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	<title>2018W杯全部見る  |  いとわズ</title>
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		<title>【ロシアW杯全部見る】瞬間と永遠</title>
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		<dc:creator><![CDATA[チョウ ウヒョン]]></dc:creator>
		<pubDate>Mon, 16 Jul 2018 09:09:47 +0000</pubDate>
				<category><![CDATA[2018W杯全部見る]]></category>
		<category><![CDATA[2018サッカーW杯]]></category>
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	すべては夜に決行されて、夜のうちにすべてが終わる。僕にはそれを止めることができない。 瞬間について 22時、僕は沼袋の銭湯にいた。とても混んでいた。露天風呂では芸人志望の若者がコントのネタを練っていた。内湯はハーブ湯で、効果のほどはわからないが、少し得をした気分になった。風呂から上がって、冷房の効いた脱衣所でサービスのヤクルトを飲んだ。そして10円玉で動くタイプのドライヤーで髪を乾かした。もうすぐW杯の決勝が始まる。でもスターティングメンバーも僕の予定も、まだなにも確定していない。 喫煙所で1本だけタバコを吸って、番台の女性に挨拶をして銭湯を出た。僕は家ではなく、どこか外でサッカーを見たいような気分になっていた。すでに友人が「中野の&#8230;]]></description>
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	<div class="theContentWrap-ccc"><p>すべては夜に決行されて、夜のうちにすべてが終わる。僕にはそれを止めることができない。</p>
<p><span id="more-4640"></span></p>
<div class="dp_toc_container pos-before_first_h allow-toggle" role="navigation" data-margin="30"><p class="toc_title_block"><span class="toc_title icon-list">INDEX</span><span class="toc_toggle icon-up-open" role="button"></span></p><ul class="dp_toc_ul has_title"><li><a href="#e79eace99693e381abe381a4e38184e381a6-1">瞬間について</a></li><li><a href="#e6b0b8e981a0e381abe381a4e38184e381a6-2">永遠について</a></li></ul></div><h2 id="e79eace99693e381abe381a4e38184e381a6-1">瞬間について</h2>
<p>22時、僕は沼袋の銭湯にいた。とても混んでいた。露天風呂では芸人志望の若者がコントのネタを練っていた。内湯はハーブ湯で、効果のほどはわからないが、少し得をした気分になった。風呂から上がって、冷房の効いた脱衣所でサービスのヤクルトを飲んだ。そして10円玉で動くタイプのドライヤーで髪を乾かした。もうすぐW杯の決勝が始まる。でもスターティングメンバーも僕の予定も、まだなにも確定していない。</p>
<p>喫煙所で1本だけタバコを吸って、番台の女性に挨拶をして銭湯を出た。僕は家ではなく、どこか外でサッカーを見たいような気分になっていた。すでに友人が「中野のHUBで決勝を見よう」と誘ってくれていた。22時30分ごろにあらためて連絡すると、「もう席を取っている」とのことだった。ありがたい話だ。僕は自転車に乗って中野駅方面へ向かった。風呂上がりに中野通りを自転車で走ることほど気持ちのいい行為を他にあまり知らない。僕は口内に残留したヤクルトのほのかな酸味を味わいながらペダルを漕ぎ、予想以上に自分が高揚していることに気が付いた。</p>
<p>HUBに入ると、友人は喫煙席の隅っこで文庫本を読んでいた。僕は注文カウンターでビールをもらって、友人と軽く乾杯をした。キックオフまで、およそ1時間15分。まだそこまで混んでいないが、すでにスタンディングの客もちらほら出てきている。日本人もいれば外国人もいる。友人と僕の2人の席にさえ1人の日本人と1人の韓国人がいるのだから、当たり前と言えば当たり前のことなのだが。</p>
<p>僕たちは他愛もない世間話や、それぞれの近況についての話をした。笑いもしたし、苦虫を噛み潰したような表情になったりもした。それは完全に一般的な会話だった。モニターではずっとNHKが放送されていた。解説者たちが映像を交えながら今回のW杯を振り返り、それが終わると日本代表の今後を担うであろう若手選手たちが紹介された。僕たちはそれを見るでも見ないでもなく、一般的な会話を続けた。どの瞬間を切り取っても特殊とは言えない、本当にありふれたコミュニケーションだった。一瞬、北条裕子の『美しい顔』の話題になりかけたが、お互いに作者が美人であることくらいしか知らなかったので、あまり長続きはしなかった。</p>
<p>試合開始まで1時間を切ったところで、両チームの先発メンバーが紹介された。どちらも準決勝と同じ、ベストの11人がチョイスされていた。僕と友人は負傷が噂されていたイヴァン・ペリシッチの名前を確認してひとまず安堵した。このあたりから、店内はにわかに混み合ってきた。みんなW杯の決勝を見に来ているのだ。彼らがなぜ家ではなくHUBで見ようと思ったのか、僕にはわからなかった。僕自身もなんでここにいるのか、正直よくわかっていなかった。ただ、なんとなくこういう場所で見た方が体験として印象に残るような気はしていた。</p>
<p>試合に先立って、会場のルジニキ・スタジアムではクロージング・セレモニーが行われた。「旧共産圏特有のマスゲームだ」と、僕はあまり面白くない冗談を言った。それは大きなスポーツイベントに付随する、ごくごく当たり前のセレモニーだった。別に旧共産圏に限ったものでもないし、特に感動的なものでもない。途中、コンガを叩くロナウジーニョが登場したときは盛り上がったが、見せ場はそれくらいだった。試合開始の20分前には、僕も友人も1杯目のドリンクを飲み切ってしまっていた。僕は2杯目を購入するために再度カウンターへ向かった。</p>
<p>カウンターには長い行列ができていた。一瞬並ぶのを躊躇したが、飲み物なしで2時間を過ごすのは耐えられない。僕は背の高いフランス人の後ろに並んだ。オリヴィエ・ジルーのアーセナルのユニフォームを着ていたから、たぶんフランス人だと思う。もしかしたらイギリス人かもしれない。ジルーを含むフランスとクロアチアの22人が入場して両国の国歌を斉唱し終えたころ、ようやく注文する番が回ってきた。大きいサイズのジントニックとカシスソーダを頼むと、ドリンクを提供する係の若い女性が「てかカシスねえし！」と言った。彼女は明らかにイライラしていて、カシスリキュールのボトルを補充しようとして食器をまとめて落としてしまった。</p>
<p>「大丈夫ですか？　めっちゃ大変そうですね」口に出した瞬間に、馬鹿なことを聞いてしまった、と思った。</p>
<p>「大丈夫じゃないですよ。サッカーマジ興味ないんで。あー、アホくさい。帰りたい」</p>
<p>本当に、冗談抜きで腹が立っているようだった。それでも彼女はてきぱきとドリンクを作って提供してくれた。それが仕事だとはいえ、なんだか申し訳ない気持ちになった。彼女のサッカーに対する認識が、「興味ない」から「嫌い」になる瞬間を自分の手で演出してしまったような気がした。僕は人波をかき分けて席へ戻り、友人と2回目の乾杯をした。24時から24時1分。キックオフから数十秒が経過していた。</p>
<h2 id="e6b0b8e981a0e381abe381a4e38184e381a6-2">永遠について</h2>
<p>序盤からクロアチアが押し気味に試合を進めていた。しかし、昨晩の彼らはとにかく不運だった。18分のフランスの先制点の場面。そもそも、マルセロ・ブロゾビッチのアントワーヌ・グリーズマンに対するファウルの判定自体が厳しいものだった。そしてグリーズマンがセットプレーを蹴ったとき、ポール・ポグバはオフサイドポジションにいて、明らかに競り合いに関与していた。ボールがマリオ・マンジュキッチの頭をかすめてオウンゴールになってしまったことだけでなく、最初からなにもかもがクロアチアにとって悪い流れだった。ゴールの瞬間、HUBの店内でも当然のように大きな歓声が上がった。クロアチアびいきの僕にとっては、なんとも言えない歓声だ。それでも、28分にセットプレーの流れからペリシッチが左足を振り抜いて同点に追いついたときはとんでもなく興奮したし、「いける」と思った。友人（ややクロアチア寄り）ともう一度乾杯をした。すべてはここから始まるような気がした。</p>
<p>でも、残念ながらそうはならなかった。</p>
<p>グリーズマンのコーナーキックをペリシッチがクリア。このプレーに対して、フランスの選手はハンドではないかと主審にアピールする。確かにボールがペリシッチの手に当たっている。しかし故意に当てにいっているわけではないし、仮にペリシッチが触れなくても、後ろに控えていたイヴァン・ストリニッチがクリアしていたであろうボールだ。VARによる長い検証の結果、フランスにPKが与えられた。主審が何度も映像を見返すほど微妙な判定だっただけに、クロアチアを応援する身としては少し不満が残る。これをグリーズマンが冷静に決めて2対1。決勝戦はフランスがリードして折り返すことになった。</p>
<p>ハーフタイム、HUBの店内に「フードはラストオーダーになります」とアナウンスが入った。僕たちはあらかじめ購入していたスパゲティーを揚げたつまみを齧り、前半戦を雑に振り返った。友人は「最近、ルカ・モドリッチが女子に人気」という話をした。レアル・マドリードでのチームメイトとの絡みにも定評があるそうだが、そういった嗜好は正直よくわからなかった。なので返答として、イヴァン・ラキティッチの奥さんがかなりの巨乳だという話をした。こんな話だったら、僕は永遠に続けられる。</p>
<p>後半、早い時間帯に追いつきたいクロアチアは攻めに出た。ボールを奪うエリアも、前半よりも高い位置に設定しているように見えた。攻めるクロアチア、守るフランスという構図は変わらないが、キリアン・ムバッペの前方のスペースは明らかに広がっていた。ムバッペを走らせてカウンターで追加点。それがフランスにとって最良で、クロアチアにとって最悪の展開だった。</p>
<p>52分、ポール・ポグバからの長い縦のパスがムバッペに通る。ドマゴイ・ヴィーダを一瞬で振り切ってシュートを放つが、これはダニエル・スバシッチがしっかりとセーブ。そのこぼれ球を拾って反撃に転じたクロアチアだったが、ここで何度目かの、この試合でもっとも不条理なできごとが起こった。</p>
<p>モドリッチからラキティッチへのサイドチェンジが通ったときに、何人かの乱入者たちがピッチを横切って試合が止まった。ブーイングが轟くスタジアム。そしてHUBの店内に広がるため息と笑い声。僕と友人は顔を見合わせて首をひねった。大舞台での乱入者は珍しくないが、しかしなぜ、よりにもよってこのタイミングなんだ。</p>
<p>後で知ったことだが、乱入者たちはロシアのフェミニズム・パンク・ロック集団、Pussy Riot（プッシー・ライオット）のメンバーだった。彼女たちの声明文を読んで、突然の乱入が抑圧的なロシア政府とプーチンに対する反権力のパフォーマンスだったこと、それが切実な行為であったこと等々を、ある程度までは理解した。W杯の決勝という舞台を選んだ意味もわかる。完全に同調できるとまでは言わないが、そういったメッセージを全世界に発信するのは意義があることだと思う。ただ、なぜ、あのタイミングで？</p>
<p>単純に、プレーが切れているときであれば問題はなかったのだ。しかし、めまぐるしく攻守が入れ替わっていたあの一連のシークエンスの真っ最中に、なぜ……。「たかが球蹴り」だとか「政治の祭典」だとか「人権抑圧国家であるロシアの国威発揚」だとか、コンシャスな人たちがなにを言っても構わないし、そういった指摘はおおむね正しい。単純に比較できるものではないにせよ、Pussy Riotのパフォーマンスは「たかが球蹴り」なんかよりもはるかにシリアスなのかもしれない。だが、「たかが球蹴り」にすべてを賭けている人間たちにしてみれば、あのタイミングでの乱入は心の底からうんざりするようなものだったはずだ。クロアチアのデヤン・ロヴレンが激怒したのは、Pussy Riotのサッカーに対する軽蔑と無理解が度を越していたからに他ならない。</p>
<p>とにかく、こうしてクロアチアはチャンスをひとつ失った。もしかしたら存在したかもしれない別の未来も、永遠に失われた。</p>
<p>その数分後、エンゴロ・カンテを下げてスティーヴン・エンゾンジを投入したフランスは流れをつかみ、ポグバとムバッペのミドルシュートで立て続けに追加点を奪う。4対1。事実上の決着だ。直後、マンジュキッチがウーゴ・ロリスの凡ミスを突いて1点を返すも、フランスの守備は堅牢で、クロアチアの努力が報われる気配はない。後半開始直後まではタバコの火が触れそうになるほど満員だった店内にも、かなり余裕が出てきた。もうすぐW杯が終わる。乱入者、フランスの主人公たち（グリーズマン、ポグバ、そしてムバッペ）の活躍、CL決勝のロリス・カリウスを思い出させる「ロリス」のミス……。僕は前半のペリシッチのゴールを思い出せなくなるくらい満腹になっていた。解説者の山本昌邦と藤田俊哉は、この期に及んで延長戦での交代枠が増えた話、そしてVARの話を何度も繰り返し、そこに安い精神論を交えて試合中に大会を総括していた。レベルの低い解説だった。なにもかもが大味な決勝戦だと思った。</p>
<p>試合終了のホイッスルが鳴って、店内には一斉に歓声と拍手が起こった。僕も友人も拍手をした。ディディエ・デシャンの胴上げ、群れから離れて嬉し涙を流しながらピッチを練り歩くグリーズマン、スマートフォンでセルフィーを撮る選手たちと、思い思いの形で歓喜を表現するフランス。クロアチアは選手とスタッフ全員で円陣を組む。ベタに感動的な光景だった。なんとなくもう一杯飲みたくなってカウンターに向かうと、先刻の女性店員がサーバーの清掃をしていた。</p>
<p>「あの、もうラストオーダー、終わってます、よね」また馬鹿なことを聞いてしまった。</p>
<p>「終わってますね、閉店です。さようなら」彼女は冷たくそう言った。</p>
<p>友人と別れた後、僕は永遠に終わらない決勝戦、永遠にラストオーダーがやってこないHUB、永遠に続く低俗な会話、そして永遠に続くお祭り騒ぎを夢想した。そんなものが存在しないのはわかっていたが、そうせずにはいられなかった。ロシアW杯が終わった。僕にはそれを止めることができなかった。</p>
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		<title>【ロシアW杯全部見る】3位じゃダメなんでしょうか？</title>
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		<dc:creator><![CDATA[チョウ ウヒョン]]></dc:creator>
		<pubDate>Sun, 15 Jul 2018 09:50:58 +0000</pubDate>
				<category><![CDATA[2018W杯全部見る]]></category>
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	ベルギー対イングランドの3位決定戦が始まったとき、ラファエル・ナダルとノバク・ジョコビッチによる荘厳な準決勝はまだ続いていた。ベルギーのトーマス・ムニエが先制点を奪ったときも、彼らはタイブレークのない最終セットを戦い続けていた。言うまでもなく、ウインブルドンの準決勝にはとてつもなく大きな価値がある。では、W杯の3位決定戦はどうだろうか？ 3位決定戦は無意味なのか？ イングランド代表でキャプテンを務めていた往年の名ストライカー、アラン・シアラーは自身のTwitterにこう綴っている。 「3位と4位のプレーオフなんて完全に愚かだ。やりたい選手はいない」 また、4年前のブラジルW杯の話になるが、当時オランダ代表の監督だったルイス・ファン・&#8230;]]></description>
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	<div class="theContentWrap-ccc"><p>ベルギー対イングランドの3位決定戦が始まったとき、ラファエル・ナダルとノバク・ジョコビッチによる荘厳な準決勝はまだ続いていた。ベルギーのトーマス・ムニエが先制点を奪ったときも、彼らはタイブレークのない最終セットを戦い続けていた。言うまでもなく、ウインブルドンの準決勝にはとてつもなく大きな価値がある。では、W杯の3位決定戦はどうだろうか？</p>
<p><span id="more-4636"></span></p>
<div class="dp_toc_container pos-before_first_h allow-toggle" role="navigation" data-margin="30"><p class="toc_title_block"><span class="toc_title icon-list">INDEX</span><span class="toc_toggle icon-up-open" role="button"></span></p><ul class="dp_toc_ul has_title"><li><a href="#3e4bd8de6b1bae5ae9ae688a6e381afe784a1e6848fe591b3e381aae381aee3818befbc9f-1">3位決定戦は無意味なのか？</a></li><li><a href="#e38399e383abe382aee383bce381afe382a2e383bce38386e382a3e382b9e38388e38081e382a4e383b3e382b0e383a9e383b3e38389e381af-2">ベルギーはアーティスト、イングランドは……</a></li><li><a href="#e38184e38196e38081e6b1bae58b9de381b8-3">いざ、決勝へ</a></li></ul></div><h2 id="3e4bd8de6b1bae5ae9ae688a6e381afe784a1e6848fe591b3e381aae381aee3818befbc9f-1">3位決定戦は無意味なのか？</h2>
<p>イングランド代表でキャプテンを務めていた往年の名ストライカー、アラン・シアラーは自身のTwitterにこう綴っている。</p>
<p>「3位と4位のプレーオフなんて完全に愚かだ。やりたい選手はいない」</p>
<p>また、4年前のブラジルW杯の話になるが、当時オランダ代表の監督だったルイス・ファン・ハールは、ブラジルとの3位決定戦を前にして以下のように語っていた。</p>
<p><strong><em>「3位決定戦などやるべきじゃない。もう10年もそう言い続けてきた。最悪なのは、2連敗で大会を終える可能性があるということだ。ここまで素晴らしいプレーを見せてきたチームが、最後の2試合に負けたというだけで、敗者として国に帰ることになるかもしれない。3位決定戦にはなんの意味もない。まあ、とにかくやらなくてはならないが」</em></strong></p>
<p>結果的にオランダは「ミネイロンの惨劇」を引きずる開催国のブラジルを3対0で粉砕したが、アリエン・ロッベンは複雑なコメントを残している。</p>
<p>「気持ち良く勝つことができたが、失望もある。決勝にあれほど近づいていたことを考えれば、良かったとは言えない。今日は普段とは全く異なる試合だった。これはオランダの試合ではない。ただ、このチームを誇りに思っている。すべてを出し切ったよ。3位という結果は、オランダ国民全員で勝ち取ったものだと思う」</p>
<p>一流のサッカー選手である以上、目指すのは常に頂点だけ。決勝進出を逃した失望感は大きく、3位という成績で埋め合わせられるようなものではない。彼らの気持ちも言い分も、至極真っ当なものだと思う。それでも、僕は3位決定戦の特殊な空気が好きだ。決勝戦の前日に相応しいほどよいチルアウト感や、出番の少なかった控え選手たちの躍動、あるいはギリギリの状況から解放された両チームの、結果に対する過剰すぎない（決して手を抜いているわけではない）モチベーション。美しいプレーだってたくさん生まれている。2006年はバスティアン・シュバインシュタイガーの2本のミドルシュート、2010年はディエゴ・フォルランの叩きつけて曲げるアメージングなボレーシュート、2014年はロッベンの冗談のような快速……。とにかく、試合を見て損をしたという記憶はまったくない。</p>
<p>少なくとも視聴者にとって3位決定戦はちょっとしたカーニバルであり、ハリー・ケインやロメル・ルカクのように得点王を争う選手からすればボーナスステージでもある。例えとして適切かどうかはわからないが、たぶん僕はツール・ド・フランスの最終ステージのような祝祭感をそこに求めている。一番大事な勝負は終わった。でもまだ最後のスプリントが残っている。</p>
<h2 id="e38399e383abe382aee383bce381afe382a2e383bce38386e382a3e382b9e38388e38081e382a4e383b3e382b0e383a9e383b3e38389e381af-2">ベルギーはアーティスト、イングランドは……</h2>
<p>今大会の3位決定戦も、とても見どころのある試合になった。とりわけ日本のファンにとっては、このベルギーをあそこまで追い詰めた代表チームが誇らしく、そしてなおさら悔しく思えるような内容だったのではないだろうか。</p>
<p>ベルギーのカウンターはイングランドにとって脅威以外のなにものでもなかった。彼らのトランジション・サッカーは試合を重ねるごとに洗練されて、昨晩は極限まで彫琢された芸術作品の域に達していた。とりわけ80分の流麗なロングカウンターには、感嘆のため息を漏らさずにはいられなかった。イングランドサポーターも、あんなのものを見せられたら笑いながら拍手するしかないだろう。ムニエのボレーシュートはジョーダン・ピックフォードのファインセーブに遭ってゴールにはならなかったが、もし大会に「ベストノーゴール賞」があれば受賞は間違いないはずだ。</p>
<p>誰がどうやってあのレベルの速攻をデザインしているのか。そしてたった数秒の間に、選手たちの脳内にはどんなビジョンが描かれ、共有されているのか。まったく想像もつかないが、ケヴィン・デ・ブライネとエデン・アザールのいるベルギーならば、そのへんのサッカー少年が監督でもベスト16までは進める。それくらいは僕にもわかる。</p>
<p>プレミアリーグのオールスター戦のようなこのゲームで、イングランドは図らずもチームとしての限界を露呈してしまった。ジョゼップ・グアルディオラやユルゲン・クロップのような監督の存在もあり、クラブレベルでは画一的なキック・アンド・ラッシュからの脱却に成功した現在のプレミアリーグだが、代表レベルにまでその恩恵を落とし込めているとは言い難い。身も蓋もない話をすれば、セットプレーとロングボールに依存した蓋然性の低いサッカーでは、頂点に立つのはやはり難しいのではないだろうか。</p>
<p>若いチームがベスト4まで到達したことで世論は楽観的なのかもしれない。しかし、もしFAが本気でW杯に勝つために代表の強化に取り組むのであれば、クリエイティブな才能をフックアップできない育成環境を問い直すことが必要なのではないだろうか。もしイングランドにデ・ブライネやクリスティアン・エリクセンのような選手がいれば、ほとんど輝きを放てなかったラヒーム・スターリングやデレ・アリの大会になってもおかしくなかったと僕は思っている。</p>
<h2 id="e38184e38196e38081e6b1bae58b9de381b8-3">いざ、決勝へ</h2>
<p>最終セットの第18ゲーム。ナダルが芝に足をとられて、ジョコビッチがブレーク。2日間にわたる5時間14分の死闘は幕を閉じた。ウインブルドンに3位決定戦はない。そもそもテニスで3位決定戦を行うのはメダルが懸かったオリンピックくらいだが、錦織圭がナダルに勝利して銅メダルを獲得した2年前のリオデジャネイロでの一戦を「無意味だった」と評する人は（少なくとも日本には）ほとんど存在しないだろう。そう考えるとサッカー界の「3位」に対する淡白な感覚に、少しばかり不思議な気持ちにならなくもない。</p>
<p>しかし昨晩のベルギーは過去最高の「3位」を獲得するためにベストなメンバーを組み、高いモチベーションで試合に臨んでいた。イングランドからすれば中2日という厳しい日程に加えて、過去に優勝経験があるということも多少は影響したかもしれない。まあ、普通に考えたらイングランドが絶好調でもたぶん勝てなかっただろうとは思うけれど……。</p>
<p>いずれにしても、僕はこの3位決定戦を存分に楽しんだ。それはベルギーの美しいカウンターを肴に酒が飲めるタイプの祝祭だった。こういう試合なら、テレビ朝日の実況と松木安太郎の解説にもまだかろうじて耐えられる。</p>
<p>いよいよ今晩は決勝だ。もうなにも言うことはない。グラスワンダーとスペシャルウィークが激突した1999年の宝塚記念で、実況の杉本清が「もう言葉はいらないのか」と言っていたが、今ならその気持ちがよくわかる。僕はなんとなく、グラスワンダーがクロアチアで、スペシャルウィークがフランスであるような気がしている。そうあってほしいと思っている。</p>
</div>]]></content:encoded>
					
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		<title>【ロシアW杯全部見る】『砕かれたハリルホジッチ・プラン』の正しい使い方</title>
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		<dc:creator><![CDATA[チョウ ウヒョン]]></dc:creator>
		<pubDate>Sat, 14 Jul 2018 11:25:42 +0000</pubDate>
				<category><![CDATA[2018W杯全部見る]]></category>
		<category><![CDATA[2018サッカーW杯]]></category>
		<category><![CDATA[書評]]></category>
		<category><![CDATA[サッカー]]></category>
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	<a href="https://itwas.media/before-renewal/book-review/broken-vahid-halilhodzic"><img title="180714-cho-01" src="https://itwas.media/wp-content/uploads/2018/07/180714-cho-01-300x151.jpg" alt="【ロシアW杯全部見る】『砕かれたハリルホジッチ・プラン』の正しい使い方" width="300" height="151" /></a>
	</div>
	嘘か本当かわかりませんが、1980年代には浅田彰の『構造と力』を片手にナンパする男がいた、という話を聞いたことがあります。本当だとしたらめちゃくちゃな時代ですね。でも、もしそんなクソダサい手法が現代においても通用するならば、僕は『砕かれたハリルホジッチ・プラン』と『モダンサッカーの教科書』を小脇に抱えて女性に声をかける不審者になりたい。そう思って毎日を生きています。 新しい時代の言葉たち 日本サッカーのニュー・アカデミズム。そう表現するのが適切かどうかわかりませんが、質的にも量的にも、明らかにこれまでとは異なったレベルでサッカーをめぐる言葉が飛び交う世の中になっています。特徴的なのは、松木安太郎の居酒屋解説やセルジオ越後の難癖を楽し&#8230;]]></description>
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	<a href="https://itwas.media/before-renewal/book-review/broken-vahid-halilhodzic"><img title="180714-cho-01" src="https://itwas.media/wp-content/uploads/2018/07/180714-cho-01-300x151.jpg" alt="【ロシアW杯全部見る】『砕かれたハリルホジッチ・プラン』の正しい使い方" width="300" height="151" /></a>
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	<div class="theContentWrap-ccc"><p>嘘か本当かわかりませんが、1980年代には浅田彰の『構造と力』を片手にナンパする男がいた、という話を聞いたことがあります。本当だとしたらめちゃくちゃな時代ですね。でも、もしそんなクソダサい手法が現代においても通用するならば、僕は『砕かれたハリルホジッチ・プラン』と『モダンサッカーの教科書』を小脇に抱えて女性に声をかける不審者になりたい。そう思って毎日を生きています。</p>
<p><span id="more-4634"></span></p>
<div class="dp_toc_container pos-before_first_h allow-toggle" role="navigation" data-margin="30"><p class="toc_title_block"><span class="toc_title icon-list">INDEX</span><span class="toc_toggle icon-up-open" role="button"></span></p><ul class="dp_toc_ul has_title"><li><a href="#e696b0e38197e38184e69982e4bba3e381aee8a880e89189e3819fe381a1-1">新しい時代の言葉たち</a></li><li><a href="#e3838fe383aae383abe3839be382b8e38383e38381e381aee6898be88595e38292e79fa5e3828b-2">ハリルホジッチの手腕を知る</a></li><li><a href="#e38193e381aee5a4b1e69597e8ab87e38292e5bdb9e7ab8be381a6e3828be3819fe38281e381ab-3">この失敗談を役立てるために</a></li></ul></div><h2 id="e696b0e38197e38184e69982e4bba3e381aee8a880e89189e3819fe381a1-1">新しい時代の言葉たち</h2>
<p>日本サッカーのニュー・アカデミズム。そう表現するのが適切かどうかわかりませんが、質的にも量的にも、明らかにこれまでとは異なったレベルでサッカーをめぐる言葉が飛び交う世の中になっています。特徴的なのは、松木安太郎の居酒屋解説やセルジオ越後の難癖を楽しんでいた層を困惑させる、まるで耳馴染みのないテクニカルターム。ザッケローニの「インテンシティ」くらいまでは、スポーツ新聞の購買層にもまだ理解できたかもしれません。しかしここ数年で、トランジション、ポジショナルプレー、5レーン理論、ハーフスペース、ペップ・コードにゲーゲンプレッシングと、欧州サッカーのトレンドからさまざまな用語が輸入され、専門家とディープなファンが織りなす議論、とりわけ戦術論はきわめて難解なものにシフトしつつあります。</p>
<p>「モー、よくわからん！　おじさんは帰るっ！」</p>
<p>東海林さだお先生のエッセイならこんなノリで雑にまとめにかかるところかもしれませんが、そんな冗談が通じないくらいサッカーを愛する人々の情熱は凄まじい。難解な用語をしっかりと咀嚼して自身のボキャブラリーに組み込み、さらに広めようと努力した結果、共通の認識をベースにまとまった議論が生まれうる状況にまで漕ぎつけました。</p>
<p>とはいえ、まだまだ言論環境の整備は途上であり、議論ができる人間の母数も少ない。よりライトなファンやメディアをも巻き込んで、この国のサッカーリテラシーをさらに向上させなければならない。それが日本サッカーのレベルアップにも繋がるはずだ。そう考える人たちにとって、前日本代表監督、ヴァイッド・ハリルホジッチの不可解な（場当たり的な、あまりにも情緒的な、そして悪い意味で日本的な）理由による解任は到底納得できるものではありませんでした。やや乱暴な要約ですが、そんな空気の中で上梓されたのが五百蔵容氏の『砕かれたハリルホジッチ・プラン』（星海社新書）だった、と僕は捉えています。</p>
<h2 id="e3838fe383aae383abe3839be382b8e38383e38381e381aee6898be88595e38292e79fa5e3828b-2">ハリルホジッチの手腕を知る</h2>
<p>そもそも『ハリルホジッチ・プラン　サッカー後進国日本　逆転の戦術論』として4月25日に発売する予定が、校了直前に解任のニュースが届き、書名も含めて大幅な改稿を迫られたという本書。結果的にはそんな経緯も含めて大きな話題を集めたわけですが、そういったセンセーショナルな側面に期待して読むと、『砕かれたハリルホジッチ・プラン』の中で展開されている地道な検証にやや面食らうかもしれません。</p>
<p>目を見張るのは、五百蔵氏の緻密で粘り強い考察力です。ハリルホジッチという監督が持つ優れた分析能力と実際的な対応能力を、ブラジルW杯の決勝トーナメント1回戦のドイツ対アルジェリア戦、そしてロシアW杯最終予選の日本対オーストラリア戦という「真剣勝負」の場から抽出し、図を用いながら解説。「エリアの選択と活用」という観点から、彼が「ここぞ」という試合でいかにして戦略的な優位性を担保したのか、非常に明瞭かつ具体的に言語化しています。</p>
<p>世界的な潮流を踏まえたうえでサッカーという競技の特性を検討することで、ハリルホジッチのキーワードである「デュエル」がどれほど普遍的で重要なものなのか、あらためて強調している点も特筆に値します。本書を読めば、ハリルホジッチの手腕はさておき、「日本人が苦手なデュエルを強要していた」「“縦に速く”しか戦術がなかった」という一部のメディアによる印象操作が、いかに一方的で的外れなものだったか理解できることでしょう。</p>
<p>ただ、図解による戦術分析は、普段サッカーを見ない層には少し難しいかもしれません。実は、そんな人にも読みでのある書籍としてオススメできる理由があります。なんと『砕かれたハリルホジッチ・プラン』は、「ハウツー本・ビジネス本」としても読むことができるのです！</p>
<h2 id="e38193e381aee5a4b1e69597e8ab87e38292e5bdb9e7ab8be381a6e3828be3819fe38281e381ab-3">この失敗談を役立てるために</h2>
<p>日本代表のこれまでの歩みをまとめた部分しかり、現在はJ2のレノファ山口を指揮している霜田正浩氏（元日本サッカー協会技術委員長）の証言しかり、『砕かれたハリルホジッチ・プラン』は日本サッカーの未来を思う著者のきわめてシンプルなひとつの意志に貫かれています。それはつまり、</p>
<p><strong>「過去をきちんと検証してほしい」</strong></p>
<p>という本当に悲しくなるくらい当たり前すぎる願いです。わざわざそんなことを願わなければいけないくらいJFAの差配は無軌道だし、マスコミはファナティックだし、なにもかも毎度毎度その場しのぎで、ビジョンもなにもあったものではない。本書はそんなJFAと日本のサッカー界に対して外部の常識人から提出された稟議書である、と言うことができるかもしれません。</p>
<p>しっかりとした計画を練ってなんらかの成果を出し、そこに至るプロセスを検証、蓄積された情報を参照可能なアーカイブとして保存して、検討材料として「次」につなげること。そんなありふれたPDCAサイクルの構築に失敗したレポートとしての『砕かれたハリルホジッチ・プラン』を新社会人に読ませることで、生産性が低いと言われている日本の労働環境になんらかのソリューションがもたらされることを僕は期待します。冗談です。</p>
<p>いずれにしても、『砕かれたハリルホジッチ・プラン』は丹念な論考と健全な意志によって組み立てられた悲しい報告書であり、キャッチーなタイトルとは裏腹に、いい意味で地味な「入門書」でもあります。現代サッカーをめぐる難解な用語もすっきりと定義・説明されており、それこそ『モダンサッカーの教科書』と並んで、向こう何年かの議論のメルクマールになるかもしれません。まあ、ビジネスやナンパに使えるかどうかはわかりませんが……。すべてはあなた次第です。</p>
</div>]]></content:encoded>
					
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		<title>【ロシアW杯全部見る】試合がないなら『東欧サッカークロニクル』を読めばいいじゃない</title>
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		<dc:creator><![CDATA[チョウ ウヒョン]]></dc:creator>
		<pubDate>Fri, 13 Jul 2018 09:49:06 +0000</pubDate>
				<category><![CDATA[2018W杯全部見る]]></category>
		<category><![CDATA[2018サッカーW杯]]></category>
		<category><![CDATA[書評]]></category>
		<category><![CDATA[サッカー]]></category>
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					<description><![CDATA[
	<div>
	<a href="https://itwas.media/before-renewal/book-review/eastern-europe-soccer-chronicle"><img title="180713-cho-01" src="https://itwas.media/wp-content/uploads/2018/07/180713-cho-01-1-300x193.jpg" alt="【ロシアW杯全部見る】試合がないなら『東欧サッカークロニクル』を読めばいいじゃない" width="300" height="193" /></a>
	</div>
	「これは奇跡であり、奇跡ではない」――マリオ・マンジュキッチ ついにクロアチアがW杯の決勝にまで駒を進めました。安い称賛の言葉を送るのもためらわれますが、本当にもうね、ただただ素晴らしいチーム、素晴らしい選手たちです。しかしながら、「人口500万にも満たない旧ユーゴの小国が成し遂げた快挙」という通り一遍の見方だけでは、冒頭に掲げたマンジュキッチの言葉はなかなか消化しきれない。その「奇跡（あるいは奇跡ではない）」は、日本代表がアップセットを起こすたびに生まれる「◯◯の奇跡」とはまるで種類の違う、多層的で重たい意味を持った「奇跡」だからです。 クロアチアを含む東欧の歴史にも生活にも文化にも、そしてサッカーにも明るくない僕ですが、彼らと彼&#8230;]]></description>
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	<a href="https://itwas.media/before-renewal/book-review/eastern-europe-soccer-chronicle"><img title="180713-cho-01" src="https://itwas.media/wp-content/uploads/2018/07/180713-cho-01-1-300x193.jpg" alt="【ロシアW杯全部見る】試合がないなら『東欧サッカークロニクル』を読めばいいじゃない" width="300" height="193" /></a>
	</div>
	<div class="theContentWrap-ccc"><p><strong>「これは奇跡であり、奇跡ではない」――マリオ・マンジュキッチ</strong></p>
<p>ついにクロアチアがW杯の決勝にまで駒を進めました。安い称賛の言葉を送るのもためらわれますが、本当にもうね、ただただ素晴らしいチーム、素晴らしい選手たちです。しかしながら、「人口500万にも満たない旧ユーゴの小国が成し遂げた快挙」という通り一遍の見方だけでは、冒頭に掲げたマンジュキッチの言葉はなかなか消化しきれない。その「奇跡（あるいは奇跡ではない）」は、日本代表がアップセットを起こすたびに生まれる「◯◯の奇跡」とはまるで種類の違う、多層的で重たい意味を持った「奇跡」だからです。</p>
<p>クロアチアを含む東欧の歴史にも生活にも文化にも、そしてサッカーにも明るくない僕ですが、彼らと彼らを取り巻く環境についての理解を助けてくれる良書がありました。今年の5月に上梓された、長束恭行氏の『東欧サッカークロニクル』（カンゼン）。クロアチアの快進撃の影響もあり、比較的ニッチなジャンルであるにも関わらず重版が決まったそうです。めでたい！</p>
<p>『東欧サッカークロニクル』には、実にさまざまな人種と国籍の人間が登場します。英雄もいれば庶民もいるし、長束氏と関わりの深いイビチャ・オシムのような賢人はもちろん、JFAの田嶋会長が善人に思えるほど悪辣な権力者も出てきます。文章の中で、彼らは怒り、蔑み、自惚れ、飛び蹴りを見舞い、石を投げ、愚痴をこぼし、タオルマフラーを掲げ、チャントを歌い、安酒をあおり、友情を育んで、涙を流し、笑いながら生きていました。つまるところ、それは文学です。</p>
<p><span id="more-4629"></span></p>
<div class="dp_toc_container pos-before_first_h allow-toggle" role="navigation" data-margin="30"><p class="toc_title_block"><span class="toc_title icon-list">INDEX</span><span class="toc_toggle icon-up-open" role="button"></span></p><ul class="dp_toc_ul has_title"><li><a href="#e3808ce4b880e7b792e381abe5a4a9e59bbde38081e4b880e7b792e381abe59cb0e78d84e38081bbbe381a8e38387e382a3e3838ae383a2efbc81e3808d-1">「一緒に天国、一緒に地獄、BBBとディナモ！」</a></li><li><a href="#we69dafe381aee382a2e383ace382b3e383ace381abe381a4e38184e381a6e38081e38288e3828ae6b7b1e3818fe79fa5e3828be3819fe38281e381ab-2">W杯のアレコレについて、より深く知るために</a></li></ul></div><h2 id="e3808ce4b880e7b792e381abe5a4a9e59bbde38081e4b880e7b792e381abe59cb0e78d84e38081bbbe381a8e38387e382a3e3838ae383a2efbc81e3808d-1">「一緒に天国、一緒に地獄、BBBとディナモ！」</h2>
<p>ルカ・モドリッチやマンジュキッチはもちろん、三浦知良も在籍したことで知られているクロアチアの名門ディナモ・ザグレブですが、その実際について知悉している日本語の書き手は長束氏くらいでしょう。当時の会長だったズラヴトコ・マミッチはクラブを私物化し、さらにクロアチアサッカー連盟の会長にW杯得点王のダヴォル・シュケルを傀儡として擁立。彼らの胸ひとつで数々の醜悪なできごとがまかり通る腐敗ぶりは、長束氏が書かなければ日本で知られることは決してなかった。それだけでも充分に資料的な価値があると思います。</p>
<p>ユーゴ崩壊前夜、1990年のディナモ・ザグレブ対レッドスター・ベオグラード戦における暴動で、警官に蹴りを入れたことでディナモサポーターの英雄になったズヴォニミール・ボバン。長束氏はボバン本人へのインタビューに加えて、数々の資料をかき集めて当日のできごとを可能な限り客観的に検証しようと試みます。一枚、また一枚と英雄のベールを剥がしていった先に、腰が抜けるような（それでいて、笑いごとではないような）新事実が待っている構成も秀逸。</p>
<p>上記のふたつの文章で「被害者兼加害者」として登場した、ディナモ・ザグレブの超過激なサポーター集団であるBBB（バッド・ブルー・ボーイズ）。そんな彼らと連れ立って、モルドバ国内にある謎の未承認国家・沿ドニエストル共和国へと遠征に向かう珍道中を書いた「謎の地域、沿ドニエストルへ。2010CL予選」は紀行文として、そしてコミカルな青春小説として素晴らしい。なんだか東欧版の『ダーク・スター・サファリ』のようで、間違いなく本書の中でも白眉の出来です。詳細は伏せますが、「ディナモのサポーターはフーリガンだよ。くれぐれも気をつけてね」というセリフには思わず笑ってしまいました。お前が言うのかよ！</p>
<h2 id="we69dafe381aee382a2e383ace382b3e383ace381abe381a4e38184e381a6e38081e38288e3828ae6b7b1e3818fe79fa5e3828be3819fe38281e381ab-2">W杯のアレコレについて、より深く知るために</h2>
<p>準々決勝のロシア戦の直後、DFのドマゴイ・ヴィーダとコーチのオグニェン・ヴコイェヴィッチが「ウクライナに栄光を！」という動画をアップしたことで、FIFAから罰金処分を受けたクロアチア。無関係なはずの彼らがそんな剣呑な発言をするに至った経緯も、ロシアのクリミア侵攻後にウクライナのキエフで行われたシャフタール・ドネツク（クロアチアのシンボルだったダリヨ・スルナが所属）とディナモ・キエフ（ヴコイェヴィッチとヴィーダが所属）のナショナル・ダービーについての記述を読めば、いくらか腑に落ちるところがあると思います。</p>
<p>同様に、コソボのサッカーの現状について記された章を読むことで、スイス対セルビアの試合で問題になったグラニト・ジャカとジェルダン・シャキリのパフォーマンスについても、もう少し理解を深めることができるでしょう。ひとつひとつの文章は決して長くありませんが、なにかを知ろうとする契機として作用するリアルな強度があります。速報性の高いインスタントな情報に物足りなさを感じていた人は、欠けていたピースが埋まるような感覚を味わえるはずです。</p>
<p>僕はW杯の副読本として『東欧サッカークロニクル』を読みながら、ガブリエル・ガルシア＝マルケスの『幸福な無名時代』を思い出していました。もちろん、1950年代後半のベネズエラと、2000年代から2010年代にかけての東欧諸国がまるで別物なのは言うまでもありません。僕が似通っていると感じたのは、どうしようもない複雑さを背負って生きる人々の「人間らしさ」を記録しようとするジャーナリストとしての誠実な姿勢、そして過剰な叙情と思い入れを排した（だからこそすぐれて叙情的な）筆致です。</p>
<p>サッカー好きでなくても楽しめる本ですが、今回のW杯をある程度見ていれば確実に読み応えが増すと思います。逆に、本書を読んでいなくてもW杯の決勝戦はもちろん楽しめますが、読んでいれば2～3倍は楽しめるはず。ただ本書を読了してしまった場合、ほぼ間違いなくクロアチアに肩入れしてしまうという難点はありますが……。ここまできたら僕もクロアチアを応援しますよ、そりゃ。</p>
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<div class="booklink-name"><a href="http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/asin/4862554687/itwas0d-22/" target="_blank" rel="noopener">東欧サッカークロニクル</a></p>
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		<title>【ロシアW杯全部見る】少年よ、フットボールに帰れ</title>
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		<dc:creator><![CDATA[チョウ ウヒョン]]></dc:creator>
		<pubDate>Thu, 12 Jul 2018 09:55:51 +0000</pubDate>
				<category><![CDATA[2018W杯全部見る]]></category>
		<category><![CDATA[2018サッカーW杯]]></category>
		<category><![CDATA[サッカー]]></category>
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					<description><![CDATA[
	<div>
	<a href="https://itwas.media/feature/2018soccer-wcup/go-back"><img title="180712-cho-01" src="https://itwas.media/wp-content/uploads/2018/07/180712-cho-01-300x188.jpg" alt="【ロシアW杯全部見る】少年よ、フットボールに帰れ" width="300" height="188" /></a>
	</div>
	まず、ピッチの外の話をしましょう。 フットボールの故郷であるイングランドで、1996年にリリースされた代表応援アンセム「Three Lions」がリバイバルヒットを記録しています。同楽曲の「Football's coming home（フットボールが帰ってくる）」というフレーズは、快進撃を続ける若きイングランド代表をサポートする人々の合言葉になりました。そんな熱狂的な雰囲気の中、元オアシスのノエル・ギャラガーはライブのMCで冷ややかにこう言い放ちます。 「本当のことを言うとさ、フットボールが帰ってくるわけねえと思ってる。お前らだって、それは知ってんだろ？」 この発言に対して、弟のリアム・ギャラガーは「帰ってくるんだよ、腰抜け野郎」と&#8230;]]></description>
										<content:encoded><![CDATA[
	<div>
	<a href="https://itwas.media/feature/2018soccer-wcup/go-back"><img title="180712-cho-01" src="https://itwas.media/wp-content/uploads/2018/07/180712-cho-01-300x188.jpg" alt="【ロシアW杯全部見る】少年よ、フットボールに帰れ" width="300" height="188" /></a>
	</div>
	<div class="theContentWrap-ccc"><p>まず、ピッチの外の話をしましょう。</p>
<p>フットボールの故郷であるイングランドで、1996年にリリースされた代表応援アンセム「Three Lions」がリバイバルヒットを記録しています。同楽曲の「Football&#8217;s coming home（フットボールが帰ってくる）」というフレーズは、快進撃を続ける若きイングランド代表をサポートする人々の合言葉になりました。そんな熱狂的な雰囲気の中、元オアシスのノエル・ギャラガーはライブのMCで冷ややかにこう言い放ちます。</p>
<p>「本当のことを言うとさ、フットボールが帰ってくるわけねえと思ってる。お前らだって、それは知ってんだろ？」</p>
<p>この発言に対して、弟のリアム・ギャラガーは「帰ってくるんだよ、腰抜け野郎」と応戦。何度となく繰り返されてきた、おなじみの兄弟喧嘩が勃発しました。</p>
<p>ストーンズも負けてはいません。「応援したチームが必ず負ける」という呪いを持つことで有名なミック・ジャガーが、準決勝に挑む母国に声援を送るためにモスクワに駆けつけました。猛烈な勢いで拡散する「C’mon England」という彼のツイート、歓喜の雄叫びを上げるクロアチア人サポーター、そして本当に負けてしまうイングランド……。</p>
<p>なにもかもが日常の風景です。どうしようもない既視感で頭がクラクラした僕は、眠気覚ましのコーヒーを飲みながらこんな仮説を立ててみました。</p>
<p>「本当のことを言うと、フットボールはもうとっくに故郷に帰っているんじゃないか？ そもそも、最初からどこにも行ったりしていないんじゃないか？」</p>
<p><span id="more-4606"></span></p>
<div class="dp_toc_container pos-before_first_h allow-toggle" role="navigation" data-margin="30"><p class="toc_title_block"><span class="toc_title icon-list">INDEX</span><span class="toc_toggle icon-up-open" role="button"></span></p><ul class="dp_toc_ul has_title"><li><a href="#e4b880e5bf9ce38081e8a9a6e59088e381aee8a9b1e38282e38197e381bee38197e38287e38186-1">一応、試合の話もしましょう</a></li><li><a href="#e3819fe381bee381abe381afe5ae9fe5aeb6e381abe5b8b0e3828ae381bee38197e38287e38186-2">たまには実家に帰りましょう</a></li></ul></div><h2 id="e4b880e5bf9ce38081e8a9a6e59088e381aee8a9b1e38282e38197e381bee38197e38287e38186-1">一応、試合の話もしましょう</h2>
<p>もし「Football&#8217;s coming home」がイングランドの優勝を意味するのであれば、キーラン・トリッピアーの直接フリーキックがゴールネットを揺らしたとき、フットボールはかなり近くまで帰ってきていました。仮に現住所が大宮で実家が横浜だとしたら、蒲田くらいまではきていたんじゃないでしょうか。</p>
<p>今大会のイングランドにとって最大の得点源になっているのが、バスケットボールなどを参考にしたという緻密なセットプレーです。14分のコーナーキックでは、ゴールに対して縦一列に選手を配置。トリッピアーの助走と同時に、クロアチアのディフェンダーを引き連れて複数名がニアへと侵入し、手薄なファーに残ったハリー・マグワイアがヘディングシュートを放ちました。ゴールにはなりませんでしたが、研究量の多さを感じさせる洗練された動きです。もちろん狙い通りのボールを供給できるトリッピアーのキック精度も素晴らしい。クロアチアがゾーンではなくマンマークで守っていたら、さらに危険なプレーになっていたかもしれません。</p>
<p>その後もイングランドのペースで試合が進みます。30分にはデレ・アリからハリー・ケインへのホットラインで決定機を作り、35分にもカウンターでケイン、アリとつないでジェシー・リンガードがフリーでシュートを放っています。前半のうちに追加点を奪えていれば、フットボールは多摩川を越えて川崎くらいまでは帰ってきていたのに……。どちらも非常にもったいない場面でした。</p>
<p>後半に入ってもクロアチアの反撃は散文的で、ケインとラヒム・スターリングを除く8人で2ラインを敷いて守るイングランドのブロックを崩せません。逆に、イングランドが得意のロングボールから幾度かチャンスを作ります。中でも56分、わずか7秒で完結した攻撃は見事でした。ジョーダン・ピックフォードのロングキックをケインに当て、競り勝ったボールを拾ったスターリングがリンガードに送り、リンガードはためらいなくダイレクトでシュート。ポゼッションもトランジションもいらない。ロングボールとセットプレーだけあればいい。そんな剛直すぎる英国スタイルは、ややクロアチア贔屓の僕にさえ「やはりフットボールは横浜の実家に帰るしかないのかもしれない」と思わせました。</p>
<p>ただ、どんなときも近くて遠いのが実家というものです。試合の終わらせ方を意識するようになったイングランドに対して、心身の消耗度が閾値を超えたクロアチアが強烈なモチベーションだけで反撃に転じます。</p>
<p>68分。スローイングでのリスタートから、ルカ・モドリッチがディフェンスラインにボールを戻します。デヤン・ロブレン、ドマゴイ・ヴィーダ、ラキティッチ、左サイドのイヴァン・ストリニッチと、低い位置でのボール回しから再度ラキティッチへボールが渡り、ここで右サイドに展開。アタッキングサード手前でボールを受けたシメ・ヴルサリコは、ペナルティボックスを一瞥してアーリークロスを上げます。このクロスに対して、カイル・ウォーカーの背後まで迫っていたイヴァン・ペリシッチがアクロバティックに足を振り上げてファウルすれすれの同点ゴール！　近年ではむしろ希少性の高い、きわめてオーソドックスなビルドアップからの得点でした。</p>
<p>息を吹き返したクロアチアは、ここ2試合で240分を戦ったとは思えない驚異的なテンションで逆転を目指します。なにが彼らをそこまで駆り立てていたのかはわかりませんが、「フットボールの帰省だけは絶対に阻止しなければならない」とか、「ミック・ジャガーのジンクスを終わらせるわけにはいかない」とか、そんなどうでもいいことは1ミリも考えなかったでしょう。</p>
<p>イングランドにとって惜しかったのはアディショナルタイムのセットプレー。トリッピアーのキックにフリーのケインが合わせたものの、叩きすぎたヘディングは力なくバウンドして枠外へ。試合は延長戦にもつれ込みます。あれだけ消耗していると言われていた（そして実際に消耗していた）クロアチアは、スターティングメンバーのまま90分を戦い抜きました。我々にとってフットボールは120分の競技である、とでも言わんばかりに。</p>
<p>延長戦を前に円陣を組む両チーム。ベスト姿が話題の英国紳士、ガレス・サウスゲート監督が身振り手振りで選手たちを鼓舞すれば、クロアチアはスタッフも含めて全員が密集して気合を入れ直します。どちらも応援したくなる熱い場面ですが、試合の流れがクロアチアに傾いているのは明らかでした。</p>
<p>イングランドの集中力が限界を迎えたのは、延長後半の109分。ペリシッチがヘディングで競り勝ったボールに、どのディフェンダーよりも素早く反応したのはマリオ・マンジュキッチ！　力強く左足を振り抜いてゴールを決め、カメラマン（『AFP通信』のユーリ・コルテス氏）まで巻き込んだ半狂乱のセレブレーションを見せつけます。こうなると、もうイングランドに反撃する気力は残っていません。負傷で退場したトリッピアーがベンチで涙を浮かべる中、試合は2対1で終了。フットボールは横浜の実家を素通りして小田原から熱海へ、あるいはさらに西へと去っていきました。</p>
<h2 id="e3819fe381bee381abe381afe5ae9fe5aeb6e381abe5b8b0e3828ae381bee38197e38287e38186-2">たまには実家に帰りましょう</h2>
<p>もし「Football&#8217;s coming home」がイングランドの優勝を意味するのであれば、残念ながらフットボールは帰ってきませんでした。でも、フットボールってW杯やEUROで優勝すれば帰ってくるものなのでしょうか？ 優れた競技成績によって覇権を握った国が、そのままフットボールの所有権を持つということでしょうか？　そういう認識自体が、フットボールに対して傲慢だと思いませんか？</p>
<p>W杯で優勝しなくたって、イングランドの人々は日々の生活の中で充分にフットボールを楽しんでいるじゃないですか。若く優秀なイングランド代表は勇敢に戦って見事な成績を収めたじゃないですか。ギャラガー兄弟は相変わらずバカだし、ミック・ジャガーはわざとやっているとしか思えないし、アーセナルは弱いし、デイビッド・モイーズは天才です。フットボールはどこにも行っていない。単純に、ナショナルチームの好成績という拡大鏡がなければフットボールを見失う人間がいるだけです。むしろ、フットボールに帰らなければいけないのは人間の方なのです。</p>
<p>先に「近くて遠いのが実家」と書きましたが、逆もまた然りです。そんなわけで、今年の夏は帰省しましょう。</p>
</div>]]></content:encoded>
					
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		<item>
		<title>【ロシアW杯全部見る】ラスト・ストップ・ディス・タウン</title>
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		<dc:creator><![CDATA[チョウ ウヒョン]]></dc:creator>
		<pubDate>Wed, 11 Jul 2018 09:55:33 +0000</pubDate>
				<category><![CDATA[2018W杯全部見る]]></category>
		<category><![CDATA[2018サッカーW杯]]></category>
		<category><![CDATA[サッカー]]></category>
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					<description><![CDATA[
	<div>
	<a href="https://itwas.media/feature/2018soccer-wcup/last-step-this-town"><img title="180711-cho-01.JPG" src="https://itwas.media/wp-content/uploads/2018/07/180711-cho-01-300x251.jpg" alt="【ロシアW杯全部見る】ラスト・ストップ・ディス・タウン" width="300" height="251" /></a>
	</div>
	サッカー界には「バスを停める」という言い回しがあります。極度にディフェンシブな戦術を用いたチームに対して、ジョゼ・モウリーニョ監督が侮蔑的なニュアンスを込めて「ゴール前にバスを停めた」と喩えたことで広く知れ渡り、今ではファンやメディアの間でもごく当たり前に使われる慣用句になりました。 昨晩の準決勝でも、先制したフランスが残りの40分間をバスを停めることでやりすごしていましたね。敗れたベルギーにとっては、サンクトペテルブルク・スタジアムのゴール前が最後の停留所になってしまいましたが……。 モスクワ行きのバスは最後まで動かなかった 試合後、大会を通じて素晴らしいセーブを見せてきたベルギーの守護神、ティボー・クルトワは「フランスはアンチ・&#8230;]]></description>
										<content:encoded><![CDATA[
	<div>
	<a href="https://itwas.media/feature/2018soccer-wcup/last-step-this-town"><img title="180711-cho-01.JPG" src="https://itwas.media/wp-content/uploads/2018/07/180711-cho-01-300x251.jpg" alt="【ロシアW杯全部見る】ラスト・ストップ・ディス・タウン" width="300" height="251" /></a>
	</div>
	<div class="theContentWrap-ccc"><p>サッカー界には「バスを停める」という言い回しがあります。極度にディフェンシブな戦術を用いたチームに対して、ジョゼ・モウリーニョ監督が侮蔑的なニュアンスを込めて「ゴール前にバスを停めた」と喩えたことで広く知れ渡り、今ではファンやメディアの間でもごく当たり前に使われる慣用句になりました。</p>
<p>昨晩の準決勝でも、先制したフランスが残りの40分間をバスを停めることでやりすごしていましたね。敗れたベルギーにとっては、サンクトペテルブルク・スタジアムのゴール前が最後の停留所になってしまいましたが……。</p>
<p><span id="more-4569"></span></p>
<div class="dp_toc_container pos-before_first_h allow-toggle" role="navigation" data-margin="30"><p class="toc_title_block"><span class="toc_title icon-list">INDEX</span><span class="toc_toggle icon-up-open" role="button"></span></p><ul class="dp_toc_ul has_title"><li><a href="#e383a2e382b9e382afe383afe8a18ce3818de381aee38390e382b9e381afe69c80e5be8ce381bee381a7e58b95e3818be381aae3818be381a3e3819f-1">モスクワ行きのバスは最後まで動かなかった</a></li><li><a href="#e38199e381b9e381a6e381aee38390e382b9e381aee9818be8bba2e6898be381afe5b08ae695ace381abe580a4e38199e3828b-2">すべてのバスの運転手は尊敬に値する</a></li></ul></div><h2 id="e383a2e382b9e382afe383afe8a18ce3818de381aee38390e382b9e381afe69c80e5be8ce381bee381a7e58b95e3818be381aae3818be381a3e3819f-1">モスクワ行きのバスは最後まで動かなかった</h2>
<p>試合後、大会を通じて素晴らしいセーブを見せてきたベルギーの守護神、ティボー・クルトワは「フランスはアンチ・フットボールで臨んできた。うまく守っていたが、ただそれだけだ」と恨み節を残しています。戦前は「自分はベルギー人だけど、少年時代はジダンのフランス代表に憧れていた」と語っていたエデン・アザールも、「あんなフランスの一員として勝つくらいなら、ベルギーの一員として負けたほうがマシだ」と辛辣なコメント。負け惜しみと言えばそれまでですが、彼らの悔しさと気持ちの強さが伝わってきます。</p>
<p>ボール支配率は6対4でベルギー。一方でシュート数はフランスの19本（枠内5本）に対してベルギーは9本（枠内3本）と、一見すると「フランスの方が押していたのでは？」と思わなくもないスタッツです。実際のチャンスはそれほど多くはなく、ベルギーのカウンターを警戒するフランスに「多少確率が低くてもシュートで終わらせよう」という意識が働いた結果、こういった数字になったのだと推測します。いずれにしても、フランスは確かに守備的ではありましたが、公平に見れば「アンチ・フットボール」と批判されるほど守ってばかりいたわけではありません。</p>
<p>クルトワやアザールが腹を立てているのは、サミュエル・ウムティティのヘディングで先制された後、フランスのゴール前に停車した「バス」を動かすことができなかったことに対してでしょう。リードしたフランスのディディエ・デシャン監督は、ためらうことなく6人をゴール前に並べる戦法を採用しました。それを受けて、ベルギーのロベルト・マルティネス監督は中盤のムサ・デンベレに代えて（どうでもいいことですが、この采配でウスマン・デンベレとの“デンベレ対決”は消滅しました）アタッカーのドリース・メルテンスを投入。これだけ引かれると、トランジションによるチャンスメイクは期待できない。ケヴィン・デ・ブライネのポジションを一列下げて、より厚みのある攻撃をしようという方向に舵を切ります。</p>
<p>しかし完全に守りに入ったフランスの守備はとにかく堅い。ベルギーはバス停の外側でボールを回して揺さぶりをかけ続けたものの、バスをひっくり返すまでには至りません。ロメル・ルカクとマルアン・フェライニはターゲットとして相変わらず有効ではありましたが、当然ながらフランスは日本ほど低くはなく、そして戦術的にナイーブでもない。後半40分にはウルグアイ戦の終盤と同様に、197cmのスティーブン・エンゾンジを“クローザー”として投入。キリアン・ムバッペが露骨に時間を稼ぐなどの徹底ぶりも功を奏して、フランスが2006年の「ジダンの頭突き」以来となる決勝進出を果たしました。</p>
<h2 id="e38199e381b9e381a6e381aee38390e382b9e381aee9818be8bba2e6898be381afe5b08ae695ace381abe580a4e38199e3828b-2">すべてのバスの運転手は尊敬に値する</h2>
<p>W杯の準決勝以上のビッグマッチなんて、W杯とチャンピオンズリーグの決勝くらいしかない。ルールの範囲内であればどんな手を使ってでも勝とうと努力するのが当たり前で、勝利以外になんらかの理想を追い求めるには試合としての格が高すぎた。誰もがそんな状況を理解しているからこそ、当事者のクルトワやアザール以外にフランスの戦い方を批判する声はほとんど聞かれません。</p>
<p>とはいえ「サッカーは常にスペクタクルでなければならない」と強く信じている向きにとっては、あまり愉快なゲームではなかったことも間違いないでしょう。ヨハン・クライフの「醜く勝つより美しく負けろ」という名言と密接に結びついた思想ですね。ただ、僕個人の見解とは異なります。詳細を語ると長くなるのですが、「福岡市中央区唐人町をレペゼンするヒップホップクルー、TOJIN BATTLE ROYALのリリックとしてサンプリングされてしまった時点で、クライフの言葉は歴史的な役割を終えている」という認識が根底にあるので……。</p>
<p>閑話休題。そもそも、バスを停めたところで守り切れるとは限らないのがサッカーです。この慣用句を広めた当のモウリーニョが、自身の率いるチェルシー（第二次）の守備的な戦術について「あなたもしばしばバスを停めていますよね？」と批判されたときに、こんな言葉を返しています。</p>
<p>「私はバスの運転手を尊敬しているよ。サッカーでは、いつも同じ試合をできるわけではない。支配することも支配されることもある。相手が優位に立って、別のやり方でプレーしなければならないこともある。運転手がバスを停めるには経験と訓練が必要だ。サッカーにおいては時間と練習が必要になる。選手たちはみんなピッチに出て楽しみたいものだが、いつもそうなるとは限らない」</p>
<p>ちなみに、モウリーニョがこう語った2015年のチェルシーでゴールマウスを守っていたのは他でもないクルトワであり、プレミアリーグ優勝の立役者になったのはアザールでした。そして現在、モウリーニョが指揮を執るマンチェスター・ユナイテッドにはルカクとフェライニがいます。結局のところ、バスを停めることもあれば、動かそうとすることもあるのが人生です。そしてどこがバスの終点になるのか、思い通りに選べる人間なんてほとんどいない。そういう話なんだと思います。</p>
</div>]]></content:encoded>
					
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		<title>【ロシアW杯全部見る】『フットボリスタ』は『カイエ・デュ・シネマ』になれるか</title>
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		<dc:creator><![CDATA[チョウ ウヒョン]]></dc:creator>
		<pubDate>Tue, 10 Jul 2018 09:55:14 +0000</pubDate>
				<category><![CDATA[2018W杯全部見る]]></category>
		<category><![CDATA[2018サッカーW杯]]></category>
		<category><![CDATA[サッカー]]></category>
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					<description><![CDATA[
	<div>
	<a href="https://itwas.media/feature/2018soccer-wcup/les-cahiers-du-cinema"><img title="180710-cho-01" src="https://itwas.media/wp-content/uploads/2018/07/180710-cho-01-300x183.jpg" alt="【ロシアW杯全部見る】『フットボリスタ』は『カイエ・デュ・シネマ』になれるか" width="300" height="183" /></a>
	</div>
	今晩はフランスとベルギーによる素晴らしい準決勝がありますね。もちろん僕もとても楽しみにしていますが、あえてプレビューはしないでおこうと思います。この段階まで来ると、試合前にあれこれと予想を並べ立てるのもいささか無粋な気がしないでもないからです。我々は慎み深くテレヴィを凝視して、ただただフットボールの官能に圧倒されればよい。気持ちが高ぶりすぎてつい蓮實重彦のような口ぶりになってしまいましたが、残りの4試合はそんなスタンスで楽しんでいこうと考えています。 ここでは「日本のサッカーをめぐる言論が、かなりの勢いで進歩している」という話をしたいと思います。その進歩がもたらす、今までは考えられなかったような可能性についても。 映画はサッカーでは&#8230;]]></description>
										<content:encoded><![CDATA[
	<div>
	<a href="https://itwas.media/feature/2018soccer-wcup/les-cahiers-du-cinema"><img title="180710-cho-01" src="https://itwas.media/wp-content/uploads/2018/07/180710-cho-01-300x183.jpg" alt="【ロシアW杯全部見る】『フットボリスタ』は『カイエ・デュ・シネマ』になれるか" width="300" height="183" /></a>
	</div>
	<div class="theContentWrap-ccc"><p>今晩はフランスとベルギーによる素晴らしい準決勝がありますね。もちろん僕もとても楽しみにしていますが、あえてプレビューはしないでおこうと思います。この段階まで来ると、試合前にあれこれと予想を並べ立てるのもいささか無粋な気がしないでもないからです。<strong>我々は慎み深くテレヴィを凝視して、ただただフットボールの官能に圧倒されればよい。</strong>気持ちが高ぶりすぎてつい蓮實重彦のような口ぶりになってしまいましたが、残りの4試合はそんなスタンスで楽しんでいこうと考えています。</p>
<p>ここでは「日本のサッカーをめぐる言論が、かなりの勢いで進歩している」という話をしたいと思います。その進歩がもたらす、今までは考えられなかったような可能性についても。</p>
<p><span id="more-4560"></span></p>
<div class="dp_toc_container pos-before_first_h allow-toggle" role="navigation" data-margin="30"><p class="toc_title_block"><span class="toc_title icon-list">INDEX</span><span class="toc_toggle icon-up-open" role="button"></span></p><ul class="dp_toc_ul has_title"><li><a href="#e383a2e382b9e382afe383afe8a18ce3818de381aee38390e382b9e381afe69c80e5be8ce381bee381a7e58b95e3818be381aae3818be381a3e3819f-1">モスクワ行きのバスは最後まで動かなかった</a></li><li><a href="#e38199e381b9e381a6e381aee38390e382b9e381aee9818be8bba2e6898be381afe5b08ae695ace381abe580a4e38199e3828b-2">すべてのバスの運転手は尊敬に値する</a></li></ul></div><h2>映画はサッカーではないが、サッカーはある程度までは映画である</h2>
<p>株式会社ソル・メディアが発行する海外サッカー専門誌『月刊フットボリスタ』と、同社が運営するウェブ版<a href="https://www.footballista.jp" target="_blank" rel="noopener">『フットボリスタ』</a>。そこに寄稿する優れた書き手たちによって僕は勝手に心を折られ、そして勝手に勇気をもらいました。</p>
<p>僕にはサッカーについての専門的な知識も、選手としての経験もありません。実際にサッカーをやっていたのは小学生まで。5年生のときにGKから転向して3バックの一角、もしくは右のウイングバックを担当していたのですが、前線に上がると永遠に戻ってこないタイプのクソガキで、言うまでもなく万年補欠でした。世界のどこにでもいる、ちょっとサッカーが好きなだけの運動音痴です。そもそも持ち場を放棄するような責任感のないディフェンダーに、毎日更新しなければならないW杯についての記事を書く資格なんてない。あるわけがない！</p>
<p>そんな僕に指針を与えてくれたのが他でもない、『フットボリスタ』の優秀な書き手たちでした。彼・彼女たちは最先端の戦術や育成のトレンドを紹介し、世界各国の「現場の空気」を見事に切り取って、読み応えのある記事を量産していました。テクニカルタームが頻出する、最新のサッカーについての専門的な記事……。なんてカッコいいんだろう。でも僕には絶対に書けない。そこで僕は閃いたのです。</p>
<p><strong>「そうか、サッカーの話をしなければいいんだ」</strong></p>
<p>その結果として生まれたのが今回の連載で、サッカーの話をあまりしないことでなんとかここまで続けることができました。「アンチ・フットボリスタ」としてのアティテュードが僕をぎりぎり社会人たらしめていたと言っても過言ではありません。ありがとう、『フットボリスタ』。</p>
<p>前置きが長くなってしまいましが、『フットボリスタ』は本当に素晴らしい媒体です。雑誌としてもすごく面白いのですが、特にここ最近のウェブ版『フットボリスタ』の存在感は図抜けていると思います。単純に記事が面白いし、面白い記事を書ける人を見つけてくるのがうまい。『フットボリスタ』がフックアップした人材や題材が、他の媒体のクオリティまで底上げしているような印象すらあります。結果的に、サッカーをめぐる言論自体がすごく活性化している。ナイーブな議論ばかりが目についた数年前の状況と比べると雲泥の差です。</p>
<p>自由闊達な言論環境と、世界中のサッカーについての知識の集積。そんな状況で僕がさらに期待するのは、『フットボリスタ』が中心となって小さなヌーヴェルヴァーグが起きることです。</p>
<p>いずれは指導者になるであろう23歳の俊英・林舞輝さんはもちろん、最先端の理論と現場を知る人たちが集うことで、『フットボリスタ』が日本サッカーにとっての『カイエ・デュ・シネマ』になればいい。もちろんサッカーと映画は異なります。批評家が同時に作家（監督、指導者）でもあり得るような状況は、現実的にはなかなか難しいかもしれない。しかしなにごとにおいても、批評と実践は本質的に不可分なものではないでしょうか。『フットボリスタ』初代編集長の木村浩嗣さんがスペインでライセンスを取得して少年チームを指導しているように、言論と現場の壁を超えるような動きが今後の大きな潮流になっても決して不思議ではないはずです。</p>
<p>日本サッカーにジャン＝リュック・ゴダールやフランソワ・トリュフォーが生まれることを夢想してはいけない理由はない。林舞輝さんがレオス・カラックスやオリヴィエ・アサイヤスになれない理由もない。つまるところ、僕が言いたいのはそういうことです。</p>
</div>]]></content:encoded>
					
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		<title>【ロシアW杯全部見る】あるサッカー嫌いとの対話</title>
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		<dc:creator><![CDATA[チョウ ウヒョン]]></dc:creator>
		<pubDate>Mon, 09 Jul 2018 09:55:54 +0000</pubDate>
				<category><![CDATA[2018W杯全部見る]]></category>
		<category><![CDATA[2018サッカーW杯]]></category>
		<category><![CDATA[サッカー]]></category>
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					<description><![CDATA[
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	<a href="https://itwas.media/feature/2018soccer-wcup/hate"><img title="180709-cho-01" src="https://itwas.media/wp-content/uploads/2018/07/180709-cho-01-300x151.jpg" alt="【ロシアW杯全部見る】あるサッカー嫌いとの対話" width="300" height="151" /></a>
	</div>
	W杯を全試合見る人もいれば、まったく見ない人もいる。当たり前のことですよね。自国の試合だけは見る人、忙しくてそれどころじゃない人、端からサッカーに興味がない人……。人生はいろいろで、正しいも正しくないもありません。この1ヶ月間のバカ騒ぎに、心の底からうんざりしている人もいるかもしれない。本当にごめんなさい。あと1週間の辛抱です。 まがりなりにも「多様性を大事にする」というテーマを掲げている僕たちの社会にとって、「サッカーが嫌いな人」というのも、それはそれで貴重な存在です。10年以上前、表象文化学会の対談で批評家の浅田彰さんが「スポーツなんて見ませんよ。ましてやサッカーなんて、あんな野蛮なもの」と吐き捨てたことがありましたが、大半の人&#8230;]]></description>
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	</div>
	<div class="theContentWrap-ccc"><p>W杯を全試合見る人もいれば、まったく見ない人もいる。当たり前のことですよね。自国の試合だけは見る人、忙しくてそれどころじゃない人、端からサッカーに興味がない人……。人生はいろいろで、正しいも正しくないもありません。この1ヶ月間のバカ騒ぎに、心の底からうんざりしている人もいるかもしれない。本当にごめんなさい。あと1週間の辛抱です。</p>
<p>まがりなりにも「多様性を大事にする」というテーマを掲げている僕たちの社会にとって、「サッカーが嫌いな人」というのも、それはそれで貴重な存在です。10年以上前、表象文化学会の対談で批評家の浅田彰さんが<strong>「スポーツなんて見ませんよ。ましてやサッカーなんて、あんな野蛮なもの」</strong>と吐き捨てたことがありましたが、大半の人は「嫌い」よりも「知らない」や「興味がない」といった姿勢に行き着くもので、「野蛮なもの」とまで言い切れるのは相当に稀なケースでしょう。</p>
<p>「僕の周りにそこまで過激な人はいないなあ」と呑気に考えていたのですが、日本対ベルギーの試合が終わった直後に、筋金入りのサッカー嫌いが名乗り出てくれました。<a href="https://itwas.media/2018wcup-cho/%E3%80%90%E3%83%AD%E3%82%B7%E3%82%A2w%E6%9D%AF%E5%85%A8%E9%83%A8%E8%A6%8B%E3%82%8B%E3%80%91%E8%A8%98%E6%86%B6%E3%82%88%E3%80%81%E8%AA%9E%E3%82%8C" target="_blank" rel="noopener">6月24日の記事</a>に登場したS先輩から久しぶりに連絡があったのです。そこでは「サッカーにまったく興味がないS」と書きましたが、あらためて話を聞くと、より積極的かつ自覚的にサッカーのことが嫌いだったようです。せっかくなので、彼との対話を以下に記録しておきたいと思います。</p>
<p><span id="more-4546"></span></p>
<div class="dp_toc_container pos-before_first_h allow-toggle" role="navigation" data-margin="30"><p class="toc_title_block"><span class="toc_title icon-list">INDEX</span><span class="toc_toggle icon-up-open" role="button"></span></p><ul class="dp_toc_ul has_title"><li><a href="#e383a2e382b9e382afe383afe8a18ce3818de381aee38390e382b9e381afe69c80e5be8ce381bee381a7e58b95e3818be381aae3818be381a3e3819f-1">モスクワ行きのバスは最後まで動かなかった</a></li><li><a href="#e38199e381b9e381a6e381aee38390e382b9e381aee9818be8bba2e6898be381afe5b08ae695ace381abe580a4e38199e3828b-2">すべてのバスの運転手は尊敬に値する</a></li></ul></div><h2>彼の地方では食物貯蔵庫のことを「モロ」と呼ぶ</h2>
<p>「まず大前提として、私はサッカーとサッカーに関係する人が嫌いです。これは昔から変わりません」</p>
<p>なぜ後輩の僕に対して敬語なのだろう……。とにかく彼のサッカー嫌いは、高校時代に同級生のサッカー部員にお金を盗まれたことに起因しているそうです。前にもそんな話を聞いたような気がしますが、どうでもいい情報すぎて完全に失念していました。</p>
<p>「そもそも家にテレビがないし、そんなもの見たいとも思いません。テレビは下品です。でも、いつもの習慣で早起きしてラジオのスイッチを入れたら、たまたま日本対ベルギーの中継をやっていたんです」</p>
<p>平成が終わろうとするときに、昭和のような生活を送っているS先輩。この日の別のやりとりでは「会社とか意味わかんねえ時代錯誤な組織によく耐えられるな」と愚痴っていましたが、時代錯誤のレベルでは彼もそんなに負けていません。</p>
<p>「ちょうど日本が2点リードしているタイミングで、『おっ、頑張ってるじゃん』と思いました。でも、すぐに嫌な記憶がフラッシュバックしました。なぜなら同じ言葉を8年前に渋谷で発したら、その場にいた2人に人格を否定されたからです」</p>
<p>僕も思い出しました。8年前に渋谷の居酒屋で見たオランダ戦の、0対0で迎えたハーフタイム。彼がなんの気なしに「日本頑張ってるじゃん」と言った瞬間、同席していた僕とO先輩（故人）が「ド素人が。サッカー知らないんなら黙ってろよ」と罵ったことがあった。そのときの僕たちは、大声でウンチクを語ることで周囲のにわかサッカーファンたちにマウンティングを仕掛けている最中だったのです。ついでに「サッカーに興味がない」と公言しているS先輩の無邪気な発言を全力で叩き潰し、力の違いを見せつけることで、その空間における強者として君臨する。そんな浅はかな狙いがあったのだと思います。</p>
<p>みんな若かった。なにもかもが懐かしいですね。あのころが一番楽しかったです。そんなふうに話を逸らそうとする僕に対して、彼は敬語をやめて荒々しい口調で怒りをぶつけてきます。フリーザかよ。</p>
<p>「俺にとっては昔話じゃないし、マジでお前らのせいでサッカーに対する憎しみは倍増してるから。サッカーファンってさ、フー、フーテンだっけ、フリーターだっけ？　フーリガン？　なんだっけ、テロ行為するヤツら。フーリガン？　マジでクソしかいねえじゃん。そもそも『サッカー』ってなんだよ。そこは『フットボール』とか言わないの？　下半身でしか思考できないおしゃれパーマどもがよ。まあフットボールとか言うやつもツーブロックのクソだけど。どうせ『サッカーの語源は～』とかイキった話ばっかしてるんでしょ？」</p>
<p>なぜいきなり髪型の話になったのかはわかりませんが、S先輩は凄まじい勢いで歪んだヘイトを撒き散らしていました。しかし彼の憎しみを増大させ、悲しきモンスターにしてしまった原因の半分は僕たちにあるのです。彼があの日、あの渋谷で僕とO先輩に罵倒されることなく、なんらかのサクセスを手にしていれば……。そう思わずにはいられません。</p>
<p>ちなみに、S先輩は小学生のころ「人を見た目で判断する悪癖がある」と通信簿に書かれ、お仕置きとして自宅の食物貯蔵庫に閉じ込められたことがあるそうです。残念ながら、<strong>まったく成長していませんね。</strong></p>
<p>「戦中は防空壕に使っていた場所でね……。地元では食物貯蔵庫のことを『モロ』と呼んでいた」</p>
<p>「あ、そういう情報はいらないです」</p>
<p>こうして僕たちの対話は終わりました。先の記事では「性格的には穏やかな先輩」と書きましたが、それについても訂正させていただきます。考えてみたら、ずっとこういう感じの人でした。</p>
</div>]]></content:encoded>
					
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		<title>【ロシアW杯全部見る】不完全さによる勝利</title>
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		<dc:creator><![CDATA[チョウ ウヒョン]]></dc:creator>
		<pubDate>Sun, 08 Jul 2018 10:10:44 +0000</pubDate>
				<category><![CDATA[2018W杯全部見る]]></category>
		<category><![CDATA[2018サッカーW杯]]></category>
		<category><![CDATA[サッカー]]></category>
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					<description><![CDATA[
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	<a href="https://itwas.media/feature/2018soccer-wcup/russia"><img title="180707-cho-01" src="https://itwas.media/wp-content/uploads/2018/07/180707-cho-01-300x172.jpg" alt="【ロシアW杯全部見る】不完全さによる勝利" width="300" height="172" /></a>
	</div>
	偉大なことを成し遂げるためには、ある種の不完全さが必要なのかもしれない。ロシア対クロアチアの準々決勝を見終えたとき、僕の頭に浮かんだのはそんな仮説だった。 ひとつの冒険が終わり、物語は続く デニス・チェリシェフのミドルシュートは惚れ惚れするような一発だったし、怪我から戻ったアラン・ジャゴエフのセットプレーも素晴らしかった。そしてなにより、ソチのフィシュト・スタジアムの雰囲気は彼らにとって最高以上のものだった。なにかが欠けていたとは思わない。あらゆることは完璧に満たされていた。それでも、だからこそロシアは自分たちの大会に別れを告げなければならなかった。 どちらにとっても2試合連続のPK戦だったが、より満身創痍だったのはクロアチアの方だ&#8230;]]></description>
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	<div>
	<a href="https://itwas.media/feature/2018soccer-wcup/russia"><img title="180707-cho-01" src="https://itwas.media/wp-content/uploads/2018/07/180707-cho-01-300x172.jpg" alt="【ロシアW杯全部見る】不完全さによる勝利" width="300" height="172" /></a>
	</div>
	<div class="theContentWrap-ccc"><p>偉大なことを成し遂げるためには、ある種の不完全さが必要なのかもしれない。ロシア対クロアチアの準々決勝を見終えたとき、僕の頭に浮かんだのはそんな仮説だった。</p>
<p><span id="more-4537"></span></p>
<div class="dp_toc_container pos-before_first_h allow-toggle" role="navigation" data-margin="30"><p class="toc_title_block"><span class="toc_title icon-list">INDEX</span><span class="toc_toggle icon-up-open" role="button"></span></p><ul class="dp_toc_ul has_title"><li><a href="#e383a2e382b9e382afe383afe8a18ce3818de381aee38390e382b9e381afe69c80e5be8ce381bee381a7e58b95e3818be381aae3818be381a3e3819f-1">モスクワ行きのバスは最後まで動かなかった</a></li><li><a href="#e38199e381b9e381a6e381aee38390e382b9e381aee9818be8bba2e6898be381afe5b08ae695ace381abe580a4e38199e3828b-2">すべてのバスの運転手は尊敬に値する</a></li></ul></div><h2>ひとつの冒険が終わり、物語は続く</h2>
<p>デニス・チェリシェフのミドルシュートは惚れ惚れするような一発だったし、怪我から戻ったアラン・ジャゴエフのセットプレーも素晴らしかった。そしてなにより、ソチのフィシュト・スタジアムの雰囲気は彼らにとって最高以上のものだった。なにかが欠けていたとは思わない。あらゆることは完璧に満たされていた。それでも、だからこそロシアは自分たちの大会に別れを告げなければならなかった。</p>
<p>どちらにとっても2試合連続のPK戦だったが、より満身創痍だったのはクロアチアの方だ。守護神のダニエル・スバシッチは筋肉系のトラブルでゴールキックすら蹴れなくなっていたし、チームの心臓であるルカ・モドリッチは疲労で老人のような顔になっていた。PK戦に臨むにあたって、延長後半に追い付いたホームのロシアに流れが傾いているのは明らかだった。</p>
<p>そんな状況でも、クロアチアがここで消えるイメージは湧かなかった。スバシッチとイゴール・アキンフェエフの比較やキッカーの充実度、ホームの大歓声といった諸々の条件を真剣に検討したわけではない。僕にはただ単純に、クロアチアの方がロシアよりもほんの少しだけ満たされていないように見えたのだ。いくつもの感動的なできごとを詰め込んだロシアの冒険譚は結末を迎える準備ができていたが、クロアチアの物語にはまだなにかが足りなかった。</p>
<p>スバシッチとアキンフェエフは1本ずつPKを阻止した。どちらも最高のゴールキーパーだ。勝負を分けたのは、延長後半に同点ゴールを決めてPK戦に持ち込んだ当事者、マリオ・フェルナンデスの失敗だった。つい数分前のカタルシスが、彼のキックに影響していたのは間違いない。素早い助走からシュートに至るまで、浮ついた気持ちを振り払おうという意識を強く持ちすぎていたような印象を受けた。</p>
<p>イバン・ラキティッチがアキンフェエフの逆を突いて激闘を終わらせたとき、ロシアには悪いが、クロアチアのW杯がもうしばらく続くことに安堵した。彼らにはまだ成し遂げるべきことがある。それがイングランドを打ち破って決勝に進むことなのか、あるいはもっと別のなにかなのか、僕にはわからない。ボロボロになりながらなんとか辿り着いた場所に、4年前のミネイロンのような悲劇が待ち受けている可能性だってある。それでも残りの2試合を戦うことで、クロアチアは自分たちの物語にふさわしい結末を用意することができるだろう。</p>
<p>「すべてが満たされ、そのすべてが出し尽くされたときに、自分たちがどこに向かうべきか初めてわかる」とイビチャ・オシムは言った。ロシアは決勝トーナメントで240分以上にわたってピッチに立ち続け、そして敗れた。彼らはすべてを満たし、すべてを出し尽くしたのだ。PK戦で敗れた悔しさは残り続けるだろうが、しかし、冒険譚としては期待以上の出来映えだったと言っていい。試合後、クロアチアのズラトコ・ダリッチ監督はこう語っている。</p>
<p>「よく戦ったロシア代表を祝福したい。美しい試合ではなかったかもしれないが、これはそういう戦いだった」</p>
</div>]]></content:encoded>
					
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		<item>
		<title>【ロシアW杯全部見る】泣くな、ヒメネス</title>
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		<dc:creator><![CDATA[チョウ ウヒョン]]></dc:creator>
		<pubDate>Sun, 08 Jul 2018 01:55:42 +0000</pubDate>
				<category><![CDATA[2018W杯全部見る]]></category>
		<category><![CDATA[2018サッカーW杯]]></category>
		<category><![CDATA[サッカー]]></category>
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	<div>
	<a href="https://itwas.media/feature/2018soccer-wcup/dont-cry"><img title="180708-cho-01" src="https://itwas.media/wp-content/uploads/2018/07/180708-cho-01-300x203.jpg" alt="【ロシアW杯全部見る】泣くな、ヒメネス" width="300" height="203" /></a>
	</div>
	ウルグアイとブラジルが姿を消した。南米勢の全滅、そして欧州勢の躍進。この結果に、エディンソン・カバーニとカゼミーロの不在が影響したことは間違いない。ピッチに存在しないことによってむしろ存在感が高まる選手のことを「キープレイヤー」と定義していいのなら、2人は間違いなく両チームのキープレイヤーだった。 ウルグアイの場合、カバーニがいてもフランスに勝つのは難しかったかもしれない。しかしブラジル対ベルギーの試合を見ている間は、ないものねだりを承知で「カゼミーロがいれば……」と考えてしまう場面が大なり小なり存在した。1点目のオウンゴールが代役のフェルナンジーニョによってもたらされた時点で、ブラジルの敗退を予感したのは僕だけではないはずだ。 悲&#8230;]]></description>
										<content:encoded><![CDATA[
	<div>
	<a href="https://itwas.media/feature/2018soccer-wcup/dont-cry"><img title="180708-cho-01" src="https://itwas.media/wp-content/uploads/2018/07/180708-cho-01-300x203.jpg" alt="【ロシアW杯全部見る】泣くな、ヒメネス" width="300" height="203" /></a>
	</div>
	<div class="theContentWrap-ccc"><p>ウルグアイとブラジルが姿を消した。南米勢の全滅、そして欧州勢の躍進。この結果に、エディンソン・カバーニとカゼミーロの不在が影響したことは間違いない。ピッチに存在しないことによってむしろ存在感が高まる選手のことを「キープレイヤー」と定義していいのなら、2人は間違いなく両チームのキープレイヤーだった。</p>
<p>ウルグアイの場合、カバーニがいてもフランスに勝つのは難しかったかもしれない。しかしブラジル対ベルギーの試合を見ている間は、ないものねだりを承知で「カゼミーロがいれば……」と考えてしまう場面が大なり小なり存在した。1点目のオウンゴールが代役のフェルナンジーニョによってもたらされた時点で、ブラジルの敗退を予感したのは僕だけではないはずだ。</p>
<p><span id="more-4534"></span></p>
<div class="dp_toc_container pos-before_first_h allow-toggle" role="navigation" data-margin="30"><p class="toc_title_block"><span class="toc_title icon-list">INDEX</span><span class="toc_toggle icon-up-open" role="button"></span></p><ul class="dp_toc_ul has_title"><li><a href="#e682b2e38197e3818fe381a6e38284e3828ae3818de3828ce381aae38184-1">悲しくてやりきれない</a></li><li><a href="#e99d92e5b9b4e381afe88d92e9878ee38292e38281e38196e38199-2">青年は荒野をめざす</a></li></ul></div><h2 id="e682b2e38197e3818fe381a6e38284e3828ae3818de3828ce381aae38184-1">悲しくてやりきれない</h2>
<p>それはフランスが2対0でリードした、88分から89分にかけてのできごとだった。ウルグアイのホセ・ヒメネスがポール・ポグバを倒して、フランスにフリーキックが与えられる。ゴールのほぼ正面、距離は30メートルくらいだろうか。キッカーはアントワーヌ・グリーズマン。追加点を阻むべく壁に入ったヒメネスは目頭を押さえて、くしゃくしゃの顔でアトレティコ・マドリードのチームメイトであるグリーズマンを見つめた。</p>
<p>ヒメネスは泣いていた。</p>
<p>グリーズマンはグリーズマンで、なんともいえない表情を浮かべていた。ゴールを狙うために集中しなければいけないが、失意にまみれた友人を目の前にして同情と困惑を隠しきれない。そんな顔だ。</p>
<p>グリーズマンがウルグアイの人と文化を愛していることはよく知られている。キャリアをスタートしたレアル・ソシエダ時代の監督であるマルティン・ラサルテにはフットボールのスキルと同時にマテ茶を仕込まれ、アトレティコでもディエゴ・ゴディンやヒメネスとは単なるチームメイト以上の深い関係を築いていた。彼らがW杯の出場権を獲得したときには、ウルグアイ代表のユニフォームを着てマドリード・バラハス空港まで出迎えにいったほどだ。そのときも、片手には愛飲するマテ茶用の茶器と水筒を抱えていた。</p>
<p>ゴディンに至っては、グリーズマンの愛娘・ミア（Mia）の名付け親にまでなっている。まさにマイメンの中のマイメン。そんなグリーズマンの「僕の半分はウルグアイ人」という発言に噛み付いたのがウルグアイのエース、ルイス・スアレスだった。</p>
<p>「アントワーヌは自分のことをウルグアイ人だと感じると言うけれど、彼はフランス人だ。彼にはウルグアイ人の感覚はわからない」</p>
<p>ポリティカル・コレクトネス的には極めて微妙な発言だが、スアレスにしてみれば自分の素直な気持ちを口にしただけだろう。あるいは、バルセロナに移籍する素振りを見せ続けて結局アトレティコに残留したグリーズマンに対して、ちょっとした苛立ちを覚えていた可能性もある。そんな具合に、さまざまな人間のさまざまな感情がこんがらがった状態で、フランス対ウルグアイの一戦は始まった。</p>
<p>この試合で、グリーズマンは1ゴール1アシストを記録してマン・オブ・ザ・マッチに選ばれた。「よりにもよって」なのか「必然的に」なのかは意見が分かれるところだろうが、とにかく彼の活躍でフランスが2対0でリードしたまま、問題の88分から89分を迎えた。ヒメネスが泣いている。61分にグリーズマンがゴールを決めた直後、中継のカメラに抜かれたウルグアイ人の少年と同じくらい、はっきりとした涙だ。</p>
<p>話は前後するが、まさにその少年を泣かせたプレーが、この試合に絡みついた複雑な感情を象徴していたように思う。ほぼ無回転に近いブレ球でフェルナンド・ムスレラのファンブルを誘って決定的な2点目を奪ったとき、グリーズマンはいつものようには喜ばなかった。その理由について、試合後のインタビューでこう語っている。</p>
<p>「サッカーの良いことも悪いことも、ウルグアイ人から教わった。僕はウルグアイ代表とウルグアイの友人たちをとてもリスペクトしている。だからゴール後のセレブレーションは行わなかった」</p>
<p>『フォートナイト』というゲームの踊りを模した奇妙なゴールセレブレーションは、たしかにこの雰囲気には相応しくないかもしれない。しかしそんなグリーズマンの気遣いも空しく、ウルグアイ人の少年は彼のシュートで号泣し、敗北を確信したヒメネスも試合中に涙を流した。グリーズマンはそのことで動揺したかもしれないし、しなかったかもしれない。いずれにしても、30メートルのフリーキックはクロスバーの上に外れていき、試合はそのまま2対0で終了した。</p>
<h2 id="e99d92e5b9b4e381afe88d92e9878ee38292e38281e38196e38199-2">青年は荒野をめざす</h2>
<p>イギリスのテレビ局で解説を務めていたガリー・ネヴィルは、試合が終わる前に涙を流したヒメネスに対して厳しいコメントを残している。</p>
<p>「感情と情熱には大賛成だが、これは恥ずかしい」</p>
<p>元々、ヒメネスは泣き虫な選手だという話もある。アトレティコでは自身のミスで勝ち点を失った試合後に悔し涙を流し、フェルナンド・トーレスが脳震盪で病院に運ばれたときも泣いている。感情の振り幅が大きいのだろう。それは一流のアスリートにとって決して悪くないパーソナリティーだし、ネビルが言うほど恥ずかしいとも思わない。それだけこの試合に賭けていたということなのだから。</p>
<p>しかし、どんなに絶望的な状況であったとしても、やはり試合の途中に涙を流してしまうのは少し違う気もする。最後まで諦めないのがウルグアイを象徴する「ガーラ・チャルーア」の精神だ、という話を真に受けていたわけではないが……。ヒメネスの涙から、試合全体を包んでいた熱のようなものが引いていくのを感じた。観戦者のエゴでしかないかもしれないが、もしヒメネスが試合終了後まで涙をこらえることができていれば、この準々決勝はもう少し、ほんの少しだけ壮観なゲームとして人々の記憶に残ったのではないだろうか。</p>
<p>ヒメネスは若く、才能のあるディフェンダーだ。成長の余地もリベンジのチャンスも、まだまだいくらでも残されている。いつか彼がゴディンとは少しテイストの違う、涙もろいリーダーとしてチームを引っ張る姿を見ることができれば、それはそれで美しい話かもしれない。</p>
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