東京女子プロレスのTOKYOプリンセス・オブ・プリンセス王者である山下実優は、もともとアイドル志望だった。AKB48に憧れる福岡の少女は、いかにして東京でプロレスラーとなり、“東女のエース”となったのか?
5月3日、東京・後楽園ホール大会のメインイベントで、辰巳リカとベルトを賭けて戦う彼女の素顔に迫った。
旗揚げ時、選手は3人だけだった
「中学卒業してすぐの16歳のころ、アイドルになりたくて東京にオーディションを受けに行っていたんです。なかなか合格できなかったんですけど、どうしても上京したくて……。悩んでいたら、習っていた柔道の先生が高木さん(DDTプロレスリング代表取締役社長でプロレスラーの高木三四郎)と知り合いで、『東京女子プロレスっていう団体が今度できるらしいよ』と勧められたんです。小~中学校と格闘技をやっていたんですが、当時は『これからは“女の子”をやりたい!』って気持ちが強くて。だから、最初は正直乗り気じゃありませんでした(笑)。
でも、話だけ聞いてみようかなと東京に行って、DDTの試合を見てみたんです。それまでプロレスはよく知らなかったんですが、会場の一体感がすごくて、これは面白いな!と。それで、東女入りを決めました。
……ただ、最初は私含めて3人だけの団体だったんですよ。ずっと3WAYマッチやるわけにもいかないし、試合もプロレス会場じゃなくて、ライブハウスにマット敷いてだったし、大丈夫かなっていう不安はありました。3人だと、練習もローテーション早すぎて目が回るし(笑)。でも辞めようとは思いませんでした。母親も覚悟をもって私を東京に送り出してくれたし、簡単に戻りたくはなかった。『やるしかない』って気持ちで踏ん張っていました。
そういう旗揚げの時期を知っているから、今の東女は20人くらい選手がいて感慨深いです。それに高木さんから東女に誘われたとき、『将来はタレント業もやっていけるようにするから』と言っていただけたんですけど、6年間やって、今はAbemaTVに出たり、グラビアやったり、夢が叶ってきている実感があります。キツイときはあったけど、全部ひっくるめて、よかったなと」
辰巳リカは「リラックマみたいな子」
「辰巳リカは自由です!(笑) みんなで買い物行ってるときとか、気づいたらいないんですよ。自分が気になったところに、1人で行っちゃう。でも他の子も慣れてるから別に探さなくて、あとからリカが戻ってきて、『どこ行ってたの?』って聞いたら、『見てたー』みたいな。本当にマイペースで、リラックマみたいな子なんですよ(笑)。
リカはデビューすぐケガして、1年くらい欠場したんです。だから、出遅れちゃった部分もあったんですけど、去年3月に黒音まほと“どらごんぼんば~ず”を結成して、美威獅鬼軍と抗争し始めたくらいから、ぐっと伸びてきました。ここ最近で一番伸びた選手なんじゃないかな。
リカの試合は、感情がダイレクトに伝わってくるんですよね。『痛い!』とか『悔しい!』とか『倒したい!』とか。普段から、『楽しいから楽しい』、『悲しいから悲しい』みたいに、まっすぐな子だからかな。すごく感情移入できる試合をします。だから本当に今回のシングルマッチは楽しみです。
東女みんな仲良いんですよ。控室でうるさくして、よく注意されます(笑)。『ディズニーランド行きたくない?』『いいねー!』って盛り上がって、そのままディズニーランド行っちゃう。女子校ノリです。もちろんリカとも仲良いですよ。
……そういう相手と試合で戦う気持ち? うーん、よく聞かれる質問なんですけど、やっぱり“良い試合をして、お客さんを楽しませたい”って気持ちは同じだから。ゴングが鳴れば、お客さんを楽しませるために、お互い遠慮なくぶつかる。別に憎くて蹴ってるわけじゃないですから(笑)。相手を信じているからこそ、本気で戦えるんです」
AKB48・前田敦子推しだった
「オフの日は美容室に行ったり、ショッピングしています。可愛いものが好きなんで、そういうのを見て、幸せな気持ちになったり。あとアイドルも好きです! 中学生の頃はAKB48が大好きで、“オタ女子会”っていうのをやっていたんですよ(笑)。友達とグラビア雑誌を持ち寄って、『この角度いいね』『今月号の写真はそんなに』とか言い合って、結構マジなオタクでした(笑)。今は欅坂46とか乃木坂46をチェックしています。
AKB48では前田敦子さんが、めっちゃ大好きでした。ああいう“主人公!”って感じの人が好きなのかな。私自身、東女のエースと言われてはいるんですが、あまり自分で意識したことはないんですよね。でも初代王者としてベルトを獲ったときと、今年1月に才木(前チャンピオンだった才木玲佳)からベルトを獲ったときとで、気持ちはちょっと違ったと思います。『みんなで盛り上げたい』にプラスして、『自分が引っ張っていかなきゃ』と初めて思えました」
東女を「パワースポット」にしたい!?
「今後、私個人としては、タレント業もやれるのであれば、全力でやらせていただきたいです! もともと格闘技を始めたきっかけが、『チャーリーズ・エンジェル』で女性が戦う姿を見て、『私もこんなふうになりたい!』と思ったからでした。だから、アクション映画に出演できたら、すごく嬉しいですね……!
いつか、母みたいな女の人になりたいんです。母は別にアクションがすごいとかじゃないんですけど(笑)。女手ひとつで私を育ててくれて、自分の考える“かっこいい女性”の理想形。母のように、人間として強い人になりたいと思っています。
もちろん東女全体も大きくしていきたい。プロレスは『あ、惜しい』とか『うわ、悔しい』って気持ちを選手とお客さんが共有できる空間です。絶叫マシンに乗っているときみたいに『キャー!』ってなったり、『嬉しい!』ってなったり、『ムカつく!』ってなったり。ひとつの空間で、そういう感情をいっぺんに感じられるエンターテインメントは、プロレスくらいじゃないでしょうか。
初めてDDTでプロレスを見たとき、会場の温かさに驚きました。『これは、もはやパワースポットだ』って(笑)。東女もそう感じてもらえる団体にしたいと思っています。東女には個性の強い選手がたくさん所属しているので、一度試合を見に来てもらえれば、気になる子が見つかるんじゃないかな。“お客さんを楽しませたい”って気持ちは選手みんな一緒なので、まずは買い物に行くくらいの気軽さで、会場に来てみてください!」
[box class=”box28″ title=”山下実優”]
1995年3月17日生まれ、福岡県出身。身長165cm。2013年8月17日、東京・両国国技館でデビュー。空手仕込みの打撃が武器の、東女のエース。2016年1月に初代TOKYOプリンセス・オブ・プリンセス王者を戴冠。今年1月4日、東京・後楽園ホールにて才木玲佳を破って第5代TOKYOプリンセス・オブ・プリンセス王者にも輝く。
[/box]
東京女子プロレスは、5月3日(祝)12時~に東京・後楽園ホール大会を開催。チケット情報などは公式サイトをチェック!