いとわズ

【野球愛の無駄遣い】あの男に道をつけてやれるのは横浜しかないという話

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約5分

イチローが、メジャー1年目から11年以上在籍したシアトル・マリナーズと今季の契約を結んだ。シーズン開幕直前まで所属先が決まらずヤキモキさせられたが、最もイチローに似合う球団に電撃復帰した格好だ。

ビジネスライクに移籍を捉えるメジャーでも、やはり全盛期を過ごし多くのファンに愛された古巣への復帰は感慨深いものらしい。「おかえり!!」と歓迎ムードのマリナーズはもちろん、メディアでの扱いも皆好意的なものだった。44歳という年齢を考えればこれが最後の移籍となる可能性も高く、数々の記録と伝説を作ったユニフォームで現役の最後を迎えるという美しいエンディングを早くも描くメディアも多い。

メジャーと違い、日本では国内の移籍に対し、ややネガティブな感覚があることは否めない。昔はそれこそ「干された」あるいは「裏切られた」といった感情を伴い、あまりいいイメージはなかったため、大昔にはトレードを拒否して引退を選んだ選手もいたくらいだ。

ところが最近では、FA含め活躍の場を求めて移籍するというケースが増え、以前よりもポジティブなイメージになってきている。また、日本からメジャーに移籍し、挑戦後に日本球界に復帰する場合に、一度袂を分かったはずの古巣が受け入れるケースも目にするようになってきた。これらの最たる例が、共に2015にそれぞれヤンキースと阪神から広島に戻ってきた黒田博樹と新井貴浩だろう。2人の広島愛と、それに裏打ちされた活躍は、選手が“終の棲家”に思い入れのある出身球団を選ぶ選択を完全に正当化したと言っていい。

今季から、ヤクルトに青木宣親が、巨人に上原浩治が復帰する。選手が恩返しをしたと言えるのか、球団が道をつけたと言えるのかはわからないが、いずれにしても美しい最終章であることには変わりはない。そして、国内の球団同士でも、楽天から松井稼頭央が古巣・西武に移籍した。オープン戦で早速活躍を見せているが、なにか松井稼頭央が若々しくなったような気さえしてくる。

さて。ようやく話は我が横浜に移る。古い横浜ファンには、一時期の暗黒時代のために「選手が出ていってしまう」という印象を抱いている人は多い。確かに、98年の優勝を頂点に下降線を辿っていったチームの崩壊っぷりといったらなかった。経営母体がDeNAになり、建て直しが図られる前に球団に見切りをつけて去っていた選手を責めることはできない。

ただ、責めることはできないのはわかっているが、傷ついてもいるのだ。「優勝できるチームでやりたい」と言って横浜を出た内川聖一をいつまでも許せなかったのは、怒っているからではなく、引き裂かれた心の傷がまだ癒えていないからだ。じゃあ俺らが応援してるチームはなんなんだと。村田も「優勝争いがしたい」と言って出ていった。優勝争いってチームに与えてもらうもんでしたっけ?

しかし、彼らは必ずといっていいほど新天地で喜びを味わう。石井義人は西武で日本一になり、吉見はロッテで日本一になり、内川はソフトバンクで日本一になり、村田は巨人で日本一になり、藤田の楽天でさえも日本一になった。皆が皆望んで横浜を去ったわけではないかもしれないが、いつしかこの現象は「横浜を出る喜び」なんて名付けられ揶揄されるようになってしまった。

あの吉村がCSでMVPをとったときの俺の感情はとても一言では言い表せられるものではない。内川、村田、多村、吉村という恐ろしい打線を夢想して興奮したほんの数年後に一人もいなくなるなんてあなた想像できますか? あと去年の日本シリーズで最高の場面で内川にホームランを打たれたときもフリーズしたね! 再起動まで数時間かかったよ!

いかん。熱くなって話がそれた。そんな話がしたいわけではなかった。今、横浜DeNAはとてもいい球団になっているということが言いたいのです。ココでも書いたが、今はもうあの頃の横浜ではない。ここ数年の横浜は、確実にいいチームに生まれ変わった。そしてそれは、ファンの心、選手たちの心も変えたのではないだろうか。

参考 大洋・横浜・DeNAを1つにした「ハマスタレジェンドマッチ」の大成功

今、村田修一がプロでの行き場を失い、独立リーグの栃木ゴールデンブレーブスでプレーすることになった。残り135本に迫った2000安打達成を諦めるはずがなく、村田がこのまま終わることはないだろう。

1年前の自分であれば、村田に興味なんて1ミクロンも抱かなかっただろう。実際、今回の村田の去就話で横浜の名前が挙がったとき、ほぼすべての横浜ファンが一斉に「不要だ」と叫んだ。恩讐の話だけでない。横浜のサードにはもう宮﨑敏郎がいる。今の村田自身に、選手としての魅力をそこまで感じづらいのも事実だ。しかし、昨年秋のレジェンドマッチを見て俺は変わった。「なんか、最後に仲良くなるってのもいいんじゃない?」と。昨今の、最後に古巣に戻るという美しいストーリーを村田とともに作ってもいいのではないか。

戦力的には使いづらいが、代打&1塁のバックアップとしてはどうだろう。何より、破格の年俸で中日に行った松坂がいまだにもったいなく、あんな思いはしたくないというのもある。スーパーサブとしての役割と条件を村田が受け入れ、大活躍し、横浜で2000安打を達成したとしたら。すべてを水に流す、いい話にならないだろうか。

というわけで、こちらの心の準備はできてますので、DeNAさんご遠慮なく。

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