勝った、負けただけじゃ語ることのできない大会となりました。
12月8日、12時に開幕した『HADO WORLD CUP 2018』、日本代表8チーム、海外6カ国の代表6チームの計14チームが東京タワー下、スターライズタワーに終結。
HADO世界一の称号を得るべく文字通り熱戦・激戦が繰り広げられました。我こそが最強と信じし者たちの戦いは、本当にHADOが始まって3年の歴史しかないのか? と思わず疑ってしまうほどでしたよ!
圧倒的強さの日本勢、大会を通して成長を見せた海外勢
WORLD CUPの名を冠しているといえど、日本代表チームと海外各国代表チームとでは、そのレベル差が顕著に見られたように思います。
海外チーム勢の挑戦を、圧倒的な強さで退けていく日本チーム勢。しかし、そうはいっても海外勢も黙ってただただやられているわけではありませんでした。各国の代表になるほどのチームたちは、日本勢との戦いを通じて学んでいるようにも見えました。
特に大会を通して著しい成長を見せてくれたのはマレーシア代表「ARGONAUT」。試合を重ねるごとに日本人選手が戦術としてよく利用する前角ポジション、KOした瞬間のシールド張り、姿勢を低くした回避などを取り入れて、日本の強豪「ANATSUCHI」を相手に9-10と、1点差まで追い上げる意地を見せてくれました。
今回のHADO WORLD CUPでは、海外勢が日本勢に1勝もあげることができませんでしたが、2019シーズンは2018シーズンと同じような展開にはならないようにも思います。敗北を知った彼らが来シーズン、どのような成長を見せてくれるのか楽しみです。
予想がつかない戦いが続いた日本勢同士のグループ突破争い
HADO WORLD CUPはグループごとの総当たり戦においてそれぞれのグループで1位のチームが決勝トーナメントに進出できるということもあり、各グループでは特に日本勢同士が予選突破に向けて熾烈な戦いを繰り広げました。
中でも印象的だった3試合をピックアップしました。
Aグループ:ヒュブリス vs 思考行結-あひる組-
2018シーズンにおいて国内大会となるスプリングカップ、サマーカップで3位の成績を残す「ヒュブリス」と、今大会が初出場となる「思考行結-あひる組-」(以下あひる組)の一戦は試合前、出場チームやHADOに知見のある観戦者のほとんどが「ヒュブリス」優勢で試合は進むだろうと見ていたと思います。
しかし、大方の予想に反して「あひる組」が先制、「ヒュブリス」は開始から30秒が経過するまで得点することができませんでした。スコアはロースコアのまま終盤を迎え残り2秒で「あひる組」が1点をリードするも、残り1秒で「ヒュブリス」が追いつき同点のまま、今大会初のオーバータイムマッチへと突入しました。
残りシールドの枚数で優位に立った「あひる組」が有利かと思われましたが、シールドの耐久力をしっかり把握しつつ攻撃していた「ヒュブリス」前P選手の一発が試合を決めました。最後まで冷静に状況把握に努めた「ヒュブリス」のほうが一枚上手だったという印象です。
Bグループ:和心 vs SLAMDIVA
Bグループ、CグループはAグループと異なり日本チームが3チームずつということもあり、2位争いからの敗者復活戦入りも当然熾烈となっていました。
Bグループでグループ2位の座を争ったのは「和心」と「SLAMDIVA」の2チーム。両チームの争いも非常に見応えのある試合となりました。シールド5を展開してその間にリードを奪いたい「和心」、全員がシールド5に即座に対応して差を限りなく抑えて後半を迎えたい「SLAMDIVA」、まさに意地と意地のぶつかり合い。
激硬5のシールドをすべて破壊された頃、思うようにリードを奪えず攻撃面で不利になった「和心」に、じわじわと迫る「SLAMDIVA」。タイムアップ間際に6-6の同点に追いつき、今大会2度目のオーバータイムマッチに突入しました。オーバータイムマッチ開始直後に「和心」津軽三味線健太郎君が放った狙いすました一発が、一瞬で試合を決めました。
Cグループ:エクスペンダブルズ vs わちゃごな☆ピーポー
すでに「ANATSUCHI」に1敗を喫しており、2位で敗者復活戦を目指すための条件は勝利以外にない絶体絶命のピンチだった「エクスペンダブルズ」の相手は2017シーズンの覇者であり、2018シーズン春夏準優勝を誇る強豪中の強豪「わちゃごな☆ピーポー」でした。
ワールドカップ予選①で1位抜けした「わちゃごな☆ピーポー」と、かたやワールドカップ予選④で最後の切符を手にした「エクスペンダブルズ」、彼らにとって敗者復活戦に進むためには勝利が必須という条件自体がかなり難易度の高いものだったでしょう。
しかし、試合はやってみないとわからないとはよく言ったもので、「エクスペンダブルズ」が1点のリードを守り抜きます。3人が中衛ラインより前に出ることなく、引き気味の戦いを展開した結果、勝利をその手にしました。
終了間際、「エクスペンダブルズ」シブさん選手が見せた匍匐前進避けは、まさに勝利への執念を感じさせるものでした。
白熱の決勝トーナメント!「バンもん」の目にも涙
決勝トーナメントに進出したのは、Aグループ1位の「ヒュブリス」、Bグループ1位の「わちゃわちゃ☆ピーポー」、Cグループ1位の「わちゃごな☆ピーポー」に加えて、Aグループ2位で敗者復活戦を勝ち抜いてきた初出場の「あひる組」の4チームとなりました。
決勝トーナメントからは2本先取制。最大3本マッチで行われます。準決勝第1試合「ヒュブリス」と「わちゃわちゃ☆ピーポー」の対決は、13-8、11-6と2セット連取で「わちゃわちゃ☆ピーポー」が、準決勝第2試合「あひる組」と「わちゃごな☆ピーポー」の対決は12-6、12-4の2セット連取で「わちゃごな☆ピーポー」がそれぞれ決勝進出を決めました。
これで今シーズンにおける決勝カードのすべてが「わちゃわちゃ☆ピーポー」と「わちゃごな☆ピーポー」という兄弟対決ということになりました。
さて、Aグループでの戦いの再戦となった「ヒュブリス」と「あひる組」による3位決定戦は最後の最後までどちらが勝者となるのかわからない、白熱した試合が展開されることになります。
3位決定戦:死守か、下剋上か
第1セット、まず勝負を仕掛けたのは「ヒュブリス」でした。シャア選手がシールド5を展開して普段とは違う戦いでペースを掴みにいきます。これは「ヒュブリス」がサマーカップで見せた手でした。対する「あひる組」はその展開を読んでいたのか、雨蜂選手がシールド対策としてチャージ4で対抗の構えを見せます。読みの勝負では「あひる組」が勝っていたといえるでしょう、しかし、スコアとして追い上げることはできず、6-4で「ヒュブリス」が先取しました。
続く第2セット、今度は「あひる組」が仕掛けました。よね選手がシールド5を展開し、「ヒュブリス」にやられたことをやり返すという展開。メンバーチェンジがあった時点でそのことを「ヒュブリス」も読んでいたのか、シャア選手がチャージ4で対応します。しかし、シールド5展開で自分たちのペースに持っていくという戦い方においては、「あひる組」に分があったようです。スコアは大きく差を見せ、9-3で「あひる組」が第2セットを取り返すことに成功しました。
最終第3セット、シールド5作戦を継続した「あひる組」は、スコアに大きな差こそあけれなかったものの、残り18秒まで1点差でリードを保っていました。試合の雲行きが変わったのはそこからです。残り1枚のシールド5を出したい「あひる組」よね選手でしたがうまく展開できずに残り10秒を切ってしまいます。その間に逆転に成功した「ヒュブリス」、結果はそのまま7-6で辛くも「ヒュブリス」が勝利しました。
“たられば”で語ることにあまり意味はありませんが、残り1枚のシールドが出せていたら状況は変わっていたかもしれない、そう考えるとこの局面での失敗は同チームにとって大きな教訓になるかもしれませんね。
決勝戦を前に行われた3位決定戦にドラマを見たのか、ゲスト「バンドじゃないもん!MAXX NAKAYOSHI」の甘夏 ゆずも、「泣くかと思いました」と涙ぐむ様子を見せる一面がありました。
決勝戦:連覇か、グランドスラム達成か
春、夏、そして世界大会と今シーズンの決勝カードはすべて「わちゃわちゃ☆ピーポー」と「わちゃごな☆ピーポー」という兄弟チームでの争いとなりました。
「わちゃわちゃ☆ピーポー」にとっては2018シーズングランドスラムが、「わちゃごな☆ピーポー」にとっては大会二連覇がかかったどちらにとっても負けられない!
今シーズンこれまでの戦いでは、すべて「わちゃわちゃ☆ピーポー」が勝利しています。果たして今回はいかに?
第1セット、40秒が経過するまでは1点を争う展開でしたが、そこからじわじわと「わちゃわちゃ☆ピーポー」が点差を広げていきます。一時3点差までリードを広げたものの、その差は埋まることなく8-6でまずは「わちゃわちゃ☆ピーポー」が先取しました。
続く第2セットは第1セットとは打って変わって開始から30秒で5-0と「わちゃわちゃ☆ピーポー」が大きくリードを広げます。残り10秒で8点差とスコアは大きく開き、11-6と2セット連取で「わちゃわちゃ☆ピーポー」が見事優勝を決め、2018シーズングランドスラムを達成しました。
もうひとつの戦い、エキシビジョンマッチ
さて、HADO WORLD CUPでしのぎを削ったのは、なにも選手らだけではありません。HADO CREW NO.1を決める戦い「HADO CREW 最強決定戦」や、爆笑を誘った「バンドじゃないもん!」のHADOバトルは、ピリピリとした緊張感漂う空間の中で、一時の安息の時間となりました。
各種大会でMCを務める加藤エンと、見事HADO CREW最強の称号を得た今西琴音がハンデと称した罰ゲームのような試合は、言葉で説明するよりも、実際にその様子を見てもらったほうが早いでしょう。
80秒というのは格闘ゲームの1ラウンドよりも短く、カップラーメンすらも食べられるまでに育ちません。それほど短い時間の中に各チームのドラマを見ることができました。
選手も観客も、大会スタッフさえ涙できるHADOってすごい魅力あるスポーツなのだなと思います。HADO WORLD CUP 2018も無事終了し、すでに2019シーズンに向けた動きが見え隠れしているようです。来シーズンはどんなドラマが待っているんでしょうか。楽しみです。