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『新感染 ファイナル・エクスプレス』が色んな意味で速い!“スピーディな展開”について考える

沢野

毎朝の通勤時間が退屈です。スマホをいじりたくても、僕が乗る都営新宿線は、肝心なところで電波がなくなってしまうのでストレスが溜まり、本を読みたくても、三半規管が弱い僕は、すぐに酔ってしまいます。なんとかしてください。

という悩みを当編集部の原田に相談したところ、韓国のパニックホラー映画『新感染 ファイナル・エクスプレス』を観ろとの答えが返ってきた。

【来た相談全部ホラーで返す①】通勤に悩みを抱えている人はどうすればいいのか?

いくら電車内が暇だとはいえ、新幹線のパニックホラーを観たところで解決されるわけがない。騙された気になって仕方なしに観てみたら、本当に騙された。上記のお悩み解決のヒントは、同映画ではまったくもって描かれていなかった。

だが、オススメしてくれたことについては感謝を伝えたい。なぜなら、ストーリー、キャラクターの個性、感動シーンの構造、すべてがベタベタの王道ながら、スピーディな展開により、120分間常にハラハラ、イライラ、グスングスンさせてくれたからだ。

スピ—ティな展開ってなんだよ

じゃあその“スピーディな展開”ってなんだろう? そこら中で眼にするこのワードの正体は一体なんなんだろう?

たぶんこれ、説明の上手さだと思う。ほかにもいろいろと要素はあるかもしれないが、素早く的確に物事を説明する技術を擁した作品が、“スピーディな展開”という評価を受けているのだ。少なくとも、「新感染 ファイナル・エクスプレス」は、説明がすごく上手だった。この邦題もすごくダサいけど説明力は感じる。

キャラクター説明が上手

設定説明もさることながら、キャラクター説明が特に上手だった。妻と別居中でファンドマネージャーを生業にする仕事人間の主人公ソグ(コン・ユ)と、そんな父に愛想を尽かして母親のいる釜山に行きたがる娘のスアン(ム・スアン)は、それなりに丁寧に描かれたが、そのほかの主要人物の紹介が実にスマートだった。

たとえばソグと並び立つもう1人の主人公とも言えるサンファ(マ・ドンソク)だ。サンファは、高速鉄道KTX車内のトイレの前に立っていた。異様なほどに筋肉が発達したビジュアルは、下手に格闘技をやっているだなんだの説明なしでも、一瞬で“強い”ということを理解させる。トイレに入ろうとするスアンにちょいと下ネタ風味の親父ギャグをかまし、粗野な性格を表現。

その後トイレから妊娠中の妻・ソギョン(チョン・ユミ)が出てくることで、その妻思いの優しい性格が窺えるようになっている。たったの数十秒でサンファの3つの特性が説明できているのだ。実にスピーディ。

ほかの登場人物もサンファ同様、何気ないシーンで性格や人間関係が簡潔に説明されている。

さらに、早々に車内に侵入したゾンビとの格闘や対応で、人物のキャラクターは深掘りされていく。サンファはソギョンを守るためにゾンビに立ち向かい男気を見せるも、ソグは自分とスアンが助かったのだからとドアを閉めてサンファとソギョンを見捨てようとし、利己的な性格が露呈してしまう。これにキレたサンファはソグに詰め寄るも、被害者のソギョンが止めることで、ソギョンからはどんなピンチでも冷静に最善を選べる女性の強さを感じることができる。

つまり、最低限のキャラ説明がコンパクトに行われ、ゾンビものの本懐であるパニック部分に早々に突入し、そこでキャラクターを掘り進めているのだ。

もはや機能美!ゾンビと新幹線の相性が美しい

ゾンビの生態は映画によって異なる。脳を破壊すれば死ぬゾンビもいるし、光に弱いゾンビもいる。人を襲わないゾンビや、喋るゾンビだっている。それは一般的なゾンビ観というものが全世界で統一されていないからであって、それぞれのゾンビ映画が作中でオリジナルルールを提示しなければ、視聴者は混乱してしまう。

この説明もスマートだった。いや、この説明を利用したストーリー展開がスマートだった。上記のシーンでゾンビはドアの開け方がわからないことが発覚する。ここでゾンビの知性のほどがわかるのだが、大事なのはそこではなく、“ドアが開かない”ということだ。

これにより、新幹線という縦長の空間に安全地帯が生まれ、登場人物に作戦会議をする時間や休息が与えられる。また、“安全地帯”が生まれるということは、同時にその隣に“危険地帯”が生まれるということ。ドアを開けるだけでその境目が壊れるのだから、醜い人間同士の争いや、仲間を助けるための勇気といったドラマが描きやすくなっている。

新幹線という外界と遮断された空間、逃げ場はないが、情報量も少ない。これがまた制作側にとっては、すごくすごく都合が良かった。「ゾンビの正体は?」「このゾンビは他にもいるの?」「放っておくとどうなるの?」「政府の対策は?」。視聴者が感じる疑問を、主人公達も同じように持つことで、視聴者は“わからないこと”に違和感を感じなくなる。情報が少ないと、少ない情報を素直に仕入れることができるため、とにかく今、画面に映し出されている情報にのみ、視聴者が集中することができる。つまり、結果的にスピーディに状況が説明できているということなのだ。

「新幹線×ドアが開けられないゾンビ」なんて便利な設定なのだろう。この考え抜かれた合理的な設定には、もはや機能美すら感じる。

そんな完璧な設計に、これでもかと山盛りのゾンビが登場。意外性のある動きや演出に加え、人間同士のドラマが組み込まれているのだから、120分間があっという間に感じるのは必然だ。

王道展開がスピ—ティに描かれた「新感染 ファイナル・エクスプレス」。僕の悩みの「電車の中で暇」はまったくもって解消されなかったが、見て損はない一作だろう。

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