昔からサッカー界にはこんな言い回しがあります。
ストライカーは育てられない。生まれるもの
生来の気質や並外れたフィジカルなど、天性の才能がなければトップクラスのゴールゲッターにはなれない。残酷なようですが、育成環境が劇的な進歩を遂げた現代においても、そんな傾向は大きく変わっていないように思えます。とりわけ、昨晩行われた3試合はストライカーとそうでない者の違いが如実に表れたゲームになりました。
ロメル・ルカク、ハリー・ケイン、そしてソン・フンミン
優勝候補のベルギーにとっては明らかな格下だったこともあり、判官贔屓の声援を背に奮闘したW杯初出場のパナマ。そんな相手に中押しとダメ押しの2ゴールをマークしたのがロメル・ルカクです。190cmを超える身長に筋骨隆々の肉体を誇る彼は、ディフェンダーを弾き飛ばすパワー、さらにウサイン・ボルトと比較されるようなスプリント力を併せ持ち、25歳にしてプレミアリーグで通算100ゴールを記録しています。
アジア人の我々からすれば、こんなフィジカルの選手が自国のエースとして現れることすら想像しにくいはず。まさに点を取るために生まれてきたような選手だと言えるでしょう。
微妙な判定が重なりチュニジアに大いに苦戦しながらも、試合終了間際のセットプレーからヘディングで決勝点をねじ込んでイングランドを勝利に導いたハリー・ケインも、ルカクと同様に天性のストライカーと言えるような存在です。
ルカクほどではないにせよ非常に高いフィジカル的な能力と多彩な得点パターン、そしてなにより少々のことでは動じない点取り屋のメンタリティー。センターフォワードに必要なすべての能力を兼ね備え、24歳にしてイングランドのキャプテンまで任されているケインが、現代サッカーを代表するストライカーであることは間違いありません。
一方、そのケインと所属クラブのトッテナムで共演する25歳のソン・フンミンは、プレミアリーグで2年連続10ゴール以上を記録した韓国のエース。最適なポジションはフィニッシャーというよりも左のインサイドフォワードですが、韓国代表ではその圧倒的な実績から勝利に直結するプレー、つまるところゴールを挙げることが求められています。
迎えたグループリーグ初戦、国民の大きな期待がかかる中でスウェーデン相手に奮闘しますが、イタリアを予選敗退に追いやった堅守を打ち破れないまま1対0で敗北。試合後、ソンは「自分自身に失望している。チームが無得点に終わったのは僕のせいだ」と責任を一身に背負いましたが、献身的な守備や中盤まで下がってのゲームメイク、さらに遠めのセットプレーのキッカーなど、数多くのタスクをこなしながら得点を狙うことが難しいのは言うまでもありません。
多大な自己犠牲によって逆説的に点取り屋ではないことを証明してしまったソンは敗北し、よりナチュラルでエゴイスティックなストライカーに徹したルカクとケインがチームを勝利に導く。
もちろん相手との力関係やチームメイトのタレント力、さらに試合展開や戦術など複雑な要素が絡み合っているのがサッカーですが、「エースが生粋のストライカーか否か」という視点から見ると、生まれながらにして持った資質の違いが結果を左右したようにも思える6月18日の3試合でした。
6月19日(火)のマッチプレビュー
さて、今晩はいよいよ日本が初戦を迎えます。思えばこの2-3ヶ月の間にいろいろなことがありましたけど、ここまで来たらもう見守るだけですね。頼むぞ、マジで。
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- コロンビア VS 日本 グループH キックオフ 21:00(NHK)
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日本が格上のコロンビアを相手にアップセットを演じられるか否か。そういった目線で見ることになると思いますが、基本的には今大会の傾向に倣って堅実な試合展開になるのではないでしょうか。
とはいえ、日本の守備組織は大会に出ているチームの中でもかなり脆い方なので、序盤に躓くと「前掛かり→カウンター」のコンボで大量失点の可能性も……。僕としてはとりあえず柴崎岳を先発で起用してほしいです。
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- ポーランド VS セネガル グループH キックオフ 24:00(NHK)
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グループHの動向を左右するゲーム。勝ったほうが決勝トーナメントを大きく引き寄せ、もしドローに終われば日本とコロンビアにとってはチャンスになります。どちらもタレント揃いですが、日本のサッカーファンにとって馴染み深いのは「元」も含めたドルトムント勢(レヴァンドフスキ、クバことブワシュチコフスキ、ピシュチェク)が多いポーランドでしょうか。
セネガルは怪物級のセンターバックであるクリバリ、そしてチャンピオンズリーグ決勝でもゴールを決めた快速フォワードのマネといったタレントに注目。
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- ロシア VS エジプト グループA キックオフ 27:00(日本テレビ)
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早くもグループリーグ第2戦がスタート。誰もが「モハメド・サラーは今度こそ試合に出ることができるのか」という点に注目するゲームですが、その可否はいまだ不透明。
開催国ロシアは初戦でサウジアラビアを5対0で粉砕して勢いに乗っています。ここで引き分け以上の結果を残せれば、得失点差の関係で決勝トーナメント進出が濃厚になるでしょう。逆に初戦を落としたエジプトからすれば絶対に勝たなければいけない試合。サラーを温存している余裕などないはずですから、コンディションさえ整っていれば出場する! …はず。