先日、新しいマンションに引越しをした。およそ100世帯の分譲マンションだ。その地域の自治体が子育てに力を入れているだけあって、小さな子どもを持つ同世代の住民がやたら多い。いや、むしろ全世帯かもしれない。引越してから数週間、中学生はおろか、小学生すらほぼ見かけていない。
このプレッシャー、マジすさまじい。
分譲で同じ世代の子どもがたくさんいるということは、それだけ我が家の娘(2歳児)と息子(0歳児)の未来のお友だちがいるということ。例えば僕が泥酔してマンション前で寝てしまったとしたら、その噂は瞬く間に広まり、未来の娘・息子に迷惑をかけてしまうのだ。
もし逆に、僕がマンションの前で倒れているおっさんを発見したら、なんとしてでもどこの部屋の誰なのかを調べ上げ、未来永劫“そういう眼”で見てしまうだろう。これはもう人間の心理、仕方なきこと。
噂が広まる可能性を秘めているのは、なにも僕たち親だけではない。当の本人たちも、未来永劫語り継がれる失態を犯してしまう可能性は十分にある…というか、もうあった。
それは引っ越して3週間が経ったころの土曜日。娘を連れて公園へ行こうとエレベーターに乗り込むと、そこには、二組の母子がいた。その二組もどうやら初対面のようでぎこちない会話を行っていた。
ここで黙っていては印象が悪くなる。僕は、意を決して話しかけてみることにした。すると、その子たちが2人とも娘と同じ2歳児であることが判明。ここで僕は、早くも精神的にダメージを負うことになる。
デブだ。
食事を適当に与えているのが一瞬でバレるくらいにうちの娘だけデカい。僕たち夫婦のズボラさがバレた気がして、なんだか妙に恥ずかしくなってくる。そして、娘に対して申し訳ない気持ちが芽生え始める。それでも僕は、必死に笑顔を取り繕い、エレベーターが降りる間の十数秒間、他愛も無い会話に努めた。
そんな僕の気を知ってか知らずか、娘が奇行にでる。
ー「カレーカレーカレー ピリリとからーいぜー カレーカレーカレー ピリリとからーいぜー」
大好きなカレーパンマンの歌を、初対面の子どもの顔面ゼロ距離で歌い出したのだ。
いくら制止しても、サビパートのリピートを止めない娘。相手の子は、ただただ不思議そうに見つめ、ママさんたちは苦笑していた。僕たちは、未来永劫、「カレー家族」としてあのマンションで生きていかねばならないだろう。