ウィーランドが横浜DeNAを退団した。来日1年目の昨シーズンは10勝トリオの一角として19年ぶりの日本シリーズ進出に大きく貢献したが、2年目の今年は怪我で開幕に出遅れると、そのまま調子が上がらず4勝9敗。戦力的に微妙と判断されたのか来シーズンに向けた交渉はまとまらず、12月3日退団が発表された。
12月5日にすぐ韓国プロ野球KIAタイガースへの入団が発表されたので、おそらくウィーランド側がよりよい条件のほうを選んだということなのだろう。しかしシーズン終了直後から、横浜DeNAサイドも来季の契約には慎重な姿勢を見せており、「放出」とまではいかないまでも引き抜かれた感はまったくない。
にしても寂しいものだ。剛速球を投げるでもなく、エグい変化球があるわけでもない。確かに信頼感という点では物足りなかったかもしれないが、ピッチャーなのに野手顔負けのバッティングで何度も驚かせてくれる稀有な存在だった。自分で打って自分のピッチングを助ける「ジエンゴ」なんて言葉がネットで流行ったり、なによりラミレス監督が「8番投手、9番野手」を思いついたのもウィーランドの打棒がきっかけだ。
クールな表情とは裏腹に熱い男だったのも、ファンに愛された要因の一つだろう。ここで、そんなウィーランドとの2年間の思い出を振り返ってみたい。
なぜか須田をボコボコにどつく
好投を続けながら勝ち星に恵まれなかったウィーランドが来日初勝利を挙げた昨年4月28日の広島戦。ピッチング以上に印象的だったのがベンチでの一幕だった。
横浜リードの6回、ウィーランドはホームランと連打を浴び追い上げられてしまう。その後もヒットを打たれ、無死満塁で降板するウィーランド。一打同点というピンチだったが、あとを受けた須田が三振と併殺打で見事無失点で切り抜け、絶体絶命の状況を乗り切った。
これにはウィーランドも喜びを爆発。ベンチで須田を迎えると、歓喜の表現なのかグラブで思い切り須田の胸をどつきながら叫び声を上げた。ガッツポーツで応える須田をさらに強く殴りつけ、ウィーランドは感謝と興奮の咆哮。ボコボコにしたようにしか見えない、激しい喜び方だった。
ウィーランドは翌日、須田のロッカーにお礼のワインを置いたというから本当に熱くて粋な男だ。
ホームラン含む3安打4打点で失点取り返す
去年のCS進出を決めた試合はウィーランドの独壇場だった。投げては勝利投手となったウィーランドだが、ピッチングのほうは5回で7失点と乱調気味。しかし、自分のバッティングでそれを取り返してしまう。
初回に先制タイムリーを放つと、3回には逆転3ラン。6回にも得点に結びつくヒットを放ち、終わってみれば「3安打4打点7失点」というデタラメにもほどがある大活躍だった。
涙の一打放った山下を真っ先に抱擁
横浜の2018年ベストゲームに挙げる人が多い、今年5月31日の楽天戦。チームの今シーズン初のサヨナラ勝利となったこの試合で、人生初のサヨナラ打を放ったのはここまで1軍で出番のなかった山下だった。
1塁を回ったところでサヨナラが決まり、思わず男泣きする山下。その瞬間、ベンチを飛び出して真っ先に山下に抱きついたのがウィーランドだった。さらに後ろからソトとエスコバーも駆け寄っており、横浜の助っ人達は最高だな〜と思ったものだ。
代打ウィーランドがサヨナラ勝利呼ぶ
今年8月3日の広島戦。とうとう代打ウィーランドが実現した。試合は同点のまま11回裏。2アウトながら1、2塁としたところで、ラミレス監督はついに代打にウィーランドを告げる。
野手並に警戒される中、ウィーランドは粘って四球を選んでみせた。これで2アウト満塁。その直後、倉本が初球をライトに運び、見事横浜がサヨナラ勝ちを収めた。
こうしてみると、ウィーランドっておもしろい選手だったよなあと思う。来シーズンは韓国で、横浜で見せた熱いプレーを見せてくれるに違いない。まだ28歳。韓国で選手として一回り大きくなったら、また横浜に戻って来てもいいんだよ。