すごく大事なことを言ってるようで、何にも言ってない回だった。
もはや、「食戟のソーマ」あるあるなのだが、幸平(才波)城一郎とか、薙切仙左衛門とか、そういう重要っぽい人物が出てきたときこそ、キャラのインパクトで押し切って中身がない。
これはシリーズとシリーズのつなぎによくある恒例行事だ。だが、そういうときに限って、微妙に大事な伏線が忍び込ませていたりする。
全部聞いたことあるわ!!!
久々の創真と城一郎の親子対談。内容は、今シリーズのラスボス才波朝陽の正体と、創真がついた遠月学園第一席の価値、そして物語の根幹であり、聖域と言っても差し支えのない特別な場所「食事処 ゆきひら」についてだ。こんなに濃い話題がもりだくさんな親子対談だが、中身はほぼないに等しかった。
才波朝陽の正体はすでに読者が知っていることの確認だけだし、遠月学園第一席の価値については、今まで散々語られてきた偉大さをダイジェスト的に城一郎が語っただけ。「お前はすげーよ」という発言も、なんだか熱はなく、城一郎らしい冗談の本音を混ぜた程度の意味合いでしかない。
城一郎は、創真に「ゆきひら」に留まってほしくないという旨を伝え、創真は「ゆきひら」へのこだわりを見せる。ついに城一郎の口から飛び出した「ゆきひら」を創真が継ぐか継がないか問題も、ほぼ想定の範囲内だった。今までの2人の言動を照らし合わせれば当然と言えば当然だし。
創真が急に「世界が知りたいんだ!」とか言い出してもそれはそれで破綻してしまう。問題はないが、意外性もない会話だ。
創真の「『THE BLUE』で優勝できなかったら『ゆきひら』継がない」宣言も、城一郎からすれば子どもの成長を感じる発言かもしれないが、読者からすれば普通と言えば普通だ。四宮小次郎や、司瑛士にケンカを売った過去を見れば、まぁ想定の範囲内だ。
どれだけ「THE BLUE」が権威のある大会だろうと、超ジャンプ主人公気質の創真は、そんなことを知らずにぶち上げる。当たり前だ。創真と城一郎の親子対談は、過去の282話を読んでいれば、新情報がなにひとつない会話。全部聞いたことあった。
城一郎はノワール関係者?
核っぽいテーマで話してるくせに、ボカしてるものも多かった。例えば、朝陽に城一郎が負けたことについて。そして朝陽が城一郎の子どもだということについてだ。作中最強の敗北、主人公の隠された兄弟、こんなに大事な話に一切触れていない。
いくら2人にとってゆきひら継承問題が一番のテーマだからといって、ここに触れないのは少しズルい。城一郎が「さすが幸平家の長男坊だぜ」と朝陽が異母兄弟であることを暗に強調していたが、だからこそスルーは寂しい。
「THE BLUE」についても同様だ。「THE BLUE」と言えば、城一郎が遠月学園在籍時に出場が決まっただけで大騒ぎになった大会。いくら創真が第一席でも、それだけで簡単に出場できるのは少し不自然。
まぁ今回は、裏世界の住人“真夜中の料理人”(ノワール)の出場もあり、大会規定が大幅に変わった可能性もあるので、そこは、まぁ「漫画だし」という妥協で飲み込むことはできるが。
今話で一番気になったシーンは、その招待状を「預かり物」という理由だけで城一郎が創真に届けたことだ。城一郎は、在学時に「THE BLUE」の参加をすっぽかすという大事件を起こしている。これは城一郎にとって料理人人生の転機であり、簡単に済ましていい話ではない。なのに、城一郎は「THE BLUE」の招待状を持ってきたのだ。「THE BLUE」と城一郎、一体どんな関係があるのだろうか。
推測できるのは、城一郎がノワールの関係者だということ。世界中を旅している城一郎が、世界を舞台に暗躍するノワールと接触を持っていないことの方が考えづらい。そして、皿に対して常に公平心を持つ城一郎が、どんな悪事を働いていようが、ノワールの出す料理を認めていても不思議ではない。
この時点でストーリーの着地点を想像するのは少し滑稽かもしれないが、城一郎ノワールの黒幕説は、まぁまぁありそうな気もする。