しかし、3ヶ月後、プロで通用しない自分のピッチングに焦りを感じていた。自分に足りないのは“ウイニングショット”と結論づけた洲本は、フォークボールのコツを教わるべく、年内で引退が決まっていた久永の元へ向かう。しかし、「指が短くてフォークは無理」と軽くあしらわれてしまう。
短い指でも投げられる変化球を模索するがどうも上手くいかない。そんなある日、テレビで見た全身整形タレント“リサコ”を見て、手術で指を伸ばすことを思いつく。洲本は、「整形ピッチャー」としてプロ野球の世界を生き抜く決意を決める。
登場人物
◆洲本藤司
整形を繰り返すことで投球スタイルを変え続け、生き延びている埼玉オニオンズのピッチャー。人差し指と中指の骨延長、右腕骨延長、右手首の可動域増加など、様々な手術を受けている。
右手の平には、自身の腰骨から作った耳栓サイズの突起物を埋め込み、複雑に変化する“ヒップボーンナックル”を生み出している。
◆久永一明
現役時代はオニオンズのストッパーを務めていた一軍投手コーチ。洲本を整形モンスターにしてしまった責任を感じている。止めさせようと試みるが、洲本は聞く耳を持たない。
◆棚田猛一
名古屋ミーツの四番打者。豪快なスイングでホームランを量産するが、本人は知的なバッティングに憧れている。高校1年生のときに、高校3年生でプロ入りが決まった洲本からホームランを打っている。
◆里島大志
洲本と同期で、オニオンズのエース。野球への執念に脅威を感じ、なぜか同い年の洲本に敬語を使ってしまう。
◆リサコ
アニメ「ウィッチウィッチ」の“チー子”の様な体型になるのが目標の全身整形タレント。親が整形外科医で、洲本もその病院に通っている。
◆北村邦明
リサコの父で洲本を担当する整形外科医。新しいアイデアをドンドン提示する。最終的には、洲本の腕をジェル状にするのが目標。
第142話「ジッパー」あらすじ
前回の棚田との対戦で、初めて魔球“ヒップボーンナックル”を打たれてしまった洲本。新たな整形を模索するが、どれも上手くはいきそうにない。そんな洲本の元に、整形外科医・北村は、「今度はこれをつけないか?」と見たこともないほど小さなジッパーを手に現れた。
そのジッパーが何をするものなのか想像もつかない洲本だが、言われるまま病院へ行くことに。
4日後、名古屋ミーツの本拠地・名古屋球場に現れた洲本の手の平には、腰骨で作った突起物はなくなり、代わりにあの小さなジッパーがつけられていた。1、2、3番打者を三者凡退に抑え、迎えた2回裏。棚田がバッターボックスに入ると、洲本は、ポケットから耳栓サイズ、ペットボトルの蓋サイズ、ピンポン玉サイズの腰骨を取り出し、中からペットボトルサイズのものをジッパーの中にしまいこんだ。
手のひらに以前よりも大きなデッパリがある洲本が棚田に投げ込んだ“新ヒップボーンナックル”は、今までとはまったく違った球筋を描いていた。