売れようが売れまいが、アイドルはオタクを笑顔にさせる卒業公演ができた時点で100点満点です。でんぱ組.incを1月7日に卒業した夢眠ねむさんは、100点満点中1万点です。
オタクを亡霊にする辞め方はつらい
アイドルがいつか卒業してしまうことは、しかたない。彼女の人生なのだから。しかし、問題は終わり方です。どんなに小さな会場で微妙な動員であろうと、そもそも卒業公演を開催した時点で立派にもほどがある。ある日突然、グループの公式サイトで「メンバーの〇〇は重大な規約違反により本日付で脱退することになりました」なんて発表されたり、活動休止からのフェードアウトなんてなった日には目も当てられない。そのアイドルを推していたオタクたちには、来世で幸せになってほしい。ちなみに私が今までで一番「それはどうなんだよ……」と感じる終わり方をしたグループは、Stereo Tokyoです。
アイドルのライブに他現場のTシャツを着て行くのはアリかナシか問題は根強いですが、その他現場のTシャツが、変な終わり方をしたアイドルのものだった場合、「いつか成仏してくれ……」とそっと両手を合わせます。いちドルオタとしてわがままを言わせていただくならば、アイドルのみなさまは、オタクを亡霊にさせないような辞め方をしていただきたい……!
夢眠ねむさんは卒業発表の時点で、クレバーをさく裂させていた。まず「書店を開く」「オリジナルキャラクター“たぬきゅん”のプロデュースに注力する」と卒業後の展望を明確に示してくれたので安心感がある。それにグループ在籍時から、出版業界の裏側を取材した体験ルポ『本の本―夢眠書店、はじめます―』(新潮社)を出版したり、たぬきゅんのグッズをこつこつ発売していたので、「ちゃんと準備していたんだなぁ」と納得する気持ちもあった。ほら……やっぱり突然「女優になります!」とか言われて戸惑うケースとか……あるじゃないですか……。
アイドル時代にアイドルという立場を活かして土台をきっちり作ってから、卒業後の活動にスムーズにシフトする。こんな理想的な道のりを見せられて、自分の卒業の仕方について深く考えるきっかけになったアイドルもいたんじゃないでしょうか。
自分は卒業発表の時点で、「ねむさん……やっぱり好き……この卒業は応援せざるをえない……」と感じたのですが、卒業公演はさらにクレバーさ、そして優しさにあふれていた。
まさか強制的に新体制を見せられるとは
最上もが卒業によって封印されたかと思われた『WWDBEST』が「この曲でアイドルの夢眠ねむを終わらせます」としてアンコールで披露されたのち、ねむさんはTシャツにでんぱ組の法被というラフな格好でダブルアンコールに登場しました。
「元でんぱ組.incの夢眠ねむです。みんな、『でんぱ組のライブは今日で見納め』とか『ねむきゅんがいないでんぱ組を見るのが怖いからライブ行かない』とか思ってない? ダメだよ! 私が一緒に見ててあげるから!」
ねむさんがそう叫ぶと、残り6人のメンバーたちがステージに登場。新体制での『Future Diver』を披露しました。て、天才の流れか~! そして、ステージの隅でペンライトを振るねむさんに、もうスポットライトは当たっていませんでした。
新宿へ向かう電車内で、卒業公演帰りのオタクたちが「まさか強制的に新体制を見せられるとは……。こうなったら応援し続けるしかないよね」と笑っているのを横目にしながら、自分もまったく同じ気持ちでした。夢眠ねむ卒業とともにでんぱ組から他界するとは一切考えていませんでしたが、それでも「まぁ現場に行くペースは下がるかもなぁ」と思っていなかったといえば嘘になる。
ですが、今の私は、春から始まる新体制での東名阪ツアーのためにスケジュールを組み立てている。東名阪なら全通も楽勝だなと思ったのに、なんで平日開催ばかりなの!? しかもキャパ小さくない!? これは激戦の予感……。
もちろん卒業公演のダブルアンコールを見た上で、「やっぱりでんぱ組のライブにはもう行かない」と言っているファンもいます。それは個人の自由ですし、心情的にまったく理解できないわけではないのですが、オタクとして推しに対するスタンスが異なるなと考えはする。
私はひたすら「自分は推しに少しでも何か返すことができているのだろうか?」と悩むオタクだった。ねむさんにとって善きオタクでありたいものの、「ライブに足を運ぶ」「音源やグッズを買う」以外のやり方が思いつかず、こんなの他のオタクと変わらない……もっとねむさんに何かしてあげたいのに……と苦しんでいた。要するに病み気味のガチ恋オタだった。だからこそ、ねむさんから「新体制のでんぱ組のライブにも行ってほしい」と頼まれたのなら、ふたつ返事です。そうすれば、ねむさん喜んでくれる? わーい!
卒業していくアイドルに対して、「これからの人生も推していく」と言うのは簡単だ。でもそれは難しい……ということを、かつては考えていましたが、ねむさんがでんぱ組を卒業した今、なんか今後もねむさんを愛し続けることはできるなと漠然と感じている。なので、これからは実践編。「アイドルを辞めて芸能界も引退する相手を推すためには、具体的にどんな方法をとればいいのか?」ということを模索していきます。
推しにはアイドル時代のことを大切な思い出にしてほしいけれど、アイドル時代を人生で一番素晴らしかった時期にしてほしいわけじゃない。これからも右肩上がりで最高の思い出を更新していって、死ぬまでウルトラ超ハッピーでいてください。
夢眠ねむさん、今まで本当にお疲れさまでした。そして、ありがとうございました。これからもよろしくお願いします。