「俺、もうすぐ整形するんです」
しかし、最初から最後までひたすら褒められ続けるつもりが、ホストたちの頑張りを見ているうちに、次第に「この子たちがこんなに頑張っているのに、私ばかり頑張っているなんて言えないよ!」という感情が高まっていきます。
なんと、われわれのテーブルについたホストの過半数が未成年。「ガキだから俺は飲めないんです」とはにかみながら、せっせとカルピス割を作ってくれます。
午前中からパカパカ飲み始める女たちの横で、ニコニコ水を飲んでいて偉い。
また、ホストになった経緯や日給、「あのホストは性格が悪い」といった舞台裏についても普通に話してくれるのが驚き。
聞いたら結構なんでも答えてくれるので、ホスト界のいろいろを質問するだけでも十分楽しめます。新米ホストは雑用が多く、金銭的にも厳しく、ホストだからといって派手な生活をしているわけではないんだなぁ。
整形事情についても普通に話してくれたのが衝撃でしたが、「俺、もうすぐ整形するんです。それでナンバーワン目指すんです」とキラキラした目で言われると、ダーティな話題というより、甲子園を目指す甥っ子の話を聞いているような気持ちになってしまいます(そんな甥はいないのですが)。
一生懸命やっているねぇ。いっぱい目頭切開してシャンパン入れてもらえるように、叔母さん、応援しているからネッ。
……なんだかホストクラブのレポートというより、未成年と会話した感想のようになってきましたが。
とりあえず、今まで「女子大生や女子高生と話したがる中年男性は、何を話すつもりなんだ? 頭がおかしいのか?」と不思議に思っていましたが、完全に気持ちが理解できてしまった。
共通の話題はなくとも、若い子が頑張っているのを見ると、なんだか小動物と触れ合ったときと同じ気持ちになれる。
シャンパンを入れられない女たちは
始めこそ「人をもすなるホストクラブといふものを、してみむとてするなりwww」というテンションでしたが、思いのほか楽しく、癒されてしまいました。
さらに恐ろしいことに、ホストたちに頼まれるがまま軽い気持ちでLINEを交換したら、あれから朝になったら「おはよう! 仕事だと思うけど頑張ってね!」といったメッセージが届くようになったんです。
たった3000円でここまでしてもらっていいのか。
コスパが良すぎる遊びではないか。
こんな激安価格で最高のサービスを提供する企業があるから、ブラック企業やクレーマーがいなくならないんだ、と理不尽な怒りさえ沸いてきます。
彼らの頑張りに少しでも報いたい。となると、やはり指名……?
1回3、4万円とするならば、めちゃくちゃ高くつく趣味というわけでもない……。ふむ……。年収が1000万円あったらなぁ! というわけで、勤労意欲が大変高まりました。
年収が1000万円を超えていれば、シャンパンも入れられる。
ところでホストクラブでの印象的な出来事として、シャンパンコールもありました。
どこかの客がシャンパンを入れると、ホストほぼ全員がそちらのテーブルに行ってしまい、残された女たちは彼らが戻って来るまでの10分ほど暇そうにスマホをいじるしかないのです。
一方、シャンパンを入れた女は、大勢のホストに囲まれて「姫、姫」と持ち上げられます。
他の女たちはモブで、自分だけがヒロイン。最高の気分が味わえるんだろうなと思いつつ、あれを一度体験したら、もう日常の中で“モブ”という立場にいることがはっきり苦痛になってしまうだろうなあと、恐ろしい気持ちにもなったのでした。
やっぱり皆、褒められたいんだね。