北朝鮮が発射したミサイルが日本の上空を通過するという事態が起き、突然鳴り響いたJアラートの音に“戦争”というものを一層リアルなものとして感じた人も少なくないかと思いますが、30日のNHK「あさイチ」では「戦争はイヤ! 子どもたちと考える」と題した特集を放送。今回はちょっとまじめなお話です。
「仕方がない」という一言
ミサイルが発射された29日朝にはテレビ各局が速報を流し、NHKでも連続テレビ小説「ひよっこ」が中止となりました。イノッチは「平和の象徴である朝ドラがなくなっちゃうんだなって思った」とコメントしていましたが、小さなことかもしれませんが、確かに毎日放送されているはずの朝ドラが中止になるというのは、子どもたちにとっては日常ではなく非日常的なことが起きているんだと実感しやすいものだったかもしれません。
元イスラエル兵士の男性が日本の子どもたちに戦争の体験を話すVTRがオンエアされましたが、男性は幼い頃から「人を殺すのはよくないこと」だと教わる一方で「戦争は国のために仕方のないことだ」「国のために死ぬのは素晴らしいこと」だとも教わり、国を守るために疑問もなく人を殺せるようになったんだそう。
でも多くの一般市民が犠牲になり、子どもたちも命を落とすことに疑問を抱き始め、多くの犠牲者を出した空爆に参加した友人の兵士に、「なぜ、450人もの子どもを殺したのか」と聞くと、「しょうがなかった」という答えが返ってきたことに驚いたのだとか。男性は「『しょうがなかった』で片付けていいのか。これじゃいけない。戦争はいけない。『しょうがない』でも人を殺しちゃいけない」と考えをあらためたのだと、子どもたちに伝えていました。
男性が繰り返し使っていた「しょうがない」という言葉について、NHK解説委員のヤナギーこと柳澤秀夫さんは「これって戦争に限らず、普段我々もそういう気持ちになることもある。いろんな難しい問題にぶち当たって解決策が見いだせないときにそういうふうになる。そういうときってみんなおそらく、考えが止まってるんじゃないかな。よく聞く『思考停止』の状態。『思考停止の状態になったら、先が見えないよ、そこで考えを止めちゃいけないよ』って言ってくれてるんじゃないかな」と解釈。
「過去の戦争ってなんで起きたのかなって思うと、この『しょうがない』『仕方ない』っていうのが結局、戦争の引き金を引くきっかけになったケースが歴史にはたくさんある気がする」と語っていました。「しょうがない」って言葉、普段から都合よく使ってる気がします……。
一方で有働由美子アナウンサーは「ついつい、戦争って政治の延長だから、外交をやる人、政治をやる人がちゃんとやっててくれてるはずだから、『戦争どうするか1人ひとり考えよう』って急に振られたときに、『どうやって考えるんだっけ? 私が何かやって変わるんだっけ? 戦争止まるんだっけ?』って思うと、仕方がないと思わないために、日頃どうすればいいの? って……」と疑問を投げかけていました。
またVTRでは、内戦で数十万人の犠牲者を出すシリア出身の男性が、兄弟や友だちが敵味方に分かれて戦っている状況を子どもたちに伝えました。子どもたちから「もし家族が犠牲になったら?」という質問には、「悲しいけど、シリア全体を考えたら我慢するしかない。“やられたらやり返す”になると、誰かが私の家族を殺したとして、私がその人を殺します、その人も私の家族がいるからまたやる、そういうことの連鎖になってしまうからキリがない。戦争になってしまう。殺すか殺されるかで言ったら、殺されることを選びます」と語っていたのが印象的でした。
この言葉は、子どもたちに大きな衝撃を与えた様子。「加害者にはなりたくないけど、加害者にならざるをえない状況になったら、自分は被害者になれるのかって考えると、厳しい」「もしその立場に置かれたら、加害者になるかもしれない。自分が生きるために」と様々な意見が出ていました。
平和を守るために、家族を守るために武器を持ち、戦争をする、という矛盾。なぜ人は根源的には平和を望みながら武器を捨てられないのでしょうか……うーん、難しい。簡単には答えが出せない難しい問題ですが、そこで思考停止せずに考えるということが大事なのかもしれませんね。