開幕当初はやきもきしたが、終わってみればさすがのメダル獲得が多く盛り上がった平昌五輪。印象的なメダルは多いが、スタイルから爽やかな笑顔から負けず嫌いな言動から何から何まで「少女マンガの主人公にしか見えない」と言われてきた羽生結弦が、これ以上ない筋書きで果たした「マンガとしか思えない」復活劇を今大会のハイライトに推す向きも多いだろう。
将棋マンガの主人公をはるかに上回るペースで昇段しうっかりマンガを超えてしまった藤井聡太六段など、規格外の活躍に「まるでマンガ」と形容される競技者が何人かいる。その中の一人、野球の世界で「まるでマンガ」と言えば、今季からアメリカに渡り活躍の場をメジャーリーグに移した大谷翔平だ。
高校時代に球速160km/hを記録。高卒時にすでにメジャーも選択肢にあった。日ハム入団後、落合博満を除くあらゆる識者が一方に絞れと言うなかで投手と打者の二刀流にこだわり、2年目の2014年にはもう11勝&10本塁打でNPB史上初の「2桁勝利・2桁本塁打」を達成。
2015年は投手として本格化し15勝で最多勝を獲得したうえ、最優秀防御率・最高勝率で投手三冠に輝く。
2016年は、100試合以上に出場し打率.322、22ホームランを記録しつつ10勝を挙げる(防御率は1点台)といういよいよ現実離れした活躍を見せリーグ優勝と日本一に貢献。NPB史上初となる投手と指名打者の2部門でのベストナインに加えリーグMVPにも選出された。
2017年のハイライトは、日本での最後の出場となった試合だろう。ファンに見せた最後の勇姿が、「4番、ピッチャー」で完封勝利。出来過ぎにもほどがある。
そしてとうとう、二刀流選手のままロサンゼルス・エンゼルスに移籍し、メジャーでの二刀流に挑戦する。
ファンにどう受け入れられるかという部分が未知数だったが、やはりエースで主力打者というのは男のロマン。たった1試合のピッチングと、もう1試合でのバッティングだけで、球団公式Twitterにはファンからの「20勝&打率4割も期待できる」「まだスプリングトレーニングだということはわかっているがすごい」「ヒデキ・マツイとダルビッシュのハイブリッド」なんてコメントが並んだ。ちなみに、二刀流って“two-way player”って言うんですね。
日本での実績だけですでに「マンガでもやり過ぎ」レベルなので、今後メジャーでどんな活躍をしようが「まるでマンガ」には違いないだろう。ただ、いくらメジャーと言えどやはりマンガであるからには一流の成績を残して欲しい。中途半端な数字でマンガの主役は張れないのだから。代打要員だったあぶさんだって、普通の中継ぎだった凡田夏之介だって、ドラ8で2軍だった毒島大広だって、結局スーパーな活躍を見せた。あぶさんなんて40歳超えてから急に超人になって3年連続3冠王を獲ってるし。あと60歳で4割打者になってるし。マンガだとしてもやり過ぎだ。
『Number』で、過去メジャーに行った日本人選手たちの数字遷移をもとに大谷の成績を予想する記事があったが、投手として11勝、DHとして打率.271、5ホームランというものだった。至ってまっとうな、可もなく不可もない度満点の数字だ。先人たちの数字からリアルに算出するとこうなるらしいのだが、これではマンガとは言えない。(本当は11勝だけでもすごいのだが)
ここで注目したいのが、大谷が過去の誰よりも若くしてメジャーに挑戦できているという点だ。日本でも大谷は、課題を一つ一つクリアし続ける、成長過程にあるというイメージの強い選手だった。規格外だけに底が知れない。決して完成された選手ではなかった。言葉は悪いが、メジャーで活躍するための土台作り、準備期間だったと言えるのではないだろうか。
そう考えると、過去の先人たちがイチローも松井も、ダルビッシュも田中も含めほとんどがNPB時代より数字を下げている中、大谷はむしろ数字を伸ばすのではないか。いや、間違いなく伸ばしてくるだろう。ピッチングは長身から投げ下ろす同じタイプで自身も師事したダルビッシュを、バッティングは数多くのメジャー関係者が「似ている」と話す松井秀喜を参考にすると、彼らの1年目の数字である「16勝」「16ホームラン」というのが到達可能な上限のような気がする。
メジャーで16勝&16ホームラン。ちなみにベーブ・ルースの記録は13勝&11ホームランだ。やばい。うっかり神を超えてしまいそうだ。