いとわズHADO部、HADO SUMMER CUPに向けて走り出す!

女二人とケンカするときの必勝法

キミ、もし女二人と喧嘩になったらどうする?

こんな質問をされたことがある。16歳、地元のコンビニでバイトをしていた頃のことだ。相手はそこで深夜シフトに入っていた30歳ぐらいの人、あんまり覚えてないけど、確かグチさんと呼ばれていた。

16歳の僕は一回り以上離れたグチさんを舐めていた。髪はボサボサだし、いつも同じ服を着てるし、バイト上がりの僕を、お客さんへと同じテンションで「ありがとうございましたぁ~」と見送ることにも大きな違和感を覚えていた。

グチさんとは仕事の引き継ぎ以外喋ったことはない。ほかの同僚ともプライベートな話をしているのは見たことがない。そんなグチさんが初めて僕にかけた言葉がこれだ。

「キミ、もし女二人と喧嘩になったらどうする?」

意味がわからない。場所はレジ前、立ち読み客だけの店内。BGMが流れていたにも関わらず、一瞬の静寂に包まれた。

肉体的攻撃を仕掛ける喧嘩なのか? それとも口撃なのか? そもそも、なぜ僕にそれを? そしてなぜここで? 知っている女? 知らない女? いやいや、なぜ女が二人? 質問の意味がすべてわからない。とりあえず僕は、「それはどういうことですか?」と無難に聞き返した。

するとグチさんは言葉を詰まらせる。誰がどう見てもグチさんのコミュ症は明白だ。僕が質問の意味を理解できないということを理解できていない。視線を左斜め下に落とし、右手でクチビルに触れる。明らかに動揺している。おそらくバイト仲間とコミュニケーションを取ろうと、勇気を出して話しかけたのだろう。もしかしたら、何日も前から僕に話しかけるチャンスをうかがっていたのかも知れない。

だとしたら、そんなグチさんの大チャレンジを僕が台無しにするワケにはいかない。なんとかして会話を成立させなければならない。しかし、あまりも話題が難解すぎる。それでも16歳の僕は一生懸命会話の整理に努めた。

沢野

それって知り合いの女性二人ですかね?それとも、道ばたで因縁つけられたとかですか?

道ばたで女二人に因縁つけられるってなんだよ。僕は意味不明な言葉を口走っていることは自覚しつつも、会話を成り立たせようと必死だった。しかし、グチさんは口をへの字にして目をパチクリしているだけ。

沢野

殴るとか蹴るとか、そういう話ではないですよね?口喧嘩っすよね?いや~女って口喧嘩強いイメージありますから難しいですよねぇ

眼を潤ませるグチさん。焦る僕。

沢野

いつも姉に口喧嘩で負けてるんですよ~。あいつ、馬鹿のクセに口だけは達者なんです。そんなヤツが二人、これはそう簡単には勝てそうにないっすね。なんだろう?大きい声を出して威嚇するとか?それじゃ口喧嘩じゃないっすよね。どうしたら勝てるんだろう?

必死で口喧嘩に勝つ方法を探す僕。会話を諦め、業務日報に眼を向けるグチさん。

っっざけんなよこいつ!!! 16歳のガキが身内を馬鹿呼ばわりしてまで会話を続けようとしてんのに、何を仕事に現実逃避してんだよ!!

しかし、ここで怒ってもしょうがない。高校生ながらグチさんより大人な僕は、

沢野

いや~女二人にケンカで勝つって難しいっすね!次シフト入るまでに頑張って必勝法考えておきます!

と謎の宿題を自らに課してその場を後にした。

人付き合いとはなんてダルい作業なのだろう。ユニフォームから学校の制服に着替えた僕は、笑顔を作り直してグチさんに挨拶、店を出て行った。しかし、何かがおかしい。いつもの「ありがとうございましたぁ~」という他人行儀な声が聞こえてこないのだ。もしかしたら、僕の対応が至らないばかりにグチさんは傷ついてしまったのかもしれない。なんとも言えないモヤモヤした感情を抱えながら、僕は少し離れた駐輪場へと向かった。

自転車の鍵のダイヤルを回していると、ものスゴイ勢いで何者かが走りせまってくる。グチさんだ。グチさんは、人と人が話をする常識的な距離の半分ほどの場所まで僕に詰め寄ると、ものすごい形相でこう言った。

はぁはぁ、、、ブスと、、、ブスじゃないほう、、、二人をそう呼ぶ、、、格差を付けてやると、、、女ってのは、、、仲間割れをするもんなんだ、、、

人生には何の意味もないアドバイス。しかし、15年以上経った今でも、僕の脳裏に強烈に刻み込まれている。

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