昼下がり、会社ではいつもテレビがついている。某大手食品会社のCMでは、新潟のご当地アイドルグループ・Negiccoがいつも笑顔で商品をアピールしている。おお、Negicco頑張っているな……。
そしてTwitterを開くと、今度はNegiccoが花王「ビオレu」のCMに北陸代表で出演したというニュース。えっ、NegiccoどれだけCM出てんのよ!? 調べてみれば、ウェブ版も含め毎年コンスタントにCM数本に出演しているらしい……。
失礼ながら、Negiccoより知名度の高いアイドルグループは他にも存在する。その中で、なぜNegiccoはCMオファーが絶えないのか……? その疑問を同グループの所属事務所・EHクリエイターズの代表を務める熊倉維仁さんにぶつけてみました!
“新潟の色”が地元企業の依頼を招く
もともと熊倉さんは、新潟でライブハウスを運営していたそう。
「ライブハウスは『地元で音楽活動をしている人々に、日常では味わえないエンターテインメントの空間を貸す』という仕事だが、箱貸し業務だけではつまらない。出演してくれるミュージシャンのタマゴたちを新潟から全国に連れていくこともできたらいい」
という考えのもと、芸能プロダクションの業務もしていたが、残念ながら倒産。いろんな人に迷惑をかけてしまったと落胆する日々の中、たまたま依頼されたのが、タレント養成スクールの生徒たちで結成されたNegiccoのマネジメントだった。
ーあの子たちに『土日は僕にください』と頼んで、必ず週末はステージに立ってもらうことにしました。人前で歌うのが一番の勉強になりますから。ライブハウス時代から、新潟市内のイベントを取り仕切る経験はありました。そういう地域のイベントに出てもらうことにしたんです
地道な営業の結果、新潟テレビ21による自然環境を整えるプロジェクト「Team ECO」の告知に参加することが決定した。Negiccoたちの告知が同局でヘビーローテーションで流されただけでなく、彼女たちは毎週のように海や川、山の清掃作業に参加した。
熊倉さんは、「そういう活動の中で新潟の色が着いたのでしょう」と振り返る。現在、各企業のご当地CMにおいて、北陸版では必ずといっていいほどNegiccoが出演しているのにも納得だ。しかし、東京進出はまったく考えなかったのだろうか?
ードカンと売れたら東京に行くこともあるかもしれませんが、芸能の世界は東京に一極集中していて、Negiccoくらいの実力だと埋もれてしまいます。それに新潟に住んでいるからこそ新潟の企業に依頼をもらえたりするんです
「TIF」出演を蹴ったのは勘違いだった
そう、Negiccoの武器は、なんといっても“新潟色の強さ”。たとえば新潟日報は、地方紙の中でも非常に高い占有率を誇り、中央3紙をしのいでいることで知られる。Negiccoが同社のCMに起用されたのも、ひとえに地元密着のイメージがあるからだろう。
Negicco=地元密着のイメージができあがったのには、世界最大のアイドルフェスティバル「TOKYO IDOL FESTIVAL」(以下、TIF)のオファーを断って、地元のイベントに出演した出来事も大きく関わっているだろう。しかし、実はこの“NegiccoがTIFを蹴った”事件は熊倉さんのミスによるものだったらしい……。
ー当時はアイドル業界のことをよく知らなくて、TIFに誘われても“フジテレビ主催の大規模なアイドルイベント”とは知らなかった。だから先に声をかけられていた地元のJAのイベントに出たんですよ。あの子たちは僕のことをバカだと思ったかもしれません(笑)。その後反省して、アイドルイベントで大切なのはどこだろうと調べました
そして、Negiccoは2012年に「TIF」に初出演! しかし、ここでもハプニングが発生。物販で一切“剥がし”をしなかった結果、長時間に及んでしまったのだ。
アイドルとファンの交流をある程度の時間で終わらせる役割のこと
ーそういった戦略ではないんですけど、逆に『ほのぼのしている』と受け取ってくれた人もいたのかな。それまでお客さん100人はなかなか超えられなかったんですけど、『TIF』に出たことでファンが増えました
音楽性の高さが企業にとって安心材料となる
「新潟から全国へ」という志が一致して、地元大手食品会社のCMには2014年から出演し続けている。今までCMに出演してきた企業の数は、なんと20社近い。しかし、地元企業や北陸版CM以外からもオファーがあるのはなぜだろうか? 昨年10月には、武田コンシューマーヘルスケア「ベンザブロック」のインフォマーシャルとして公開されたオリジナルソング「かぜぐすリリック」のMVが話題を呼んだ。
ー2010年にタワーレコードさんと契約してから、方向性がしっかりまとまってきました。Negiccoの音楽プロデューサーconnieが培った楽曲に、西寺郷太さんや小西康陽さん、田島貴男さん、土岐麻子さんといった著名アーティストの方々からの楽曲提供を受けて、アイドルというよりアーティスト寄りの方向性のイメージがつきました。それによって、音楽好きな35歳以上くらいの世代の方なら、興味を持ってもらえる存在になれたと思います
CMに出演した企業からは、「Negiccoを使ってよかった」という声をたくさん受けている。地元大手食品会社は売上が上がり、地元地方銀行は女性客が増えたそう。また、エースコック「うまさぎっしり新潟」シリーズの応援隊に就任した際は、わざわざ東京から来たファンによって同商品が棚から消えるほどの盛り上がりを見せた。“自分が応援する”という意識が強いファンに支えられているのも、Negiccoの強みだ。
また、NegiccoがCMに起用される理由は、彼女たちが持つ“ふわっとしたほのぼの感”にもあると熊倉さんは推察している。
ーNegiccoは今でも新潟で家族と同居で暮らしていて、家族の愛に育まれた感じというか、ほわっとしたところがあるんです。そこがファミリー層をターゲットにしている企業にとって、ちょうどよかったのかもしれません
多くのアイドルグループが、アイドルファンからは支持されていてもお茶の間での知名度はゼロという状況に悩む中、着実にお茶の間に浸透していっているNegicco。もしかすると「他のアイドルのことは何も知らないけれど、NegiccoのCMは知っている」という老人だっているかもしれない。
[box class=”box28″ title=”Negicco”]
2003年に結成された、Nao☆、Megu 、Kaedeの3人組アイドルグループ。2013年より“にいがた観光特使”を務めている。地元密着型の活動で、ご当地アイドルグループの代表格として知られている。
[/box]