まだセットアッパーなんて言葉がなかったから佐々木主浩との“ダブルストッパー”なんて呼ばれながら佐々木へつなぐ役割を担っていた。ほとんどがリリーフ登板にもかかわらず、規定投球回数に達し防御率2.05でタイトルを獲ってしまう。しかも14勝も挙げた。イニングまたぎもできる。94、95年頃の活躍も目覚ましく、横浜の投手でこんなにワクワクしたことないってくらいピッチングを見るのが楽しみだった。
盛田は現役時代に脳腫瘍を患い、一度カムバックするも現役引退後に再発。2015年に45歳の若さでこの世を去っている。辛すぎる出来事ではあったけど、それが盛田を忘れられない理由なんかじゃない。純粋に、その圧倒的なマウンドでの姿が脳裏に焼き付いているだけだ。
シュッとした体型から投げ込むストレートはキレが半端なく、オールスターで清原和博が振り遅れるほど。決め球のシュートもえげつなく、落合博満が何度も詰まらされていた。腕の振りがムチのようにしなやかで、イメージとしては岩隈久志が藤川球児のストレートを投げ込む感じ。そこに140km/h台後半のシュートがあるんだから、見てるほうの安心感たらなかった。
背が高かったんでスマートな印象があるけど、今改めて当時の動画見ると結構いいガタイしてる。岩隈というより、三上朋也みたいな感じだ。とにかく、心底「味方で良かった」と思える投手だった。俺の中では盛田を超えるインパクトの投手はいまだ出会えていない。