「かけ算」て主人公っぽい。友情や相性で、普段のパワーが何倍にもなる。数多の主人公たちがかけ算を利用し、強敵をやっつけてきている。過去に創真も、「この食材とこの食材を掛け合わせると〜」みたいなことは腐るほど言っている。
なんかシンプルなおはだけ久々な気がする
「THE BLUE」第二の門の課題「コンビニの商品を使って100ドル以上の価値ある皿を作ること」の隠されたテーマは、「かけ算」だった。平凡な食材を上手いこと掛け合わせ、価値を何倍にも高めろとのことだ。
前話で創真は「即席!牛肉缶すき焼き御膳」を作るも、「足し算」と評価され、あえなく失敗していた。そして、この課題でのピンポイントライバル・司瑛士は、惣菜ハンバーグ、チキンサラダ、冷凍パイシートを使用して「デミグラスソースで味わうビーフ&チキンの共演」を作り上げ、587ドルという価値を作り出していた。どこがどうなると足し算で、なにがどうなるとかけ算なのか、その納得のいく説明は省かれたが、司瑛士は「かけ算」をしたらしい。
これに対して創真は、コンビニで食材を買い漁り、常人離れしたスピードで調理、二段の重箱が一杯になるほどの品目で埋め尽くされた「季節外れの必殺!おせち」を創り上げた。審査員のランタービは不満そうな表情を浮かべるが、食べ進めるうちに、“どこから食べ始めても成立するコース料理”だということに気付く。そして、作品内でも久々となる、全裸に近い“おはだけ”を見せ、創真は合格に至った。
答えだけ提示された感じ
「食材×食材」ではなく、「料理×料理」のかけ算か! なるほど!
と思ったが、そうではなかった。ランタービいわくこのおせちは「足し算のごり押し」。単純に安い食材をたくさん足すことで、1万円に届かせたということのようだ。「かけ算をしろ!」の問いに、「足し算をしまくる」は泥臭くてジャンプっぽい主人公の正答だ。自分にできることで、自分の目線で相手に納得させる。本当に良い結末だと思うのだが、その過程がいまいち納得できない。
「なぜ、創真はかけ算ができないのか?」「なぜ創真が作ったおせちが、“どこから食べ始めても成立するコース料理”」なのか。これが一切説明できていないのだ。以前から「食戟のソーマ」は勢いで展開させてしまう説明不足の傾向があった。しかしそれは、「説明が多すぎる」「内容が細かすぎる」などの理由からの割愛だったように思える。納得できなくとも、意図の方向性とその材料は最低限提示していたように感じていた。
しかし、ここ最近の「食戟のソーマ」は、制作側が勝手に作り上げたルールと答えを提示しているだけで、リアリティがない。嘘でも本当でも浅くても深くても、なぜそうなったかの理由だけは、現実世界に寄り添って答えないと、グルメ漫画は絶対に成立しない。
特に「THE BLUE」に入ってからは、話を派手にするだけ派手にして、根本の部分を蔑ろにしている感じがする。創真がスタジエールに励んでいたあの頃の「食戟のソーマ」に戻って欲しい。