“Привет!”
ロシア語で挨拶を意味する単語で、軽い挨拶をするときにも使う。英語の”Hi!”くらいのニュアンス
急にロシア語で挨拶をされても困る! と思われた方も思われなかった方も、突然ですがロシアに興味はありますか?
そもそも、ロシアと聞いて何を思い浮かべるのでしょうか? マイナス40度の極寒世界や、真っ赤なビーツの入ったボルシチ、ロシア民話のカチューシャだったり。
ロシアという大陸にも私たちと同じ人がいて日常生活を送っているのに、あまり知られていません。
ロシア好きの私にはそれが悲しきことこのうえないわけです。
遠い異国のように感じる国であり、どこか独特な空気が漂っている国でもあるロシア。そんなロシアの小ネタやニュースをこの上西が取り上げていく所存でございます。
初回はジャブで距離感を掴むボクサーのごとく、お酒についての小ネタを披露していきます。
ウォッカは一気! ビールはジュース!
ロシアといえば酒飲み、酒飲みといえばウォッカ、ウォッカといえば……なんだかマジカルバナナをやっているみたいです。
ロシアという単語から酒豪、ウォッカなんて連想する人も多いんじゃあないでしょうか。
日本でも「スミノフ」というロシア生まれのウォッカが売られているのを目にするし、ロシア国内には「нефть(石油)」という名前のウォッカがあったりします。
このнефть(石油)、度数は平均的な40度程度ですが石油という名を冠しているだけあって、蓋を開けた途端に工業的な臭いが漂ってきます。
味はあまり感じず、鼻を通る臭いだけがまるで石油のよう。こんなものを好き好んで飲む人がいるのかと思うと……悲しくなるお酒です。
典型的なロシア人の酒のたしなみ方
ところで、ロシア人のウォッカの飲み方、ご存知ですか?
ウラジオストクへ留学をしていた先輩から聞いた情報を鵜呑みにするとこんな飲み方をするそうです。
- バターをたっぷり塗ったパンを一口食べる
- ショットグラスで一気に煽る!
- 再びバター付きパンをかじる
- ウォッカを飲む!
エンドレス。これを延々と繰り返すらしい…。
バター付きのパンを食べる理由は胃を守るためだそうで、脂質が胃の粘膜を保護するんだとか。もちろん、バター付きパンでなければいけない! ということではないらしく、チーズやジャガイモなんかもあわせて食べるそう。
つまり、飲むときは胃にモノを入れろということ。
一気に飲むのも、ちびちび飲んでなんかいたら喉が焼けてしまうからなんです。
なぜそうまでして飲む……その理由はおいおい聞いておきたいところ。
とまあ、強い酒をガブガブと煽っている印象が強いロシア人。つい最近まで「ビールは清涼飲料である」と定義されていました。
…ビールが清涼飲料? 何を言ってるんだろう?
ロシア人曰く「アルコール度数がわずか5%なんて、そんなもので酔っ払えない! だからビールは酒ではない!」とのこと。
そんな主張、日本人としては何とも信じがたい。
小学生でもビールはセーフ!?
日本人からするとロシアではトンデモな主張がまかり通っており、小学生でさえ下校中にキオスク(киоск)でビールを買って飲んでいたんだそう。
日本でも駅のホームで展開しているコンビニみたいなやつ
ロシアでビールが法律でアルコールに分類されたのって2011年。つい最近なんですよ。
そんなアホな……と思われない人、います? いや、私は思ったし、日本人なら誰だって思うはず。
小学生が道端のキオスクで「дайте, пожалуйста, пиво(ビール下さい)」と、まるで大人のように買っている姿はまったく想像ができません。
とは言うものの、春や夏はともかく、冬は都市部でも非常に寒いのがロシア。
郊外に行けばそれこそ髪の毛はおろか鼻毛まで凍る世界です。氷点下40度にもなる寒さのなか、身体を温める数少ない方法がビールを飲むことだったんじゃないか? と想像すると、なんとなく納得してしまいそうになる…かも。
アルコールならなんでもいいのか!? 工業用でも飲んじゃうロシア人
酒を飲むのは「寒いから」、「お国柄だから」ということだけが理由ではないのです。
これまでもメディアで多々取り上げられてきましたが、ソ連崩壊前のロシアは、国全体が暗く沈んでいました。
物価はアホのように高く、黒パン1つ買うにもカバンいっぱいのルーブル紙幣が必要となった時代、この世の終わりのような状況ではとにかく酒を煽ることくらいしかなかったのです。
ロシアびいきの上西としてはなんとも胸が痛む歴史です。
一口に酒といってもウォッカやビールなんて手が出せない時代。自宅で作る密造酒・サマゴンや、ヘアスプレー、制汗剤、香水といった工業用アルコールを中心に、とにかくアルコール成分が入っていれば何でもごくごくと飲んでいたのです。
まさにおそロシア、いや、おソレンいった!
…こんな悪酒の飲みすぎで、ソ連時代には一時期、平均寿命が50代にまで落ち込んでしまいました。その後には禁酒令も出されましたが、一体何人が従っていたのでしょうね。
資本主義に移行しつつある現在、都市部でこそずいぶんと減ってはいますが、地方では工業用アルコールを煽って亡くなる事故がいまだに後を絶ちません。
ふと思い出したのが、以前ロシアの若者に「お酒、強いんでしょう?」と聞いたときのこと。
そのとき彼はふふふんと笑い、お酒が飲めること、ましてや強いことは恥だと言っていました。
そのときは”なぜ?”と思っていたけれど、母国の酒飲みたちがバカなことをしでかしたというニュースがこれだけ海外に出てしまうなんて、やっぱり恥ずかしく思っていたのかもしれない…と、今さらながら感じます。
若者の意識が変わることで、ロシアの飲酒問題は改善されていくのかしらと、希望的観測を持つ上西なのでした。