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演劇界の実写『デビルマン』……君は『アラタ ~ALATA~』を見たか?

ダメなところは無数にあるのだけれど。

それぞれの“ダメ”が上手い具合にかみ合って、結果的に今まで見たことのない作品に仕上がっている……という奇跡は、たまーに起こるもの。

だからこそ実写『デビルマン』は、いちクソ映画として忘れ去られるのではなく、公開から10年以上経った今も人々の間で語り継がれる作品となっているわけです。

東京・有楽町にオープンした劇場「オルタナティブシアター」のこけら落とし公演『アラタ ~ALATA~』は、この時間が永遠に続いてほしいと感じるほど楽しい舞台でした……!

絶叫しながら鼓を叩くヒロイン

同舞台で失敗と言ってもいい部分が、セリフを最小限まで削っているところ。約70分の上演時間中、登場人物はせいぜい名前を呼び合う程度で、セリフはほとんどありません。

しかし、そのわりには妙に話が入り組んでいるんです。2020年のトーキョーに戦国時代から侍“アラタ”がタイムスリップしてくる。OLの“こころ”は、アラタに振り回されながらも、一緒に闘いに身を投じる……のですが、なぜタイムスリップものをセリフがほぼゼロの舞台でやろうと思った!? 今は現代パートか? それとも戦国パートか? と観客が自信を持てないまま物語は展開されていきます。

セリフで何も説明してくれないということはつまり、倒れたアラタたちを前に、こころが苦悶しながら鼓をぽんぽん叩くシーンを見て、こちらは「あの太鼓は人間を回復させる力を持つけれど、そのぶん叩く側の生命力か何かを吸い取るっぽいな」と察する必要があるということです。

ロボット出る世界観だったんだ

とはいえ、ひとつひとつをセリフで説明していたら、『アラタ ~ALATA~』は平凡なクソ作品となっていたことでしょう。セリフがないのは、失敗でもあり、最大の魅力となっている部分でもあり……。セリフがないことによる“見にくさ”が同舞台を唯一無二のものとしています。

鑑賞中は今までの漫画・アニメ・ゲーム知識を総動員させて、「要するにこういう場面だろう」という最大公約数的な解釈を見つけ出すことが大切。非戦闘員っぽかったこころが急にめちゃくちゃ強くなったのは、なんか秘められし力が覚醒した的な話なのかな!?

その都度見つけ出した解釈は正しいのかわからないし、後から簡単に裏切られる。アラタが巨大ロボットと闘うシーンを見て、「ロボットが出てくる世界観の話だったんだ!」と初めて知るわけです。

大蛇の化身のラスボス的な相手を倒した後に、急にトランプの兵隊たちが現れたのも「いきなり世界観が日本から変わったぞ!?」と混乱したのですが、それはあれかな……FFでわかりやすい的を倒した後に急に「永遠の闇」みたいな抽象的な存在とラストバトルさせられるみたいな感じなのかな……。

よく映画で「ラスト20分であなたは裏切られる」みたいなキャッチコピーを見かけますが、『アラタ ~ALATA~』はそんなもんじゃない。5分ごとに「ロボット出るんだ!」「トランプ出るんだ!」のような衝撃が訪れるジェットコースター。

100人いたら100通りの解釈がある、それが舞台『アラタ ~ALATA~』。己の読解力が試される場です。私は漫画、アニメ、ゲームに触れていたので、最大公約数的な解釈を導き出すことがまだ可能でしたが、ご老人やちびっ子は何を考えて鑑賞していたのだろうか。

姫、なんで鼓を回収したんだ

人の数だけ解釈があるということは、誰かと感想を語り合いたくなる作品ということ。私は今、『アラタ ~ALATA~』の話がしたくてたまらない。

姫がこころに鼓をくれるっぽいムーブをした後に結局回収したのはなんだったの? やっぱり惜しくなったの? あとこれだけ説明不足なわりに、アラタが現代のトイレの使い方がわからずに破壊してしまうっていう一連の流れは絶対誤読が起きないくらい丁寧に演出されていたのはなんでなんだ! ご丁寧にちゃんと便器からウォシュレットの飛沫も飛んでいたし、バランスが独特すぎるだろ!

殺陣、プロジェクションマッピング、ワイヤーアクション、ダンスとどれをとってもクオリティが高い。しかし、肝心のストーリーは「現代の女がタイムスリップしてきた侍と一緒に何らかの危機を解決する」という王道な大枠部分は理解できても細かいところがまったくわからない。

その偏りが観客の脳を揺らし、なんだこれは……なんだこれは……と混乱しているうちに、いつのまにか困惑は謎の酩酊感へと変わる。そのため後半30分は「この時間よ永遠に続いてくれ」と心の底から願っていました。

そこはかとない『HiGH&LOW』

皆でツッコめる、それぞれの解釈を語り合ってまた新たなネタを生むことができる……という点で、『アラタ ~ALATA~』は、私含め熱狂的な信者が多い『HiGH&LOW』シリーズを彷彿させます。こちらの作品は、映像や演技、物語、演出と各要素のクオリティの差が激しく、しかし妙な愛嬌があるので、ダメなところに観客が勝手に理屈をつけて納得するという楽しみ方をされる作品でした。

私は、「最後に闘ったトランプは何だったの?」「こころは鼓の打ちすぎでいかにも死にそうな雰囲気を出していたのに死ななかったね」「鼓を打つことで受けるダメージは実際どれくらいなんだ?」といった『アラタ ~ALATA~』の話題でTwitterが連日盛り上がる光景が見たい。

『HiGH&LOW』、実写『デビルマン』、園子温版『リアル鬼ごっこ』、これらの言葉に反応する人は必ず何か感じるものがあるはず。でも原田が猛プッシュしていたから見てみたけどクソ舞台じゃねーかと言われたら、もうそれは本当にその通りなので、素直にすみません!

あ、11月末まで上演しているよ。


サイト オルタナティブシアター

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